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アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

中国四国地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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瀬戸内海国立公園 松山

154件の記事があります。

2012年11月22日スナメリ調査

瀬戸内海国立公園 松山 齋藤明光

11月2日と16日に忽那諸島へスナメリ調査を行って来ました。
過去の調査実績から忽那諸島では、この時期に運が良ければ見ることの出来るスナメリ。
スナメリとは、大きさおよそ1.5m前後で体は灰色、頭部は丸く背びれのない小型の哺乳類です。クジラの仲間に属し、瀬戸内海では生態系ピラミッドの中でも頂点に君臨する生物です。
水族館で人気のシロイルカを灰色にして、それをもっと小さくした生物と言うと想像しやすいかもしれません。

昨年、忽那諸島では、遠目で1匹発見したのみだったので、今年はスナメリを写真に撮りたいと思い、フェリー航路上からのスナメリ調査を行いました。

中島汽船のフェリー

フェリーの甲板からの眺めは、海面から高さがあり、スナメリを広範囲にわたって探すことが出来るというメリットがあります。また、本当かどうかはわかりませんが、スナメリはフェリーの音を好むそうで航路近くにスナメリがいるとフェリーに寄ってくるそうです。
船員の方の情報によると、今年は夏頃に東周り航路では芋子瀬戸あたり、西周り航路では二神島、津和地島の間海域でたまにスナメリを見かけたとのことでした。

1回目の11月2日は、野忽那島へ現地調査もかねて調査を行いました。
天候は晴れ、潮汐は中潮の満潮時、風は静穏、時々白波が立つ程度の風は吹きましたが観察には問題ありませんでした。

フェリーは高浜港から出航し、睦月港を経由し野忽那港へと向かいます。
睦月港から野忽那港への航路は、芋子瀬戸と呼ばれる海域を通る航路で、船員の方々もスナメリを良く見かけるポイントの1つで、過去のARの調査や観察会でも何度かスナメリを発見したポイントでもあります。

芋子瀬戸(睦月島と野忽那島の間の海域)
目を凝らしてよーく観察しますが、スナメリを発見することは出来ず・・・。フェリーはあっという間に野忽那港へ。結局この日は、往路復路ともにスナメリを発見することが出来ませんでした。残念。

と言うことで、野忽那島の現地調査の様子を少しご紹介します。
野忽那島には、港から比較的すぐに登れる皿山展望台があり、360度の瀬戸内海を展望はすることができます。

皿山からの展望(ちょうど船の走っている部分が芋子瀬戸)


皿山から北に位置する安居島、小安居島。その奥に見える島は広島県の上蒲刈島や豊島のあたりでしょうか。
また、少し歩くと額場(ぬかば)海水浴場もあり水も澄んでいて、周りは田畑や山に囲まれているため静かでプライベートビーチのようでした。
対岸は四国本土で松山観光港などの港があるため、船の行き来は多いですが、瀬戸内海を行き交う船を見ながら、のんびり時間を過ごすのもオススメだなと思いました。

額場(ぬかば)海水浴場

2回目の調査は11月16日、中島汽船の東回りで中島大浦港へ。中島泰ノ山への現地調査も兼ねてスナメリモニタリング調査を行いました。
16日の天気は晴、潮汐は中潮の満潮時、風は静穏、波も穏やかで絶好の調査日和でした。
あとは、スナメリが現れるのをカメラを構えて待つのみ!
フェリーは高浜港から睦月港へと着港し、いよいよスナメリを見るポイントの睦月港から野忽那港への航路へ。

フェリーの甲板前方から進行方向あたりを探していたら、甲板後方から「ポチャン」と音が聞こえ、「何かおるよ!」との声が・・・。
急いで振り返りそちらを見るとフェリーに近づいてくる2匹のスナメリ。背びれがなく丸まった背中をスッと海面に浮かべてまた海の中へ。
しまった・・・。と思った瞬間、フェリー間近にスナメリがもう1頭。
さきほどの、「ポチャン」と音を立てたスナメリでしょうか。フェリーに近づいてきて、くるっと向きを変えて、また海中へと潜っていきました。
慌ててカメラを構えてシャッターを切ったのですが望遠にしていたのと場所が全く定まっていなかったため、スナメリを撮影することは出来ず・・・。非常に残念でした。
しかし、比較的間近でスナメリの全体を見られたのは初めてでとても興奮!!
1m程度の小型のスナメリでした。

