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アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

中国四国地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大山隠岐国立公園 松江

150件の記事があります。

2012年09月07日宍道湖の渡り鳥調査開始です

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

9月に入り朝晩は少し涼しくなってきました。
それでも日中はまだまだ暑い日が続いています。
そんな中、毎年恒例の宍道湖に訪れる冬の渡り鳥の調査が始まりました。
(先週は夏の海中の話題でしたが、今回は一転冬に向けての話題です。)

一昨年の冬は鳥インフルエンザが各地で発生し、養鶏にも大きな打撃を与えました。
鳥インフルエンザは渡り鳥たちが外国で病気にかかり、日本に持ち込んでいるとされています。
国の鳥獣保護区でラムサール条約登録地である宍道湖は、冬期にたくさんの渡り鳥たちがやって来ます。
そこで野鳥たちの数や種類を把握し異常を早く検知するため、9月から冬の渡り鳥がいなくなる5月ごろまでの間、月3回、宍道湖の鳥ヶ崎と言う場所から野鳥をカウントしています。


「冬にはたくさんの渡り鳥が訪れ、厳しい北西風が吹く観測点も今はまだ静かです」

今シーズン初めての調査は、望遠鏡をのぞいていると汗がたらりと体を流れ落ちる、残暑の厳さを感じるものでした。
この暑さでは、冬の渡り鳥たちはまだほとんど見受けられませんでした。
ですがあと一月もすれば、北からどんどんと渡り鳥たちがやって来ます。
そして何万羽というカモたちの群れ、カモメ、マガン、コハクチョウたちが冬の宍道湖を彩る事になります。

※宍道湖をはじめ、全国各地の調査結果は環境省のホームページから見る事が出来ます。
「◆渡り鳥に関する情報」
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/migratory/index.html

ところで宍道湖では近年、夏の後半よりアオコと呼ばれる細かい藻が大量発生しています。
流れが溜まる所などでは、アオコによって湖面が抹茶のように緑に染まる時もあります。
この日も湖面全体が何となく少し緑がかったように見えました。
近年の夏の暑さが一因だとも言われています。
このアオコがもたらす自然界への影響はまだはっきりとはわかっていません。
ただ今の宍道湖の環境を表している事は間違いないのでしょう。

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2012年08月31日夏の島根半島 海中編

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

先週は島根半島の海岸の様子をご紹介しましたが、今回は海の中をのぞいてみる事にしましょう。
入り組んだ海岸線は自然の磯が多く、たくさんの生き物たちと巡り会う事ができます。

それでは早速海の中に入ってみましょう。
シュノーケリングで海岸沿いに泳ぎ進んでいくと、海中は同じ光景が続かない事に気づきます。優占する海藻が様々に変わったり、なにも生えていない岩肌がむき出しの場所があったり。また大きな岩がそびえ立っているかと思えば、河原のように石が転がっている所など様々に景色が変わります。


「クサフグ。 海の中の森、海藻類。森は動物たちを育みます。」

よく見かける魚は、ベラ類やカワハギの幼魚です。ソラスズメダイの幼魚もよく見かけます。ひときわ鮮やかなコバルトブルーの群れが南の海を連想させます。
岩の隙間をよくよく見てみるとカサゴがじっとしていたりします。入り組んだ岩の影にはタコが潜んでいる事もあります。

「カサゴ。 周りの岩の色と同化していますね。他にも魚がいるのわかりますか?」

南国を連想させると言えば、黄色地に青い縦縞のキンチャクダイも時々見かけます。こんな熱帯魚のような魚が島根の海で見られるんです。
そうかと思えば滑るように泳ぐイカの姿も見掛けます。


「私の脚を突く者がいます。振り向くとイシダイの幼魚でした。私が泳ぎをやめると今度は私のフィンを突いてきました。」

今度は岩の表面に目を向けてみましょう。
海藻の生えていなそうな岩ですが、全体がピンク色をしています。近づいて見るとコケのように植物がビッシリ覆っているのが判ります。ピリヒバです。これはサンゴモ科の藻で、触ってみるとゴアゴアしています。
その岩には無数の穴が掘られており、ウニが住んでいます。さながらウニ団地といった光景です。

「ウニが収まっている“部屋”は、ウニが餌である藻を食べる際に強力な歯で岩までかみ砕いて出来上がった物だそうです。」


「海の中に花を咲かせているのはケヤリムシです。イソギンチャクの一種かと思いきやゴカイの仲間なんですね。」

これらの生き物は、何度か脚を運んでいれば、そして見逃さないように観察すると手軽な装備で見られるものばかりです。
自然に直に触れることは自然を理解する事に繋がるでしょう。そしてなにより自然に親しむことは楽しいものです。


