高松

アレチウリの防除手順説明会に参加してきました

2023年09月26日
高松 湯淺和美

9月5日、新聞各社で、侵略的外来生物に関するニュースが大きく報じられました。

AR日記をご覧のみなさま、こんにちは!

侵略的外来生物による経済的損失が全世界で62兆円にのぼり、動植物絶滅の要因6割を占めている、と国際的な科学者集団が報告したそうです。
侵略的外来生物とは、人の活動によって生息地外から持ち込まれた生物(外来生物)のうち、地域の自然環境に特に大きな影響を与える恐れがある生物を指します。
侵略的外来生物の中でも、環境や在来の生物及び人間の身体の安全と農林水産業をはじめとする経済活動等に特に悪影響を及ぼす危険性の高い国外由来の生物は、外来生物法により特定外来生物に指定され、規制を受けています。

今回紹介するアレチウリも特定外来生物の一つとして指定されています。
四国では、9月7日~9日に香川県と高知県で、アレチウリの防除手順説明会が開催されました。

7日に香川県で開催された現地実習に野生生物課の武市自然保護官と一緒に参加した際のもようをお伝えします。

朝9時、土器川祓川公園に集合し、まずはアレチウリの説明を受けました。
実習指導は農業・食品産業技術総合研究機構の主任研究員である小林さんです。
早速大きな根を2本抜いて見せてくださいました。
アレチウリの特徴を教わった参加者の皆さん(国土交通省 四国地方整備局 香川河川国道事務所及び香川県みどり保全課、香川県の河川に関係する団体の方々)もそれに続きます。
  
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アレチウリの根を手に説明する小林さん
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抜いた根を手にする武市自然保護官
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葉の付き方の説明をする小林さん
アレチウリは1年草ですが、1株で10メートルもの長さに成長し、辺りを埋め尽くします。多いときには1株から500個もの種子が実り、翌年にはその辺り一帯がアレチウリだけになってしまうという植物です。
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抜かれたアレチウリの根
アレチウリの防除は、まずは表面に拡げている葉や巻きひげを見つけて、慎重に茎をたどっていき、根から抜きます。根はあっけないほど軽い力でスポッと抜けます。抜いた後、茎をたどり寄せると四方八方から大きな葉の付いた蔓が寄ってきます。まさに一網打尽の言葉どおり、一気に周辺のアレチウリがなくなります。

しかし、脇芽のついた根を残すと、残した脇芽から再び茎を伸ばしてしまいます。アレチウリ自身が意図した戦略かどうかは分かりませんが、まるでトカゲのしっぽ切りです。逆に根さえ抜いてしまえば、乾燥に弱いアレチウリは半日でしなびて、そのまま枯れてしまいます。
根1本に対し、茎と葉の量が尋常ではないので、結実する前なら、根を抜いた後その場へ放置して枯らすことで駆除できます。
実際に防除に取りかかってみると、その繁殖力から受けるモンスター的なイメージに似つかわしくない弱さで、茎はすぐにポキッと折れてしまいました。写真でも分かるように、根元の近くには葉がないため、根元を見失ってしまいます。

根を引き抜くだけで簡単に効果が実感できるアレチウリの駆除ですが、土器川で効果的に行えるのは、1年の内で夏の終わりの花が咲くまでの短い期間、ちょうど今の時期だそうです。

アレチウリの種は水に浮くことができるため、水系を通じて移動・拡散していきます。そのため、大きな川岸を中心に生育しますが、土器川の場合、春に芽吹いた株は夏の間に9割が枯れてしまうそうです。
そのため、春~夏の間の駆除は自然に任せ、夏の終わりに残った1割を一斉に駆除し、その後秋にかけて新たに芽吹く若芽を、種ができる前に順次駆除していくのが効果的なのだそうです。
 
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夏の終わりに芽吹いた若芽
夏の終わりから秋にかけ、アレチウリは花の時期を迎えます。スズメバチは好んでこの花の蜜を吸いにやってきます。そのため、花が咲くと防除に危険が伴います。
 
 
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アレチウリ雄花と種子〈中央で鞠のように咲いているのが雌花、左後ろの白い花は雄花、右上は若い実〉 資料提供:農研機構
花が終わると種が実ります。秋以降に芽吹いた株は、芽吹いたあと1か月もすると,花を咲かせて実を付けます。この実は鋭いとげを持ち、駆除の際にとげが刺さる恐れがあります。また、根を抜いた時にまだ青く未成熟であったとしても追熟し、発芽能力を持つそうです。
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アレチウリの実 資料提供:農研機構
そのため、実ができると、その処分にとても気を遣います。駆除した茎は全て回収し、ゴミ袋に詰めて種が漏れないようにしっかりと管理し、生育地を拡げる事のないように処分しないといけません。
実習では3か所回りました。
1か所目は、アレチウリを識別するための練習に、アレチウリがよく繁茂する場所で。
2か所目は歩きながら探して抜く、広範囲に生えている場所。
そして3か所目は、帰化アサガオ類とアレチウリが同所的に分布している場所で、今年は帰化アサガオ類の方が繁茂し、アレチウリはよく探さないと見つけられない状態になっている場所でした。
少しずつ難易度があがっていき、帰化アサガオ類数種類が繁茂する草原で探すのは大変難しかったです。
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1か所目
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2か所目
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3か所目
移動の途中、植物界最強と言われるクズと覇権争いをしているアレチウリがいました。
手前の支柱に巻き付いているのがアレチウリ(一部クズ)、奥で同様に支柱に巻き付いているのがクズです。ほぼ互角に見えます。
農研機構の小林さんに尋ねると、どちらが先に広い面積を覆うか、で決まるのだろうとのことです。本当に陣取り合戦のようです。
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クズと覇権を争うアレチウリ。左奥がクズ、手前中央はアレチウリと一部クズ。似ているが拡大してみると葉が違うのが分かる。

香川県はアレチウリ侵入初期の段階です。

雨が少ないという気候もアレチウリの侵入を阻んでいます。今、駆除することで、根絶させられるかもしれません。
〈アレチウリの子葉と本葉〉 写真提供:農研機構
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アレチウリの子葉
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アレチウリの本葉
このような若芽を見つけたら、葉の形、巻きひげや花を確認して、根元から抜いてください。種ができている場合は、抜いて運んでしまうと外来生物法の運搬に当たり法に触れる危険性があります。その場合はお住まいの市町村または県の外来生物担当部署へお知らせください。