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アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

中国四国地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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瀬戸内海国立公園 高松

256件の記事があります。

2016年12月01日【体験教室】 サザンカの花びら染め

瀬戸内海国立公園 大林めぐみ

11月も後半にさしかかる紅葉真っ盛りの中、五色台では「サザンカの花びら染め」の体験教室を実施しました。今年で3回目を迎える人気教室です。

普段使っている衣料品や雑貨のほとんどは合成染料と呼ばれるもので染められています。これは手芸店などでも手に入り、洋服や雑貨のリメイクに使えるお手軽アイテム。

今回の花びら染めは、植物などから色素を抽出した天然染料を使って染めるため、天然由来でやさしく、自然本来の風合いや色を楽しむ染め物体験です。


講師は草木染めでおなじみ、あそ美工房から角田眞理子さん。

今回も染めるための白布として、シルクとガーゼ素材のバンダナやショール数種を用意していただきました。

アイスブレイクでサザンカの豆知識を学んだ後は、講師から染める布への模様付けレクチャー。


模様付けに使う道具は、ビー玉、ビーズ、おはじき、割り箸、輪ゴム、洗濯はさみ。

「こんな模様をつけてみたい!」と計算してやろうとしても染料の入り具合などで少し想像と違った模様になることも。それが機械や合成染料を使わない染め物の魅力なのですが、みなさんなかなか想像がつきません。

それでも「こうなるかなぁ」「ここにポイント入れてみよう」など思い思いに模様付け。



模様ができるということは、その部分に染料が染み込んでいないということ。なので、タコ糸をゆるく巻いたり、縛りがゆるいとあまりキレイな模様が出ないことがあるので、しっかりとくくりましょう。

1つできると、「もう1枚、染めてみたいなぁ」なんて気持ちも。そんな時は本能のままに作ってみるべし。

できる時にチャレンジすることが大切なんです。

(「染料が足りないから限界、できません(泣)」という時もありますが。)


←割り箸ぐるぐる?

これが一体どんな模様になるのやら・・・?


模様付けができたら、染料が布にまんべんなく染まるように水に浸しておきます。乾いた部分が残ると、水を含んだ部分に比べ色素が入るのが遅くなりムラができてしまいます。


いよいよ染料づくり。

サザンカの花びらは、一昨年から五色台ビジターセンターや休暇村周辺で採集し、冷凍保存しておいたもの。

フリージアとマリーゴールドは講師が用意してくださいました。見た目色の違う2種ですが、実際に染めるとその時々で色の具合が変わるのだそう。

ネットに入れた花びらをボウルに入れ、その上から湯と酢を加えたら、花びらを揉み込んでいきます。


<左:フリージアとマリーゴールドのミックス>      <右:50℃の湯:酢=1~2:1 計量せずだいたいでOK>


サザンカを揉み込んでいくと、どんどん泡が出てきます!

この泡が多いほど布に色が浸透する力があるということなのだそう。これを聞くと、がぜんやる気が出ます。



フリージアとマリーゴールドは泡が立たなくてOKなのだそう。

泡が出る植物と出ない植物があるのも何だか不思議ですね~。


色が出たら、花びらを取り出してザルでこします。染料が少し冷たくなっていたら40℃まで温めたらできあがり。

布を水から引き揚げ、軽く絞ってからみんなで一斉に漬けます。

同じボウルで染める人でもガーゼ素材は3秒くらい後で。

というのも、シルクよりもガーゼの方が水を吸い込みやすいので色素もその分先に取ってしまうのです。

この間もできるだけ40℃を保つと染まりがいいそうですよ。


<どんどん染まってきた~♪>

色が染み込むようにやさしく揉み込みながら待つこと約20分。

ドキドキしながら染料から布を引き揚げて、模様付けしたビーズなどを外していきます。

軽く水洗いして干したら完成★



↑フリージア&マリーゴールド(素材:シルクストール)

←サザンカ(素材:シルクストール)

仕上がりはこのような色ですが、皮革製品と同じように時間が経つと少しずつ色合いが変化していきます。そうなると、自分だけの作品ができあがり、より愛着がわいてきますね。材料集めは少し大変、だけど意外と簡単にできる自然の染め物は、劇薬を使わないので安心して自宅でもできますよ。寒い冬のオススメものづくりです。