「海の生き物たちにとって水は、私たちにとっての空気以上に大切なものかもしれません。」

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2012年08月24日青い海と青い空 ~夏の島根半島~

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

お盆を過ぎましたがまだまだ暑い日が続いています。いかがお過ごしですか。
夏と言えば青い空に青い海ですね。どこかお出かけになりましたか。
「だってそんな場所離島にでも行かないと・・・。」とおっしゃる方。
いや、あります。しかも松江や出雲、米子の各市内から車で30分たらずの所に。
それが島根半島です。
島根半島は宍道湖と中海の北岸にある東西に長い半島です。古事記などの舞台としても度々登場します。

「島根半島西端の日御碕にある日御碕神社。神話の神々にゆかりのある地です。」

入り組んだ海岸は美しい磯の風景を作っています。

「日御碕。柱状節理の岩礁が独特の光景を見せてくれます。」

自然のままの海岸には生き物も多く、コバルトブルーの海に感動する事でしょう。



点在する海水浴場でも、白い砂だけでなく、そばの岩場で生き物たちを見る事ができます。

「磯には生き物たちがたくさんいて、自然を楽しむ事ができますよ。」

島根半島東の突端は地蔵崎と呼ばれる場所です。ここには素敵な白亜の灯台があり、海を見渡せる展望デッキがあります。
この日青い海には隠岐へ向かう白いフェリーが走り、その遙か向こうには隠岐島を望む事ができました。
 
美しい島根半島の自然ですが、海岸には目を覆いたくなるような漂着ゴミが見られる所がある事も事実です。
美しい自然を台無しにしてしまうゴミの山。その全てが私たち人間によってもたらされたものだと言う事実。
それをまざまざと思い知らされる光景を、私たちは見ざるをえないのです。

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2012年07月31日世界ジオパークの現地審査

大山隠岐国立公園 松江 前川 文吾

皆さん「ジオパーク」という言葉をご存知でしょうか?

ジオパークとはその地域特有の地形地質に基づく素晴らしい景観や貴重な生態系、そこに住む人々の歴史や文化を保全・保護しながら経済活動・教育にも活用し、持続可能な社会づくりに取り組んでいる地域が指定されているものです。

ユネスコの支援を受けて現在世界中で27カ国87地域が世界ジオパークとして活動を行なっています。日本ではすでに洞爺湖有珠山、糸魚川、雲仙島原、山陰海岸、室戸の5地域が世界ジオパークに認定されています。

隠岐は地域の様々な取り組みが評価されて2009年に日本ジオパークに認定され、この7月に世界ジオパークになるための現地審査を受けました。

私は今回の現地審査で国立公園のアクティブレンジャーとして現地の自然環境と国立公園制度について審査員に説明させていただきました。隠岐ジオパークの見どころの大部分は国立公園の範囲内にあります。ジオパークの保全・保護の部分において国立公園は重要な要因となっています。

私が説明を担当したのは隠岐島後の乳房杉と大山神社です。


乳房杉(ちちすぎ)

乳房杉は樹齢800年、樹高が約40mになる杉の巨木です。
古い信仰の流れを残しており、社殿はなく乳房杉の後ろにある大満寺山全体が神社とされています。乳房杉は神社の御神体として隠岐の人々に親しまれています。
写真にもあるようにこの周辺は霧のよくかかる場所です。
大満寺山(607m)の頂上付近から乳房杉のあるあたりまで岩石が崩壊した地形になっており、岩石の隙間が「風穴」になって地下で冷やされた空気が出ています。海から来る湿度の高い風がこの周囲の冷たい空気に当たると温度差で霧が発生するためです。霧が発生することから標高の割には涼しく、本来ならば標高600m以上に生えるような植物がこの周辺で見ることができます。周囲の植生を見ても大地との繋がりを知ることができます。


自分で作った隠岐の国立公園のマップを使って国立公園の解説

「皆さんが審査でご覧になったジオパークの主なジオサイトは国立公園として法律できちんと保護されています。自然環境を保全・保護をしながら活用していく国立公園の目的とジオパークの目的は同じなのでこれからも地域の人々と協力しながらジオパークの活動を支援していきます。」