その時の撮影した写真 海面と泡しか写っていません
写真には、むなしくもスナメリが浮上したときの泡が右端に少しだけ写っていました。もう少し右にカメラを合わせていたら・・・。
その後もスナメリに会える期待をしながら、先ほどより意気込み探しましたが、結局その後、スナメリを発見することは出来ませんでした。

芋子島と漁船
この日は、芋子島の付近でたくさんの漁船が見られました。
何をとっているのかは、わかりませんが漁船がたくさんいるということは、魚もたくさんいてそれを餌にするスナメリもいると予想されます。

天候や潮汐、場所や餌などの関係からスナメリが見られることはまだまだ運が良く、珍しいことですが、今回見られたポイントは以前からも良く発見されている場所です。

青色丸が今回スナメリを発見したポイント
写真には、撮影出来ませんでしたが、今回の調査で3頭のスナメリを目視で確認出来ました。スナメリはいると言うことはわかったので、チャンスを狙って次こそは是非写真に撮りたいと思います。

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2012年11月14日海域資質調査~藻場調査~

瀬戸内海国立公園 松山 齋藤明光

前回に干潟調査に引き続き、10月下旬に伯方島の藻場調査に同行してきました。

展望地からの多島海景観や海辺の観察会などで瀬戸内海を眺めたり、海岸を観察することはあっても、実際海中の様子はほとんど知りません。今回は、海中の様子を知れるとても貴重な調査に同行してきました。
藻場調査は、調査船に音響測深器を取り付けて藻場の分布範囲を測る調査と、実際に藻場が生えているところへの潜水調査を行います。

さっそく、調査船に乗り、音響測深器を調査船に設置して藻場(アマモ場)の分布範囲を調べます。

【左:音響測深器 右:反応を映し出すモニター】

アマモや海藻などの反応がある場合は、写真右の赤で囲ってある部分の海底から海藻や海草の影が見えたり、魚影やナマコの姿もわかるそうです。
アマモや海藻、魚影があると右矢印の図のような感じになります。(※ペイントで書き足した、あくまでもイメージ図です。)

音響測深器を使ってアマモが存在するポイントをいくつか決め、潜水調査を行いました。

【ダイバー潜水】

ダイバーの浮上待つ間、養殖をしているいかだの上にたくさんのカモメやトビが養殖魚を狙い飛び回っている姿を間近で見たり、普段は陸から見る島々を海上からいつもとは違った角度から見たり、船上ならではの観察が出来ました。

【左:カモメやトビが集まるいかだ 右:船上から見た岩城島】

そうこうしているうちにダイバーが浮上。
海中にあったアマモは途中で切れていたり、海藻も何かにかじられた跡があるとのことでした。

【上:アマモ】
【左下:ガラモ  右下:クロメ】

上のアマモの写真、青で囲ってある部分の葉では、根元のほうで枯れて切れていました。8月頃から海水の温度は上がり、海水温度の上昇はアマモの葉を枯死させる原因の一つとも言われています。
また、赤で囲ってある部分は何かにかじられているようでした。
右下のクロメの写真でも葉っぱは何かにかじられ、茎は根元近くでポキッと切れています。

船長さんによると歯形から、これはアイゴという魚のしわざではないかということ。そして、アイゴは海草や海藻を食べ、今年の8~9月にかけてアイゴの稚魚がたくさん網にかかったとのことでした。
そのほか、海中ではオカメブンブクやモミジガイ(ヒトデの仲間)、マダイやハゼなどの生物が見られたそうです。