<みんな一緒に作品のお披露目★>


■草木染めをした衣類のお洗濯方法■

 おしゃれ着洗い用洗剤もしくは手洗いで。最近の洗濯洗剤は漂白剤は入っているのでNG。

■染める布は何でもいいの?■

 草木染めの染料は、白布にタンパク質が入っていないと色素が浸透しないのだそう。

 シルクなど動物性繊維は購入したままでOKですが、麻やコットンなど植物性繊維はタンパク質を

 含ませる下処理が必要です。

 1:1の豆乳と水に20~30分ほど浸した後、脱水機で30秒脱水。(均等に脱水できます)

 シワを伸ばして天日干ししたら下処理のできあがり。

 シワが伸びていなかったり、脱水が甘いとムラ染めの原因になります。

 また、アクリルやレーヨンなど合成繊維はあまり染まらないようです。

他にも草木染めを調べるとネットなどに掲載されていますので、いろんなチャレンジをしてみてください。

草木染めは何度も染められて、何度も違う色、風合いに出会うので驚きの連続です。

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2016年11月22日【紅葉情報】 寒霞渓の秋2016

瀬戸内海国立公園 大林めぐみ

11月中旬にもなると紅葉もいよいよピーク!

「しまった!まだ紅葉見に行っていないよ~」とお嘆きの方もまだ見頃を迎えている場所はあります!

今回は香川県内屈指の紅葉の名所として多くの観光客が訪れる寒霞渓のご紹介です。


寒霞渓は小豆島の中央部に位置する標高約300800mの山々と渓谷で日本三大渓谷美のひとつに数えられています。(あとの2つは耶馬溪(大分県)、妙義山(群馬県))

渓谷には長年の風雨などで浸食された奇岩絶壁がそびえ立ち、その間を彩る春のサクラ、夏の青々とした森も美しいですが、何と言っても秋の紅葉は外せません。

さぁ、今年の紅葉の色付きはどんな感じでしょうか~?

山頂からスタートし、まずは裏神懸歩道へ!

常緑樹のヒサカキやシロダモに囲まれた林と少しガレた道(イノシシの仕業・・・)を抜けると・・・


<松茸岩付近の歩道とダンコウバイの色付き>


<石門洞・本堂はなんと岩の中!>



石門洞本堂を参拝すると、窓からはこんな景色が!

周辺では県内でも限られた場所でしか生育していないミセバヤ(香川県RDB/CR+EN・環境省RDB/EN)※がピンクの小さな花を咲かせていました。


<石門洞から紅雲亭へ>

常緑樹の中でも上を見上げれば紅黄葉に染まるさまざまなモミジが。



<↑猪谷池から見上げる寒霞渓>

<表神懸歩道→>

表神懸歩道は裏神懸歩道と違い、コンクリート舗装され、勾配も緩いので普段あまり山歩きをしない方でも大丈夫。ただ、サンダルやヒールなど滑りやすい靴は避けましょう。

歩道の中から眺める十二景は、今の時期限定の紅葉に囲まれた奇岩。十二景の奇岩以外にもトラップ的な奇岩(間違えやすい奇岩)もありますが、それはそれで「何に見えるかな?」大喜利で楽しんでみては?


<(左)歩いた所を四方指から望むと・・・>        <(右)紅くなりつつあるイワヒバ>

まだまだお見せしたい展望地からの風景はありますが、それは行ってみてからのお楽しみということで。


寒霞渓はいろんな方向から眺めを楽しめること、そのアクセス方法も自分の体力や時間によってアレンジできるのが押しポイント。

山頂付近の展望地から眺めるのもよし、星ヶ城山~麓にかけて巡る遊歩道を歩きながら眺めるのもよし、ドライブしながら、自転車で走りながら紅葉や空気感を楽しむもよし、またロープウェーから絶景を眺めるのもこれまたよしです。

そして、遠くから近くからどちらも眺めのよい景色だけでなく、その一部分として色を添える小さな植物にも大注目してほしい寒霞渓にぜひお越し下さい!