オシダも解説

審査員のお一人はマレーシア出身で「マレーシアにもたくさんシダがありとても興味深い」と、おっしゃったのでシダについてもお話しました。「この大きなシダは『オシダ』といって本来であれば隠岐の気候よりも寒い地方に生える植物です。隠岐の不思議な環境がこういった植物たちが生えるのに適した場所になっています。」


次に大山神社を説明しました。
この神社では2年に一度樹齢400年、樹高約40mの杉にサルナシの葛を巻く「帯締め神事」が行われます。山仕事の安全と子孫繁栄を願う祭りで、同じ全国の山祭りの中でもこの大山神社が一番古い山祭りだと言われています。


帯締め神事の様子(今年3月)

昨年の山祭りには私も参加していたので祭りの様子や順番など、映像をみていただきながら解説しました。


祭りの様子の動画を興味深く鑑賞する審査員

大山神社は先ほどの乳房杉と同じ古い信仰の流れを残す神社です。
「アニミズムのような自然信仰です」と説明すると「なるほど」と外国の方でも理解していただけたようでした。


最後に大山神社の祭りの歌を披露しました

現地審査後の記者会見では「隠岐はジオパークの本質をよく理解して活動している。環境省の看板にジオパークの内容が入っていてとても素晴らしい」と評価いただきました。
今回の現地審査の結果は9月15日~20日に行われるポルトガルの世界会議で可否がわかる予定です。
良いご報告ができる事を期待しています。

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2012年07月20日ウスイロヒョウモンモドキ生息調査

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

急斜面の藪の中をかき分け登ります。まだ10時過ぎですが、もう暑くてバテバテです。
山陰は梅雨明けしました。梅雨明けに合わせたように暑さもギヤチェンジしたように“1段上の暑さ”になりました。
さてこの日はウスイロヒョウモンモドキと言う蝶の生息調査に三瓶山に行ってきました。
この蝶はわずか9種類の(国立・国定公園の)指定動物に選ばれている、日本の絶滅危惧種です。
以前は三瓶山でたくさん見られました。ですが近年は数を減らし、去年・一昨年の調査では見つけることが出来ませんでした。


「これがウスイロヒョウモンモドキです」

この日は今年一番の猛暑で、恨めしいほどに太陽が輝いていました。
この蝶は草原に住む蝶です。草原と言っても調査する自然の中では気持ちいい草原ばかりとは限りません。
草が深い所、藪化している所、低木が混じり思うように進めない所など様々でおまけに急斜面の所もあります。
イバラに覆われている所もあり、いちいち「イタタタタ」なんて言っているひまもありません。
ダニにでもかまれたのでしょうか。数日たった今も時々ぶり返すかゆみは、蚊によるものと比べものになりません。

三瓶ではこの蝶の生息環境を守ろうと、藪を刈り払い食草のオミナエシやオカトラノオを植える活動がおこなわれてきました。
その努力の跡が草原の中のあちこちで咲いていました。


「三瓶自然館の学芸員の方々、島根県職員の方々と共に調査をおこないました。」

ですが残念ながらこの日、ウスイロヒョウモンモドキを見る事は出来ませんでした。
今回はこの蝶以外に見られた蝶を全部記録していきました。
私はさっぱり判りません。三瓶自然館の学芸員、昆虫の専門家の方々に教えていただきました。


「綺麗ですね~。アサギマダラは世代交代しながらはるかな旅をする蝶です」

その結果色々な種類の蝶を見る事が出来ました。中にはヒメヒカゲと言うレッドデータブックに載っている蝶も見られました。
この掛け替えのない自然を荒らす事無く大事にしていきたいものです。


「オカトラノオの花の密を吸うヒメヒカゲ」

ところでウスイロヒョウモンモドキはなぜ減ってしまったのでしょうか。
昔三瓶は放牧が盛んでそれに伴って草原が多かったのですが、畜産の衰退で草原が減った事などが理由に挙げられています。
ただ三瓶が開拓されるよりはるか昔から彼らが生きていた事を考えると、日本全体の自然破壊など大きな原因が考えられます。
またこの蝶は判りませんが、グッと数を減してしまった種は、ごく一部の人間が安易に採取してしまう事によって深刻なダメージを受けることもあります。
今世界中で数え切れないほどの種が絶滅の危機をむかえています。私たちの豊かさの代償や安易な考えが、彼らを絶滅に追いやっているとしたら・・・。
心の片隅にでも留めて考えていただければと思います。