以下の写真は、潜水調査でダイバーが撮影した写真です。天候も良かったからか、海中も透明度も良く写りもとてもきれいです。

【アマモ】

アマモ場は海のゆりかごととして稚魚たちが捕食者から身を隠し成長する場でもあります。
アマモ場で育つ生物たち

【左:メバル 右:スズメダイ】

こちらはアマモと同じ海草と一種のウミヒルモです。

【ウミヒルモ】


【マダコ】
岩礁の隙間にぴったりひっつくマダコ
ほかにも、陸上では見たこともないちょっと変わった海中の生物たち・・・。

【左上:ウミエラ類  右上:ウミサボテン   】
【左下:マナマコ   右下:紐形動物門の一種 】

今回の藻場調査で藻場の生植状況以外にも海中の生物なども見られ貴重な調査となりました。結果などはこれからまとめていく予定です。

普段中々見ることの出来ない、瀬戸内海の海中の様子を知って頂けたでしょうか。
身近にある瀬戸内海に、こんな生物がいるなんておもしろいと思いませんか?
多島海景観の特徴もそうですが、身近な海岸の様子、海中からの様子、色んな角度から瀬戸内海国立公園を知ると言うことが大切だと今回の調査で感じました。
今後も色んな瀬戸内海国立公園の魅力を日記でお伝えしていきたいと思います。

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2012年11月01日海域資質調査~干潟調査~

瀬戸内海国立公園 松山 齋藤明光

瀬戸内海国立公園は、日本で一番大きな国立公園とされていますが、その大部分は海域部が占めています。瀬戸内海の一部を除く海域のほとんどが国立公園普通地域に指定されています。
国立公園の指定根拠である自然公園法の法改正に伴い海域公園地区という区分が誕生しました。これにともない愛媛県地域では一昨年前から県内にある干潟、昨年から藻場の調査を行っています。今年は、9月の下旬に干潟調査、10月の下旬に藻場調査を行いました。
その調査に同行した時の様子を干潟調査、藻場調査と2回に分けてお伝えしたと思います。

9月の下旬、岩城島の干潟調査に同行してきました。
干潟生物調査は、干潟の干出範囲に沿い海に向かって側線を引き、潮間帯を陸に近い方から上中下と3ゾーンに分け、調査区(コドラート)を決めます。そして、縦×横50㎝×50㎝、深さは20~30㎝までの穴を掘り、その中で見られた生物を記録します。

干潟調査の様子

残暑の9月中旬であったため、生物も減っているかもしれないと心配したのですが、潮が引き始めると、コアマモやウミニナ類、岩場には隠れていたアカニシも見つかりました。

コアマモ
潮が引いたときの波の影響か写真手前には凹凸があり、何かの巣のような穴も空いています。
干潟に入るとその周辺一帯で「パチパチ パチパチ」と音がします。なんだろうと思い調査を続けていると、正体を発見。

テッポウエビ
テッポウエビでした。左の大きなハサミで「パチパチ」と音を鳴らしていました。音の大きさからの推測ですが、かなりの数のテッポウエビがいそうでした。

1箇所のコドラート内で見つかった生き物たち

青:オサガニ類  緑:イカリナマコ
橙:ウミニナ類  黒:ユウシオガイ
バットの中には他にも見つかった生物がいるのですが、わかりやすいものだけ色で囲みました。このように、1側線につき3箇所、干潟の大きさにもよりますが、4~5側線で生物調査を行いました。

島しょ部には大きな川や海岸が少ないため、干潟の干出は小規模です。しかし、一つの干潟を見ても、地質が泥質であったり、砂質であったり、磯に近い部分では石、礫混じりの底質であったりと、さまざまな環境が存在します。
また、比較的開発されていない自然のままの状態であるため、そこをすみかに様々な生物が生息します。


左上:スナガニ      右上:ヤマトオサガニ
左下:ハクセンシオマネキ 右下:ヒライソガニ 

今回の岩城島の干潟で見つかった種類の違うカニです。それぞれのすみか、食べるものなどの生息環境は違いますが、それだけたくさんの種類が存在するということは生物多様性という意味では優れた自然と言えるでしょう。


ヤマトオサガニ
最後に、オサガニとヤマトオサガニの見分け方の一つとして、ハサミを閉じた時に隙間が出来るか出来ないかで見分けることができるといわれています。
こちらの写真は赤で囲ってあるハサミの部分がしっかりと閉じて隙間がないので、おそらくヤマトオサガニだと同定できます。