<歩きコースタイム>

山頂駐車場~(40分・1.5㎞)~石門洞~(301.2㎞)~紅雲亭ロープウェイ駅~(60分・2㎞)~四望頂~(鷹取展望地経由で30分・0.6㎞)~山頂駐車場

歩行3時間+ゆっくり眺める&休憩時間含め3.5時間~4時間くらいあれば十分。

朝露や雨天後は歩道が滑りやすくなっているので、履き慣れたスニーカーなどしっかりした足下装備をご用意くださいね。

<ご注意>

野生のサルが車道や展望地などにわらわらと現れることがあります。

エサをあげたり、車や各施設の扉やゲートを開けっ放しにしないようにしましょう。

野生生物へのやさしい気持ちは持ちつつ、人との距離感は守りましょう。


※RDB:絶滅のおそれのある野生生物レッドデータブック  

CR+EN:絶滅危惧Ⅰ類  EN:絶滅危惧ⅠB類

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2016年11月14日【紅葉情報】 五色台のようす

瀬戸内海国立公園 大林めぐみ

朝晩がだいぶ冷え込み、10℃下回る日も出てきましたが、まだまだ晴れた日中は20℃近くまで上がることも。標高の高い山岳地域では10月に紅葉を終え、白い雪がチラチラと舞う冬の到来がみえてきましたが、瀬戸内海沿岸ではこれからが紅葉のシーズンです。

少しずつですが、紅葉情報をお届けしたいと思います。


五色台をはしるスカイライン沿いでは、真っ赤に染まるモミジやハゼなどが少ないものの、オオシマザクラやウリハダカエデなど落葉樹の紅葉が少しずつ進んでいました。



<五色台スカイライン 中山~大崎ノ鼻へ>


中山から大崎ノ鼻へ向かえば海を眺めながら近くの紅葉が、逆だと峰全体が染まるようすが見られます。

色づきのピークはもう少し先ですかね。


五色台にある白峯寺と根香寺は四国88箇所霊場札所であり、また紅葉の名所として多くのお遍路さんや紅葉狩りの参拝客で賑わいます。

今回は白峯寺の様子をご紹介。


<薬師堂と本堂~大師堂のモミジ>  


     

<大師堂前のモミジと頓証寺殿のツワブキ>


白峯寺もまだ緑のモミジが多く、紅葉ピークは少し先のようでしたが、境内に咲くツワブキは満開でした。

お寺周辺ではカメラを携えた方も見かけ、参拝を終えたらいいアングルを探しながら紅葉を写真におさめていました。

ただ、三脚を参道の真ん中に立てるなど参拝者の邪魔になるような撮影はお控え下さい。また、駐車場は狭いため、混雑しているようなら第2、3駐車場と山門から少し離れた駐車場に停めましょう。(徒歩5分圏内)


五色台の紅黄葉はこれからどんどん進んでいき、思わず停車して見ようとする方もいますが、車道はカーブが多く、見通しも悪い所があります。自動車で走行、駐停車される場合は、歩行者や自転車に十分注意して安全の確認・確保をしてくださいね。

また台風の影響によって、県道の一部で片側交互通行になっていますのでご注意ください。

http://www.pref.kagawa.lg.jp/content/dir7/dir7_4/dir7_4_2/wmnm8b161028145511.shtml

(香川県HP-道路・公共交通-香川の道路より)


さぁ、紅葉の秋を楽しみましょう!


<白峰園地展望台からの夕景はオススメ★>

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2016年09月20日【お知らせ】 中国四国の国立公園展~香川会場~

瀬戸内海国立公園 大林めぐみ

平成22年度より始まったアクティブ・レンジャー(以下AR)による企画展「中国四国の国立公園展~アクティブ・レンジャーが伝える自然と活動~」も今年で7回目を迎えました。

4月から広島県~鳥取県~島根県隠岐の島~高知県を回り、910日(土)より香川県坂出市にある五色台ビジターセンターでの展示が始まりました!



