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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

冬の台海岸

2012年12月26日
松山
2012年も残すところあと一週間を切りました。あっという間の一年でしたが皆さんはいかがだったでしょうか。

今年は例年よりも厳しい寒さで、松山でも平年より9日早く初雪が観測されました。
これからまだまだ寒さが厳しくなるようで一層の寒さ対策をしなくてはと思う私たち同様、植物たちも寒い冬を乗り越えるため冬支度をしています。

先週、大三島へ現地調査を行いました。
この日は、気温は低いものの、天気は良く澄み渡っていて台(うてな)海岸からは、安神山、鷲ヶ頭山がくっきり見ることが出来ました。

大三島 安神山、鷲ヶ頭山

台本川河口から台海岸へ
台本川河口では、海へと繋がる部分に自然堤防のような微地形が出来ていて、その後背湿地には湿性植物ハマサジの群落、その上の砂浜に海浜植物ハマゴウの群落と帯状に分かれて存在しています。海岸の埋立工事や護岸工事でこのような地形は少なくなり、台海岸のように湿性植物と海浜植物が大面積で共存しているのはとても珍しく、生物のすみかとしても貴重な群落となっています。

ハマゴウ群落 ハマサジ群落
上写真の赤線より上がハマゴウの群落で、下がハマサジの群落となっています。

ハマゴウは葉を落とし、ハマサジの群落も種子を落とし枯れていて、動物の様子はなく、どこか寂しげな雰囲気が漂っていましたが、一面をよくよく見るとまだ枯れずにいる植物がちらほら。

ハマゼリ
海岸の砂泥地に生える越年草のハマゼリ。セリ科の仲間で愛媛県のレッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。


ハママツナ
この時期に?とびっくりされるかもしれませんが、多肉質の葉が赤紫色に紅葉したハママツナ。枯れた草花のなかで赤紫色が目立って見られました。


タイトゴメ
同じく海浜植物のタイトゴメも下部の葉が紅葉しているのがわかります。形がとてもかわいらしく名前の由来は細長い大唐米に似ていることからだそうですが、バラのようにも見えます。5~7月にかけて黄色い花もとてもかわいらしく咲きます。

自然海岸の残っている台海岸には、たくさんの植物が残っています。微地形も多様な植物が生息する環境として大事ですが、台本川へ流れる水も植物にとっては非常に重要です。

入日の滝
台海岸から鷲ヶ頭山へ向かう途中にある入日の滝から流れる水は、一年を通して枯れることはないそうです。ここから台本川へ流れる水によって台海岸の豊かな自然は保たれているのだろうなと思います。

来年も台海岸一面に広がる植物群落が見られることを楽しみにしています。
今年もAR日記をご覧頂きありがとうございました。
それでは、みなさまよいお年をお迎えください。