今回の干潟調査では、まあまあ生物が見られました。
私たち人間を含め、たくさんの生物が共存していくためには海岸、砂浜、干潟、藻場を含めた豊かな海とは、いったいどのようにしていくのがよいのでしょう。
今回の調査結果がそのヒントに少しでもなるように。藻場調査に続く。

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2012年10月18日鴨池海岸の自然

瀬戸内海国立公園 松山 齋藤明光

10月に入ると愛媛県は一気に祭りモード。
先週は松山で、今週は西条や新居浜で立派なお御輿を担ぐ人達のかけ声とともに、それを観覧する人々は大いに盛り上がりました。

さて、9月末に予定していた「鴨池海岸ビーチコーミング&海辺の生き物観察会」ですが、台風17号の接近に伴い中止になりました。応募者のみなさんごめんなさい。

下見の時の日記でも書きましたが、観察会でお見せしたかった鴨池海岸の自然について改めて紹介したいと思います。
本当は、みなさんに直接見て触れて魅力を感じてもらいたかったのですが、それはまた次の機会で。
鴨池海岸は、海水浴場としても整備されており駐車場、トイレ・シャワー室の他にも、園地・展望台があります。


ハマナスの実と花
海岸へ向かう途中の園地に植栽していたハマナス。実はプチトマトそっくりなのですが、じつはナス科の植物。紫色の花が鮮やかに咲いていました。

続いてこちらも園地にあったアオイ科フヨウ属のムクゲ。夏の象徴とも言えるハイビスカスと同じフヨウ属で、花は生薬としても使われます。韓国の国花にもなっています。

花:ムクゲ 昆虫:コアオハナムグリ
ムクゲの花をよくよく見ると中には生き物が・・・。
コガネムシ科のコアオハナムグリです。
私がムクゲの花を触っていることに気にもせず体毛にいっぱい花粉つけながら花粉を食べていました。

園地を通り海岸へ出ると潮が引き始めていて、色の違いから砂浜(潮上帯)と潮が引いて出来た潮下帯が一目瞭然。

潮が引いていくと潮下帯が広がっていきます
写真の右奥に見える砂浜は、潮上帯で、砂が黒っぽく見えるのが潮下帯ですね。

近づいてみると海水に漂う金色のピカピカ光るものが・・・。

海水を漂う金色の物質(クリックして拡大して見てみてください。)
もしかして砂金…?    ではありません。
このあたりの地質「花崗せん緑岩」の構成鉱物である黒雲母が風化によって変質し、薄片となり海水に漂っています。それが光に反射されて金色にピカピカと光っているのです。

そのまま、奥にある磯を目指し砂浜を歩いていると、海浜植物を発見。

左:マツナ        右上:ハマゴウ
               右下:ホコガタアカザ
マツナとハマゴウはたくさんの実をつけていました。ハマゴウの実は、果皮がコルク質で軽いため海水に浮き、海流によって散布されます。子孫繁栄のためいろいろな工夫をしていますね。
ホコガタアカザは名の通り、葉が矛のような形をしているヨーロッパ原産の帰化植物です。

磯へと到着。岩の表面を見るとフナムシと岩にへばりついているカキや貝しか見えませんが、石をひっくりかえしてみると、色々と生き物を発見!

左:イシマテ 右:ムラサキウニ
左のイシマテは貝殻ごと石にすっぽりと挟まっているのが分かりますか。
イシマテは、主に石灰岩の中に自らが出す酸によりに穴を開け生息します。自分から出す酸は自分の貝殻も溶かすそうで・・・。
たまたまひっくり返した石が割れて、イシマテが出てきました。写真には、石の中にいるイシマテが5匹ほど見えます。
右は石を返すと出てきたムラサキウニです。

まだまだいました。みなさんは囲ってある生き物のなんだか分かりますか?