中四国各地で活動する自然保護官補佐(アクティブ・レンジャー)が、国立公園や国指定鳥獣保護区、ラムサール条約登録湿地などで出会った美しい風景や自然保護活動をする人々などを写真に収めた企画展です。

また各ARより見どころや守って欲しいこと、知って欲しいことなどをパネル展示していたり、パンフレットなどもご用意していますので、そちらもぜひご観覧ください。


意外と身近にある国立公園。

映像や写真でアフリカやアメリカなど海外の国立公園を見ると、壮大で人の生活圏から少し離れた場所というイメージを思いがちですが、日本の国立公園は人の生活圏から近い場所にあって、それが人と自然との共存でなりたっているのが特徴。これは先人の知恵と自然に対する畏敬の念があってこそ守られているのではないかな、と。

そんな国立公園をご覧いただける企画展を現在開催中ですので、ぜひ足を運んでいただき、「おっ、ここも国立公園なんだ~」「あっ!行ったことあるよ」という場所など見つけて、また現地に行って欲しいなと思います。

会場にはアンケートも設置していますので、お時間よろしい方はそちらもご協力お願いします。


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2016年09月12日【体験教室】 ハチミツ絞りと蜜蝋キャンドルづくり

瀬戸内海国立公園 大林めぐみ

夏の五色台体験教室の定番になりつつある「ハチミツ絞りと蜜蝋キャンドルづくり」も今年で5回目を迎えました。今年も多くの方にお申し込みいただきましたが、残念ながらキャンセル待ちで参加できなかった方も。

講師はおなじみ五色台ふもとで養蜂家として生業されている中田養蜂さん。

今年もハチミツ絞り体験や意外と知られていないミツバチの生態や特徴などのお話、そして蜜蝋キャンドルづくりまでサポートしていただきました。


初めに絵本を使って、私たちが食べているハチミツができるまでのことをお話してくれました。

ハチミツ=花の蜜だと思いがちですが、実際に花の蜜を吸ってもそれほど甘くはありません。

サルビアやホトケノザの蜜を吸ったことがある人には分かるかも。

実は、ミツバチが花の蜜を体の中に取り込んで酵素を使って分解濃縮して巣に戻し入れたのが普段食べている甘~いハチミツです。そう、ミツバチがいないとハチミツは食べられません。


<大人も知らないハチミツの秘密にフムフム・・・>


ミツバチの働きを知ったところで、中田さんによる採蜜デモンストレーション。

ここでしっかり蜜ふたを取るコツを掴んだら、いよいよ採蜜体験です!


                            <巣を壊さないようにすーっとふたを取って>

<おっ!?巣板って意外と重い!>


   <甘い匂いに誘われて思わずペロリ★>       <遠心分離器に入れて、思いっきり回す!>


  <巣板2枚で500ml瓶2本以上取れました>


採蜜順を待っている間は、中田養蜂さんが用意してくれた観察箱で女王蜂探しや面布(帽子にかぶせる蜂避けネット)と燻煙器を持って養蜂家スタイルに変身したりといろいろ楽しめます。

特に観察箱は普段じっくり見られないミツバチを見ることができるとあって、子どもだけでなく大人も興味津々のようす。

そして、採蜜が終わった後は、毎度おなじみハチミツ4種の試食会&ハチミツ種類当てクイズ。

さぁ、分かるでしょうか??


<かすかな風味や香りを頼りにして・・・う~ん。。。>


大人より子どもの方が無心で食べるせいか、味や匂いに敏感に反応を示してくれました。

お腹が満足したところで蜜蝋キャンドルづくりへ。

前回までは、溶かした蜜蝋の中にロウ芯を垂らして徐々に太くする縦長キャンドルでしたが、今回はシリコン型に流し込む型抜きキャンドルです。

好きなシリコン型に穴を開けてロウ芯を通して、竹串に留めます。そこに湯煎した蜜蝋(直火だと爆発するかもしれないのでNG)を流し込みます。この時、穴が大きいとロウが漏れるので、そんな時は少しずつロウを入れて固まっては入れ、固まっては入れる作業を繰り返しましょう。

漏れ出た蜜蝋はまた湯煎すれば使えます。



蜜蝋が固まるまでの間にミツバチ&ハチミツクイズとお話を。

みんなはどこまで知っていましたか?

○ミツバチって巣板に何匹くらいいるの?

 巣板びっしりで2,000匹くらい。養蜂家は巣板に何匹×巣板何枚という数え方をするのだそう。

○女王蜂ってタマゴをどれくらい産むの?

 毎日1,200~2,000個のタマゴを産みますが、毎日800匹のミツバチが死んでいます。

 夏はだんだんと個体数が減ってくる時季。寒くなる秋を前に省エネ体制に変わりつつあり、

 個体よりも団体生活を優先する社会性生物といえます。アリも同じですね。

○ミツバチの寿命は?