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2012年07月06日孫三瓶と室ノ内

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

森からは色とりどりの鳥のさえずりが聞こえてきます。道端には時折花も咲いています。それらのなんと美しい事か。
三瓶山の登山道調査に行ってきました。
梅雨真っ盛りの山陰地方ですが、この日ばかりは夏本番と言った具合の日差しでした。
今回は南麓の三瓶温泉から「孫三瓶」に上りその後「室ノ内」を歩きました。

「今回歩いたルート」

暑い1日でしたが、三瓶温泉からの登山道は木々の葉が茂り木陰となっています。足下も石が少なく歩きやすい道です。
孫三瓶山頂に着きました。ここは標高900mほどですが、木々がなく展望が開けています。

ここから周回道を大平山方面に向かいましたが、今までの道と違い急勾配の下りで岩が飛び出ています。気をつけてください。
奥の湯峠の分岐から室ノ内に下りました。
室ノ内とは三瓶山の山々に囲まれた釜の様な地形の内側に当たる部分を言います。

「室ノ内に下りていくとアジサイが咲いていました。野のものは派手ではありませんが美しいですね。」


「釜の底には室ノ内池があります。 ちょっと幻想的な池です」

室ノ内池から西の原に向かって室ノ内を横切る道を歩きました。室ノ内の底はなだらかで広葉樹の木々に囲まれ、散策には持って来いの道です。

「地面にはこんな世界も」

ただ釜の側面にあたる坂道は、草が登山道を覆い足下が見えません。道は石が転がっていて不安定です。ご注意ください。
私は再び室ノ内池に戻り、今度は「風越」と呼ばれる釜の縁にあたる峠を越えて三瓶温泉に下る道を歩きました。この道は初めに登ってきた三瓶温泉からの道と合流します。

風越から道は細く谷側に道がダレていて、常に山側に重心を掛けて歩かないといけません。また草が道を覆い、足下が見えない所もあります。急な谷ではありませんが道を踏み外さないように気を付けてください。

「風越付近に咲いていました」

三瓶山は、歩きやすい道と安心していると、その先には険しい道が現れたりします。
またたくさんの道の分岐があります。道標の中には表現が分かりにくいものもあります。是非とも地図を持って登ってください。
地図は北麓の三瓶自然館サヒメルなどで無料で受け取る事ができます。
備えあれば憂いなし。三瓶山をあなどるなかれ、で楽しい登山を!

「繊細な姿、繊細な自然が守られている場所である事を感じます」

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2012年06月26日島前調査 海士編

大山隠岐国立公園 松江 前川 文吾

最近湿度の高い日が多く、ムシムシしますね。隠岐も梅雨入りしていますが、なかなか雨は降って来ません。そんななかでも私は元気にあっちこっちに行っています。中ノ島海士町(あまちょう)に行ったので、今日は「島前カルデラ」について少しお話ししたいと思います。

隠岐の島は今から約600万年前の火山活動により日本海に突如として現れた島々です。その後、氷期や間氷期による海水面の変動により島根半島と陸続きになる時期などを経て現在の形になっています。というわけで、600万年前は火山の隠岐の島だったわけです。「島前カルデラ」は約600万年前の火山活動の様子を今に伝えてくれます。

島前と書いて「どうぜん」と読みます。
古くは「隠岐之三子島」と古事記に記述がある隠岐諸島ですが、知夫里島・西ノ島・中ノ島の三島をあわせて島前、隠岐の島町のある島を島後「どうご」と呼んでいます。諸説ありますが島後を隠岐、島前を三子島としたらしいです。

“カルデラ”と言えば日本でおなじみなのは熊本県の阿蘇山ですが、隠岐の島の島前3島(知夫里島、西ノ島、中ノ島)はカルデラが海に沈んだ形をしています。

島前カルデラ

このように洋上にカルデラができているのは世界中でギリシャのサントリーニ島と日本の隠岐の島だけです。ちなみにみなさんも白い海岸に青い海の地中海地方の写真などご覧になったことがあるかもしれませんが、同じ地質が隠岐でも見られます。サントリーニ島と隠岐は成因が似ているのかもしれません。この白い岩石を詳しくは「アルカリ流紋岩」といいます。このアルカリ流紋岩が人類の歴史的にも重要な黒曜石の産出と深い関わりがあるのですが今日は別の話をしようと思います。

先日調査に行ったのはこの島前の中ノ島(海士町)です。


明屋海岸(あけやかいがん)