赤丸:アカニシ 緑丸:イボニシ ピンク丸:スガイ
青丸:ミミズハゼ 橙丸:ヒライソガニ

このように、鴨池海岸では磯の生き物だけでなく、植物も地質もおもしろかったりします。
シーズンは終わってしまいましたが、また来年もたくさんの生き物に出会えるように私たちの身の回りの自然を大切にしていきましょう。
次のふれあい行事も現在企画中なので、みなさん是非お楽しみに。

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2012年10月10日気をつけたい動植物

瀬戸内海国立公園 松山 齋藤明光

晴天、秋晴れのある日、国立公園の巡視を行っているときれいな花を発見。

クマツヅラ科ランタナ

庭や街中でも見かけることの出来る常緑低木クマツヅラ科のランタナです。
別名「七変化」。花の色がアカ、ピンク、オレンジ、黄色と色とりどりに変わることから名付けられたそうです。
きれいな花ですが、南アメリカ原産で日本には観賞用として持ち込まれた帰化植物。
そして、「被害に係る知見が不足しており、引き続き情報の集積に努める外来生物」として要注意外来生物リストの記載種でもあります。
近くの住宅に植栽されている種が飛来したのかここでは1株しか生えていませんでしたが、小笠原や沖縄などで野生化していることから、今後気を付けて観察しようと思います。

そんなランタナを観察していると後方から、「ブ~ン」と何やら嫌な音が・・・
と思うと今度は、「バチバチ」と羽根をならして何かと戦っている様子。
振り返って見てみるとクロマツからなにやら黒いものが落ちてきました。

何か昆虫が絡まっている?

近くで見てみると、クモとハチでした。
クモの巣に絡まっている様子もなく、お互い必死に戦っていました。ハチはおしりの針でクモを襲い、クモは手足を器用に使いハチを押さえ込んでいました。

クモが必死でハチを押さえ込んでいます

するとまもなく、、、


クモが動かなくなってしまいました。
ハチはと言うとその場からまた「ブ~ン」と音をさせ、その場から飛び去ろうとしていました。

クモバチ(ベッコウバチ)科ベッコウバチの仲間
調べてみると、クモバチ(ベッコウバチ)科ベッコウバチ仲間でした。
ベッコウバチはクモを専門に捕らえ、殺さず神経を麻痺させて仮死状態のまま巣穴に持ち帰ります。そしてその中に卵を産み付け、幼虫の餌にするそうです。

昆虫やクモを捕らえる肉食系のハチを総称して狩りバチといい、ベッコウバチのほかドロバチやアシナガバチ、スズメバチなど多くのハチがいます。

冬に備えてこの時期は、狩りバチが昆虫やクモを狙い飛び回っています。
紅葉も見頃となり山へ登られる方も山の近くで作業する方もどうぞ気を付けてください。
ハチが近づいてきたときは怖いですが、暴れずにじっとしているか、その場から静かに立ち去りましょう。
また、ハチは黒色に攻撃をしてくるため、帽子を被り、黒い服は着ないようにしましょう。

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2012年10月04日秋の蛇池の草花たち

瀬戸内海国立公園 松山 齋藤明光

日中はまだまだ暑い日が続きますが、風は心地よく、町中ではお祭り飾りが見られるようになりました。すっかり秋ですね。
東予の蛇池湿地でも秋に咲く草花がたくさん見られたのでご紹介します。

蛇越湿地(9月下旬の定点撮影より)

湿地の中に整備された木道を歩いていると、見えてきたのは一面に広がる真っ白で小さなコンペイトウ?

シロイヌノヒゲ
その正体は、ホシクサ科のシロイヌノヒゲです。
ホシクサ科には別名コンペイトウグサ(シラタマホシクサ)とよばれる種もいてコンペイトウそっくり。
また群生して開花する光景が星空のように見えることがホシクサ科の由来になったとか。
いわれてみると写真一面、星空のようにも見えますね。