 成虫で約1ヶ月。

 ただし、女王蜂は7~8年と働き蜂に比べ長く生き、その内2~3年でタマゴを産みます。

○働き蜂はオス?メス?それとも同じ比率?

 働き蜂は全てメス蜂。その中でも巣の中で幼虫の世話をするのは若いメス蜂で、外に採蜜に行くのは年配の

 メス蜂。これは、外だと外敵や雨に濡れて帰ってこられなくなり死のリスクが高いため、あえて寿命の少な

 い年配働き蜂が採蜜に行くのだそう。ミツバチなりの個体数調整能力がここで発揮されているわけです。

 そして、働き蜂の仕事はというと・・・

 蜜と花粉集め、幼虫の世話、巣作り、巣の掃除やゴミ捨て、巣の温度調整、門番や巣の防衛、

 女王蜂と雄蜂へのエサやりなど、まるで私たちのお母さんのよう!

○ミツバチは蜂蜜以外にどんな役割を持っているの?

 私たちがいただいているのはハチミツだけでなく、野菜や果物もミツバチのおかげ。

 ミツバチが受粉の働きをしてくれることで野菜や果物に実ができ、それを私たちは美味しくいただいていま

 す。また、栄養食品として有名はプロポリスやローヤルゼリーもミツバチから作り出されるもので、ミツバ

 チはなくてはならない生き物だということが分かりますね。


知らないことだらけのミツバチのお話を聞いていると、こちらではそろそろ蜜蝋が固まってきたようです。

さぁ、型枠から外しますよ~!


             <できあがり★>                 <観察箱は見飽きない>


美味しいハチミツ、それにはいろんな種類があっていろんな味や風味があること。

そして、私たちの生活はミツバチの恩恵によって美味しい野菜や果物をいただくことができること。

こうした生き物のおかげで、またそれを養う養蜂家や農家さんがあってこそ豊かな食卓が広がることを知った体験教室。「この虫イヤだなぁ」と思うより、見方を変えて「この虫は一体何の役割を持っているんだろう?」と想像すると、世界が少し広がるかもしれませんよ。

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2016年08月31日秋の気配

瀬戸内海国立公園 高松 福田学

石鎚山の夏は、たくさんの花と登山者でにぎわいます。しかし、お盆を過ぎると少しだけ静かになります。花は変わらず咲き乱れていますが、結実するものも目立ってきます。そして、秋を告げる花たちが咲き始めるのも、この頃なのです。山をゆっくりと味わうなら、この時期がいいかもしれませんね。今回は、石鎚山に自生する端境期の植物たちを紹介します。

823日、土小屋登山口。天候は霧です。風景はまったく見えませんが、そのぶん足元に咲く花たちに集中できます。登山口はすでに標高1500m、そこはブナの領域、冷温帯夏緑樹林です。

      左上:イシヅチミズキ、濃紺の実と赤い果柄が美しい 

      右上:いち早く色づく、ツタウルシ

      左下:タカネオトギリの葉に水滴 

      右下:ブナの極相林



      ササユリの実と葉、花を落とすとササに紛れてわからなくなります



登山道は、アキノキリンソウが花盛りです。タカネオトギリは花も多いですが、真っ赤な実をつけているものも目立ちます。花をじっくり観察していると、きらめく朝露や小さな昆虫にも目が行きます。

      左上:満開のアキノキリンソウ 

      右上:ツツゾウムシ

      左下:ドロノキハムシ 

      右下:キンモンガはアゲハモドキガ科に属する、昼行性の蝶のような蛾です



東稜基部の休憩所から植生は、少しずつ変化していきます。東稜基部は、石鎚北壁を形作る岩稜の東端です。登山道は北壁の裾を横切るようにつけられており、いくつかのルンゼ(岩壁に刻まれた谷や溝などのこと)を通過します。

      左上:リンドウ、日当たりのよい登山道脇でよく観察されます 

      右上:ツルニンジン、ニンジンのように根を太くすることからこの名前がつきました

      左下:ミヤマモミジイチゴ、たくさんの実がありました、葉はいつも虫に食われて穴だらけです

      右下:レイジンソウ、キンポウゲ科の可憐な花です、今年は非常に花付きがいいです



ルンゼ周辺では、多種多様な花を観察できます。大きな群生を作るオオマルバノテンニンソウ、そこに混生するミソガワソウやサラシナショウマが、見事な花畑を作ります。登山道脇には、ラズベリーの仲間、キイチゴ属のミヤマモミジイチゴが、つややかな実をぶら下げています。