この明屋海岸はフェリーで隠岐に来る際、島前経由のフェリーに乗ると海から見ることができます。やはりここも火山の噴火によって形成された地形です。写真の海岸部は激しい噴火の際に上空で急激に冷やされた溶岩が降り積もり堆積してできた地質です。鉄分が上空で急激に酸化したため赤い大地になりました。約280万年前に起きた明屋の噴火は中ノ島の深い湾のほとんど埋め立ててしまいました。この埋め立てられた場所が現在では島前で唯一稲作が行える規模の平野となっています。海岸には「ハマビワ」が生えています。南方の植物でここ中ノ島の海士町が日本の北限になります。隣の島後には一切ありません。


タケシマシシウド

名前を「タケシマシシウド」と言います。日本の植物図鑑にはなかなか記載されていない植物ですね。大陸性の植物で花の咲いている写真もめったにありません。調査に行った際に運良く咲いていました。日本でここだけしか生えていない植物ですね。




しかし、隠岐にも外来種が少しずつ入ってきています。オオキンケイギクは特定外来生物です。きれいな花ですが、栽培したり、生きたまま運んだり、野外に撒いたり、植える行為などは法律で禁止されています。みなさんもご注意ください。


宇受賀海岸(うずかかいがん)

中ノ島の一番北側に当たる部分です。漂着ゴミには日本語でないものも見受けられました。


宇受賀神社

国立公園内ではありませんが宇受賀海岸の近くには立派な神社も立っています。
みなさんは「延喜式神名帳」というものをご存知でしょうか?
簡単に言うと平安時代に作られたご利益の高い神社ランキングみたいなものです。
その中でも“名神大社”という最高位の位を付けられている神社があります。延喜式神名帳には島根県に237の神社が記載されていますが名神大社に選ばれたのはわずか6社しかありません。その内4社が隠岐にあるのですが、宇受賀神社がそのひとつになります。社紋は丸に橘。主祭神は宇受賀命様です。

ちなみに本土側の2社は松江市にある「熊野大社」と出雲市にある「出雲大社」です。
出雲大社とその後ろの鎮守の杜は国立公園内であり愛鳥家達からは数多くの野鳥が見られるバードウォッチングのスポットとして人気です。

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2012年06月12日姫逃池カキツバタ復活作戦

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

突然ですが胴長と言う物を履いた事がありますか。私は先日初めて履きました。
胴長を履いて姫逃池と言う池に入りました。ズブズブっと沈んでゆく底なし沼のような池です。気を許す事が出来ません。
ふと水面に赤い小さな花が咲いているのを見つけました。
どうやらジュンサイの花のようです。見渡すと辺り一面に咲いていました。



姫逃池(ひめのがいけ)は三瓶山の麓 北の原にある伝説の残る池です。そこには沢山のカキツバタが自生していて、県の天然記念物に指定されています。ところが近年は数を減らしていました。
そこで元の美しい姿を取り戻そうと、毎年カキツバタ保全作業をおこなっています。今年も地元団体や自然公園指導員、行政などから沢山の方々が参加して行われました。

基本は草刈りです。カキツバタと競合してしまう草を刈ります。よく似ているショウブも生えていますがこれも抜き取ります。カキツバタまで刈らないように気を遣います。
いつの間にかブヨに刺されてホッペタが腫れ上がってきましたが、気にせず刈り続けます。

【草を刈っていてもカキツバタが増えてきたのを実感します】

池の中では“精鋭部隊”が胴長を履いてスイレンを刈っています。後半は私も胴長デビューしました。
ズブズブと沈んでゆく底なし沼。硬くしまっている足場を探りながら、見えない水中で長鎌を振るいます。簡単ではありません。綱渡りのようなちょっとスリリングな作業。気力も体力も使いました。

【池にはヒルも泳いでいるんですよね・・・】

なぜそこまでして綺麗なスイレンを刈るのでしょうか。
これは人間が持ち込んで広まったものなのです。水生植物が増えると池の水を吸収し、枯れては堆積し池は干上がってゆきます。これにより水辺を好むカキツバタが減少していました。
先ほどのショウブも人間がこの池に持ち込んだものなのです。
たった1株持ち込まれた植物がその土地の生態系を狂わせてしまう。人の手によるこのような事は、日本中でいくらでも起こっています。
そしてその自然を失ってから失ったもののすばらしさを知る事になります。
ですがそれを元に戻すのには多大な労力が必要となるのです。
幸いにしてここでは皆さんの活動の甲斐あって、カキツバタはよみがえり花の数を増やしています。


【5月下旬のカキツバタの様子です】

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2012年05月25日初夏の海を感じながら~美保関の遊歩道~