近くで見ると、こんな感じ。

シロイヌノヒゲ 手前:サギソウ
手前にはシロイヌノヒゲと一緒にサギソウもきれいに咲いていました。

そのほかにも、今見頃の草花がたくさん咲いていました。

左上:ゴマクサ         右上:キセルアザミ  
左下:ナガボノアカワレモコウ  右下:コバナノワレモコウ

年4回ほど実施している蛇池湿地での定点観測ですが、今回一番多くの草花を見ることが出来ました。

また、花がいっぱい咲くとそれに集まる昆虫もたくさん。

サワヒヨドリに集まる昆虫たち

こちらもサワヒヨドリに留まる代表的なアゲハチョウが2羽。

ナミアゲハ

キアゲハ

ナミアゲハとキアゲハの見分け方は、ナミアゲハは前翅の付け根がしま模様となっているのに対し、キアゲハ黒っぽく塗りつぶされたようになっています。

赤色で囲んである部分の翅に注目 左:ナミアゲハ 右:キアゲハ

どちらも色んな場所で見ることが出来ます。花に留まったところにそっと近づいて観察してみてはいかがでしょう。

県内の湿地環境が減少する中、蛇池湿地には数多くの湿地植物が自生しています。
今回紹介した、サギソウ、ゴマクサ、キセルアザミは愛媛県の絶滅危惧種に指定されています。
草花があることによって蝶などの昆虫が集まり、生態系が成り立ちます。
美しい花や昆虫を見て心癒やされる私たちも生態系からの恩恵を受けています。
ここでしか生育できない草花を、これからも見られるように、これ以上環境を悪化させないように私たちに出来ることは何か考えて行動しなければいけませんね。

まずは、みなさんも蛇池湿地で咲いている美しく力強い草花を見てはいかがでしょうか。

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2012年09月06日【参加募集】鴨池海岸ビーチコーミング&海辺の生き物観察会

瀬戸内海国立公園 松山 齋藤明光

9月がスタートしました。
新学期も始まり、みなさん元気に過ごしていますでしょうか。
さて、前回の日記でも書きました、ふれあい行事の詳細が決定したのでお知らせします。

◆◇◇◇◆鴨池海岸ビーチコーミング&海辺の生き物観察会◆◇◇◇◆

日時・・・9月29日(土)11:00~15:30
場所・・・鴨池海岸(愛媛県今治市大西町九王)
内容・・・午前中は、海岸に流れ着いた漂着物を拾い、海岸清掃と合わせて、どんなものが落ちていたかを調べるビーチコーミングを行います。
午後からは、砂浜・磯の生き物や海浜植物など海辺の生き物観察を行います。
参加費・・・100円(傷害保険代、資料代)
募集・・・一般 先着20名(小学1年生以上、小学生は保護者同伴)
申込み・・・参加者全員のお名前・性別・生年月日・住所・電話番号を電話、FAX又は郵送にて下記の問合せ先までお知らせ下さい。

〈問合せ先〉 松山自然保護官事務所 担当:齋藤
       〒790-0808 愛媛県松山市若草町4-3 松山若草合同庁舎4F
       TEL:089-931-5803 FAX:089-931-6813

詳細・申込みチラシは、中国四国地方環境事務所のHPから↓
http://c-chushikoku.env.go.jp/to_2012/0831a.html

◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆

鴨池海岸は、今でもきれいな砂浜が残っていて、磯や海食崖(かいしょくがい:海にできる崖)もあり生き物、植物ともに豊かです。
ご興味のある方はご参加下さい♪


今回は、鴨池海岸で見つけた海浜植物についてご紹介します。

コウボウムギ
コウボウムギはカヤツリグサ科の仲間で、葉の基部の繊維を筆に用いたとされ、筆の達人弘法大師からコウボウが、穂はムギに似ていることから、コウボウムギと名付けられたそうです。別名フデクサとも呼ばれています。

雄株と雌株が分かれる雌雄異株で、写真に見られる穂は雌花の穂です。
観察会では雄株と雌株、両方観察しましょう。


オカヒジキ
砂浜に生え、葉や茎の形が海藻のように見えることから陸(おか)に生えるヒジキだそうです。食用にもされていて、若い葉や茎はサラダやおひたしにしていただけます。

コウボウムギもオカヒジキも、潮風の影響で砂の移動が激しく、強風が吹けば波を直接被ることもある、砂浜でもより海に近い場所に見られる海浜植物です。

生育環境が悪条件のなかコウボウムギは、地上には茎を地下には根を横に長く伸ばし潮風で砂が飛ばされないように群落をつくります。
オカヒジキの葉は厚く、光沢があります。これは保水のために多肉質であり、表面をクチクラ層によってコーティングすることで、強い光や紫外線から身を守り、余分な蒸散を防ぐ役割をしています。