      左上:ヨメナだろうか?キク科の同定って困りますよね

      右上:モミジガサ、別名シドケ、他のキク科カニコウモリ属と同様に山菜としても有名

      左下:ハガクレツリフネ、葉の下に隠れるように花が付きます

      右下:オオマルバノテンニンソウ、別名トサノミカエリソウ、群生する様は壮観です



ルンゼ直下は花も多く足を止めてじっくり観察したくなりますが、落石も非常に多いので速やかに移動しましょう。植物の観察は、ルンゼ周辺の安全が確保できる場所で行いましょうね。

      左上:トリカブト、毒草といえばこれ、というイメージですが、他にもいっぱいありますよ

      右上:フクオウソウ、花は小さく地味ですが美しい、花が展開すると長い蕊が突き出てきます

      左下:アマニュウと思われます、花を終え、繊細な果柄の先に実を着けています

      右下:ミソガワソウ、石鎚が南限といわれています



鳥居の建つ表参道との合流点には、261120日に開所した石鎚山公衆トイレ休憩所があります。環境省自然環境整備交付金を活用して作られた環境配慮型のトイレで、微生物の働きで汚水を浄化します。トイレットペーパーは、分解できないので分別となっています。冬季にトイレは利用できませんが、休憩所はフルシーズン利用できます。

チップ制で100円を集金箱に投入して利用します。10枚つづりのクーポン券も利用可能で、道の駅天空の郷、土小屋、登山ロープウェイ乗り場、山頂山荘などで販売されています。このトイレの開所に伴い、頂上トイレは携帯トイレブースに変更されました。携帯トイレは、各自で用意してください。使用済みトイレは、持ち帰りましょう。

排泄物による自然界への悪影響を与えないために、マナーを守って利用しましょう!

      左上:真っ赤に染まるタカネオトギリの実

      右上:まだ若いタマガワホトトギスの実

      左下:石鎚山公衆トイレ休憩所

      右下:ミヤマトウヒレン



今回は鎖場を使わずに、巻道を使い山頂を目指しました。この辺りまで来ると黒々としたシラベの領域、亜高山帯となります。ミヤマトウヒレンやオオトウヒレン、ウメバチソウ、ダイモンジソウ、結実したミヤマダイコンソウなどが見え始めると山頂はもう目の前です。

      左上:オオカメノキ、別名ムシカリの名のとおり葉は穴だらけ

      右上:イワアカバナ、二ノ鎖元小屋付近でよく見る

      左下:シオガマギク、かつてはゴマノハグサ科だったが現在はハマウツボ科

      右下:シラヒゲソウ、石鎚山ではウメバチソウではなくシラヒゲソウばかり見る



植物は花ばかりに心を奪われがちですが、残花や結実から知る生活史も面白いですよ。季節の変わり目はそんな植物をたくさん観察できます。また、競合と共生の両方のかかわりを持つ、昆虫や動物まで興味を広げて、好奇心を解き放ってみるのもいいですね。

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2016年08月23日【鳴門】 全国一斉美化清掃運動2016

瀬戸内海国立公園 大林めぐみ

毎年8月第1日曜日に行われる自然公園クリーンデー。

これは全国の自然公園を対象として、利用者の集中する地区において、地域の方や関係機関の協力を得て、大規模な美化清掃活動を展開することで自然公園の美化思想をより広く普及させることを目的とした美化清掃運動です。

今年も鳴門地区では、自然公園財団鳴門支部主催の一斉清掃が行われ、朝7時から地元の方約20名、近隣関係者や自治体が集まりました。



開会の挨拶後、みんな慣れた様子でホウキや鎌、刈り払い機などを手にし、利用者の多い千畳敷展望地~お茶園までの歩道に向かい、草刈りを開始。













まだ涼しい朝早くからとはいえ、だんだんと日が昇ってくると汗が止まりません!みんな「暑いねぇ」と言いながらも手は止めずに作業を進めていくと、1時間後にはこんなにスッキリしました!












       <草刈り中>                     <草刈り終了!>




駐車場から渦の道までの遊歩道脇も草が刈られてスッキリ!