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

先日日記で三瓶山は姫逃池のカキツバタをちょっと紹介しましたが、その続報です。
順調に花を咲かせ、ただいま見頃をむかえています。お出かけになってはいかがですか。

【5月24日現在の様子です】

さてそんな前振りをしておきながらですが、島根県の国立公園はその三瓶山だけではありません。
出雲国風土記の国引き神話で有名な島根半島もその1つです。
三瓶山とはガラリと雰囲気が変わり、入り組んだ海岸線が美しい公園です。
今回は半島の東端「美保関」の遊歩道を紹介します。美保関の街から半島の先端「地蔵崎」にいたる山の尾根を歩く道です。
まずは美保関の街から登る事15分、丘の上の五本松公園(美保の五本松で知られる)に向かいましょう。
上り坂ですが全面舗装されています。ここはツツジの名所で大山や境港の街が望める景色の良い所です。

【だいぶ散っていましたがそれでもこの通り。最盛期のツツジの眺めはどれほどのものでしょう】

これより先は土の道となり、アップダウンがありますが整備された道です。
今日は日差しが暑くて今年初めてセミの鳴き声を聞きました。春を通り越して初夏を思わせる陽気です。ですが照葉樹と落葉樹が作る木陰が暑い日差しを心地良くしてくれます。
昔は山の上は松が中心だったと地元の方が教えてくれました。変わらぬと思いがちな山の緑の変遷を感じます。

「ボー」隠岐へ向かうフェリーでしょうか、船の汽笛が聞こえてきます。「カタカタカタ・・・」小型船のエンジン音も聞こえてきます。山を歩いているようですが、ここは細い半島の尾根伝いを歩く道です。
両側に真っ青な海の色が木々の間から透けて見えます。
こんな遊歩道はそうそう無いでしょう。

【心地良い木陰、そして両側に感じる海 雰囲気の良い遊歩道です】

途中東屋があり、五本松公園そのむこうに境港市を望みながら、握り飯(に限りませんが)を食べる事も出来ます。
その後道は緩やかな下り坂が続きます。
終点地蔵崎には背の低い白亜の灯台があり、海を見ながらお茶や食事を楽しむ事が出来ます。

【明治31年に造られた石造りの灯台で、隣接した白い石壁と赤い屋根の建物は灯台守の宿舎です。現在はレストランになっています。】

ここからの帰り道ですが、海岸線を公道で美保関の街に戻れます。ですが、路線バスがないため歩く事になります。
広い歩道がないのでくれぐれも車に気をつけて歩いてください。
車で通る方も、見通しの悪いカーブの向こうに歩行者がいるかもしれません。ゆっくりと走ってくださいね。
余裕があれば美保関の街で石畳の道を歩くのも風情がありますよ。

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2012年05月22日クリーン三瓶(第33回)

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

その朝松江は快晴でしたが、なんだか陽が陰ってきました。「曇ってきたのかな?」などと思いながらラジオをつけると、「日食は今ちょうど一番隠れている時間帯です」とのこと。・・・すっかり忘れていました。21日あなたはご覧になりましたか。

さてその前日の20日日曜日、三瓶山の清掃活動「クリーン三瓶」がおこなわれました。
これは国立公園である三瓶山の美しい自然を守ろうと、ゴミ拾い清掃活動を広く市民や関係団体でおこなうイベントで、今年で33回をむかえます。
今年も天候に恵まれ、子供たちを含むたくさんの方々が参加されました。

【絶好の日和のもといよいよクリーン作戦開始です】
 
我々は西の原で風に飛ばされたゴミが草むらに隠れているのではと思い探してみました。ですがゴミは見つかりませんでした。
それは地域の方々の三瓶を大切に思う気持ちが現れているかのようです。
ゴミのないきれいな場所では訪れた方々もゴミを捨てて汚そうとはしません。
こうした良い循環が廻り三瓶山はきれいに保たれているのでしょう。

【3月末に火入れ(野焼き)をおこなった現在の西の原です。緑がよみがえり、自生しているアヤメも咲いていました】

さてクリーン三瓶も無事終わり、その後登山者カウンターの保守点検をおこないに北の原に行きました。ここで耳寄り情報を一つ。
北の原には姫逃池(ひめのがいけ)と言う伝説の池がありますが、ここはカキツバタの自生地として知られています。
そのカキツバタが咲き始めました。これからが見頃でしょう。
三瓶は今が良い季節です。お近くの方はお出かけになってはいかがですか。

【一度減ってしまったこのカキツバタですが、市民や各団体の協力の甲斐あり、近年だいぶ増えてきました。】

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