このように海岸で育つために色んな工夫がなされています。
暑さも一息つき、人が少なくなった海岸では、また違った植物も見られるかもしれません。
観察会では、海辺の生き物だけじゃなく、植物も目で見て触って、五感をつかって観察してみましょう。

最後に。

クサギ
こちらは海浜植物ではないのですが、日当たりの良い海食崖に生えていたクサギ。
漢字で「臭木」と書くところから匂うのがためらわれますが、話によるとピーナッツバターの匂いだとか。こちらも是非、観察会で匂ってみましょう!

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2012年08月22日ヒトハリザトウムシ

瀬戸内海国立公園 松山 齋藤明光

朝晩はずいぶん過ごしやすくなりましたが、日中はまだまだ暑い日が続いています。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

9月に予定しているふれあい行事の下見として、先日「鴨池海岸」に行ってきました。
ここから見えるサンセットが美しく映画やテレビドラマのロケ地にもなった鴨池海岸には、お盆も終盤でしたが、海水浴客やBBQをする人々で賑わっていました。

鴨池海岸

そこでおもしろい生き物を見つけたのでご紹介します。

岩にはびっしりのフナムシ

講師の先生が岩の奥を覗くとそこにいたのは、ヒトハリザトウムシでした。

ヒトハリザトウムシ

聞き慣れない名前かもしれませんが、ザトウムシと言えば、「千と千尋の神隠し」の釜爺のモデルにもなったユニークな生き物です。
クモに似ていますが、クモは頭胸部と腹部が明瞭に分かれてるのに対し、ザトウムシはクモのようなくびれはなく楕円のような形をしています。まるでノミのよう!
クモよりノミのほうが近縁だとか・・・。


体はまるでノミのよう,長く伸びた第2脚

4対ある脚のうち第2脚がとても長く伸びています。この第2脚を触角のように使い周囲の状況やエサを探ります。
昼間は岩陰にひっそりとしていますが、暗くなると動きだし、あの岩にびっしり張り付いていたフナムシも食べるとか。
こんなに小さい体でフナムシを食べるなんて意外!

ザトウムシは主に森林内に生息しますが、ヒトハリザトウムシは海岸の岩陰に生息しています。
愛媛県内では、ヒトハリザトウムシが生息できる砂浜と海食崖が減少していることより
愛媛県レッドデータブックでは準絶滅危惧(NT)に指定されています。

そのほかにも砂浜にはスナガニやアオスジアゲハの姿が。

スナガニ

水のきれいな砂浜に生息するスナガニは、警戒心の強く震動や影を感じるとすぐに穴の中に身を隠します。その巣穴も奥深くまで続いていて、捕まえて観察しようと両手を使って掘ってみましたが、失敗に終わりました。

砂浜にとまったアオスジアゲハはスナガニが砂を掘って丸めた砂団子にとまっていました。水分と一緒に溶けたミネラル分も摂取しているのだとか。

アオスジアゲハ

ヒトハリザトウムシやスナガニを見つけることによって、水がきれいな砂浜であることや海食崖があり地形的にも豊かな自然が残っていることが分かりました。
これも鴨池海岸の魅力の1つですね。
9月の観察会に向けて、良い下見が出来ました!詳細が決まったらまたお知らせしたいと思います。


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2012年07月27日【お知らせ】アクティブ・レンジャー国立公園写真展開催(愛媛県地域)

瀬戸内海国立公園 松山 齋藤明光

毎日暑い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
夏といえば、やっぱりアウトドア!!キャンプやBBQ、山登りや海水浴など外にお出かけする機会が多くなるのではないでしょうか?