鳴門公園は、本州と四国を結ぶ明石海峡大橋~大鳴門橋のすぐ近くにある関西から最も近い四国の玄関口。そんな鳴門には、国内の観光客だけでなく、ここ1年で爆発的に増えたアジア諸国からの観光客も多く訪れます。観光客によりよい利用をしてもらえるようにと、地元の方を中心に参加していただけるのは本当にありがたいことだなぁと思います。

常にお掃除してくれる人だけでなく、こういった清掃活動に参加してくれる方がいることで自然公園とはじめとした観光地は清潔に保たれています。そんな方々だけの努力だけでなく、利用者側にもゴミを所定の場所で正しく分別して捨てたり、家まで持って帰るなど少し心配りをしていただけるとよりよい環境が続きます。

もし、自分の住む町でクリーン作戦が行われることがあったら参加してみてはどうでしょうか?久し振りに会う友人や知り合いがいたり、はたまた共通の知人がいたりと意外な人と出会うかも?

そして、何よりも地域がキレイになると気持ちもスッキリ♪

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2016年08月15日剣山 夏の花

瀬戸内海国立公園 高松 福田学

夏らしい晴天と猛暑が続いていますね。今年度から山の日も施行され、ますます登山人気も高まりそうです。山の日が間近にせまった84日に、国指定剣山山系鳥獣保護区や国定公園に指定されている剣山へと巡視のために向かいました。

剣神社への長い階段が、この山の入口です。旅の安全をお祈りしてよく整備された登山道に入ると、ブナやミズナラ、ウラジロモミなどの冷温帯の樹林が、木陰を作り快適に歩けます。森の中には満開になったリョウブの花の香りが、充満しています。

【左上:剣山登山口】

右上:リョウブの花】

左下:太鼓岩分岐から見た次郎笈】

右下:刀掛けの松】







登山リフトの西島駅あたりからは、シコクシラベやダケカンバなどの亜寒帯の樹林になります。足元の黄色い花はタカネオトギリ、トゲアザミの花はすでに冠毛を載せています。シコクフウロやナンゴククガイソウ、ツルギハナウドなども咲き、登山道はとても華やかです。

左上:コモノギク】

右上:シコクフウロ】

左下:ソバナ】

【右下:ツルギハナウド】







刀掛けの松から、キレンゲショウマを見るために行場方面へと向かいます。キレンゲショウマは発見当初はキンポウゲ科で、その後ユキノシタ科となり、現在ではユキノシタ科から分離されたアジサイ科に属しています。ややこしいですね。この辺りは植物の育成に不利な石灰岩地ですが、それを好む植物もいるのです。それがキレンゲショウマやヒメフウロなどの貴重な花なのです。地質や地形からの目線で、植物の棲み分けを観察するのも面白いですよ。

左上:オタカラコウ】

【右上:カニコウモリ群生】

【左下:ギンバイソウ】

【右下:キレンゲショウマ】







剣山系は2000年あたりから出始めた、シカ食害によって危機的な状況となっています。キレンゲショウマの群生地も、テキサスゲートと防鹿柵で何とか被害をくいとめている状態です。

シカの行き来を制限するテキサスゲート】




















行場への道は狭く、路肩も脆いので離合に気を使います。また植物の観察や撮影に夢中になり、気づかないうちに登山道を外れると貴重な植物を踏んでしまうかもしれません。大切な自然を保っていくために注意しましょうね。

左上:ヒメフウロ】

【右上:ノリウツギ】

【左下:ナンゴククガイソウ】

【右下:アキノキリンソウ】







せっかく行場まで来たので、一ノ森まで足を延ばしてみました。両剣神社そばの崩壊地は通行できるようになってはいますが、暫定的な整備なので降雨のある時や降雨の後は通行をひかえた方がいいかもしれません。

崩壊地の上にルートがあります、要注意です】










うっそうとした森を抜けると笹原が広がります。この笹はミヤマクマザサといい剣山系の代名詞となっています。その先にある笹の丘が一ノ森です。その時、ぴぃぃぃっ!という甲高い音が聞こえました。シカの警戒音です。周りを観察すると登山道わきのミヤマクマザサにはシカの食痕がいくつもあります。またダケカンバにも真新しい剥皮の痕がありました。そして一ノ森北斜面のダケカンバは冬枯れのような姿でした。