瀬戸内海国立公園の桜井海岸にも海水浴客がたくさん来ていました。

桜井海岸

そんな、桜井海岸の海水浴場の目の前にある、東予野営場管理棟にて
アクティブ・レンジャー国立公園写真展が始まります。
(開催日時:7月28日~8月19日 9:00~16:00)

国立公園写真展のポスターと東予野営場管理棟の外観

東予野営場管理棟は、昨年老朽化した施設を新たに整備したもので、トイレやシャワー室のほかにも授乳室や多目的室などの様々な方が利用出来る設備が備わっています。

今回は、その多目的室の中で写真展を行うことになりました。


展示の様子

中国四国の国立公園それぞれの風景やそこでの活動の写真展示以外にも、環境省や中四国の国立公園に関するパンフレットなどの情報が多数ありますので是非手に取ってみてください。
国立公園の魅力を感じてもらえればうれしいです。


桜井海岸にて、海水浴やキャンプを楽しまれる方は是非お立ち寄りください♪

この写真展は、中四国の6箇所で巡回展示を行っています。その他地域での写真展の詳細は、こちら↓↓
http://c-chushikoku.env.go.jp/to_2012/0322a.html



ハマゴウ
海岸には海浜植物のハマゴウが元気に枝葉を伸ばしていました。花はちょうど見ごろを迎え、和製ハーブのような心地よい匂いが漂っていました。



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2012年06月15日伯方島の干潟と生き物

瀬戸内海国立公園 松山 齋藤明光

四国が梅雨入りする少し前、伯方島にある干潟とそこの生き物について現地調査を行いました。

愛媛県今治側からしまなみ海道の2つ目の橋を渡った先にある伯方島。
有名な「伯方の塩」はここ伯方島が由来で、昔は遠浅の地形を利用して塩田が作られ塩製業が盛んに行われていたそうです。

伯方大島大橋を渡った先に見えるのが伯方島(カレイ山展望台より)

干潟の種類は、川の河口にできあがる「河口干潟」と、砂などが堆積し遠浅で潮が引いたときに沖合まで広がる「前浜干潟」に分かれます。
伯方島など島しょ部の干潟は、あまり大きな川が流れていないため河口干潟は少なく、前浜干潟が多く見られます。
小規模な前浜干潟ですが、島ならではの変わった地形とそこに生息する生き物をたくさん見ることができたので今回は、その一部をご紹介します。

伯方島東部に位置する大角豆島(ささげしま)は、普段は島として存在していますが、大潮の干潮時には島がつながる陸繋島になります。

左:普段の大角豆島 右:大潮時に陸地と繋がった大角豆島


正面に見えるのが大角豆島 完全に陸地と島が繋がっています

潮が引いて現れた砂州や岩礁帯は、普段は海底であるため、ここでしか見られない生き物がたくさんいました。
ちょうど地元の方がクマデで何かを採っていて、見せてもらうと…。
アカマテガイを採っていました。

アカマテガイ


マテガイ(2011.4 大明神川河口干潟)

大明神川河口干潟のマテガイと見比べてみると大きさもさることながら殻の色、厚みも全く違います。また普通のマテガイは砂質の20㎝ほど潜ったところに生息するためクマデで掘っても採れません。よくある採り方としては、「め」と呼ばれるひし形をしたマテガイの巣に塩をいれマテガイが飛び出したところを捕まえる方法です。
ここのアカマテガイは、砂利や礫など大きめの石が目立つ底質で、深さはクマデで掘れる程度に生息していました。

岩礁帯には、石を動かすとクモヒトデやハゼの仲間がじっと身を潜めていたり、海草に隠れてハボウキガイなどがいました。

石をひっくり返すと、ハゼ類やヒトデがじっと身を潜めていました


左上:ハボウキガイ 右上:?????
左下:クモヒトデ  右下:アメフラシの卵塊

地形に富んだ場所であることや人工の影響がすくないこともあってか、今まで観察してきた河口干潟や前浜干潟では見られない生き物がたくさんいました。
きっと、ここには他の干潟で少なくなってきた生き物がまだ生息しているのだろうなと思いました。


最後に、伯方島内の別の干潟にて体長40㎝ほどのアメフラシを見つけました。

アメフラシ
こんなに大きなアメフラシを見るのは初めてでびっくりし、またそののんびり泳ぐ姿に伯方島の豊かな自然を実感しました。

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