左上:ミヤマクマザサに残されたシカの食痕】

右上:ダケカンバへのシカの剥皮】

左下:冬枯れのようになったダケカンバ】

【右下:笹原にシカ道、縦横無尽】







シカの食害は日本中で深刻な問題となっています。どうしても防除ばかりに意識が持って行かれがちですが、なぜこの状況になってしまったのかを考えることも大切ですね。そんなことを考えながら歩いていると、小さな雨粒が落ちてきました。予想より早く夕立が来そうなので、少しペースを上げて剣山を目指します。

剣山の山頂はすっかり雲に覆われてしまいましたが、多くの人で賑わっていました。頂上ヒュッテ隣の宝蔵石神社は、輪くぐり神事をやっていました。大剣神社に寄り道をして大急ぎで下山して、車に戻ったところで夕立になりました。

左上:タカネオトギリ】

右上:ホソバシュロソウ】

左下:モミジコウモリ】

右下:レイジンソウ】

















この時期の山岳では、朝から天気が良く気温が高い場合、夕立になる確率が非常に高くなります。強い日射が原因の熱雷と寒気の流れ込みを原因とする界雷が、起こりやすい場所なのです。逃げ場のない稜線上で雷につかまるのは、とても恐ろしいことです。登山計画は天気予報も考慮しましょうね。またレインウェアなどの装備は必携ですよ。しっかりとした準備で夏山を安全に楽しみましょう。

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2016年08月08日【体験教室】 昆虫観察会

瀬戸内海国立公園 大林めぐみ

夏休みに入り、数日が経ちましたね。

子ども達で、また家族みんなでいろんな所にお出かけしているのではないでしょうか。

そんな楽しい夏休みですが、子ども達に待っているのは宿題!

特に自由研究はどうしよう・・・と悩んでいる人も多いのでは?

7月の五色台体験教室では、そんな子ども達の興味や探求心をかき立てる「昆虫観察会」を開催しました。


講師は、かがわ自然観察会・好井さん。

今回の参加者は未就学児が多いということで、トラップなど仕掛けず、身近に見つけられる昆虫を中心に捕まえてじっくり観察しました。

さっそく昆虫探しに出発!と言いたいところですが、まずは森に入る注意点や身の置き方などを教わりました。

・森はいろんな生きものの住み処。「こんにちは。お邪魔します」と優しい気持ちで入りましょう。

・森の中にはスズメバチやマムシなど毒を持つ生きものも。

 怖い!と思うかもしれませんが、ゆっくり静かに後退しながらその場を離れましょう。

 むやみに手で払ったりすると、「攻撃された!」と勘違いして襲ってきます。


そんな気持ちや心構えを胸に森の中に出発!


早速、道中にはクロアゲハが。留まっては飛ぶのでなかなか観察はできませんが、アゲハチョウってなぜか人を惹きつけますねぇ。

森の中には魚(うお)の池があり、そこにはトンボや水生昆虫が生息しています。

この日、あまり数は見られませんでしたが、モノサシトンボやアオイトトンボ、ギンヤンマやオニヤンマ?などが見られました。水面には気持ちよくスイーっと浮かぶアメンボも。

急斜面のため池の近くまでは行けませんが、じっとしていると生きものの方から近づいてくれますよ。



近くのテニスコート広場でも昆虫探し。

ここでもチョウやトンボを中心に捕まえようと子ども達は追いかけ回しますが、なかなか捕まりません(笑)

そんな中、近くにある木を見ると・・・


左:クマゼミ    右:ニイニイゼミ


同じ木に10匹以上の抜け殻がくっついていました。

セミは木の枝や幹に産卵管という管を通して卵を産み付けます。たいていのセミは翌年の初夏になると、卵から孵化した幼虫が木から出て、木から下りて土の中に潜ります。幼虫は木の根から樹液など吸いながら数年かけて成長し、時がくれば土から出て、木などに登り、羽化の準備を始めます。羽化するために土から出てくるのは日暮れから。これは鳥など天敵に狙われないようにした自然の知恵なのでしょう。

昼間に木の下で小さな穴を見つけたなら、それはセミの幼虫が抜け出た後かもしれません。7~8月、風のない暖かい日の夕暮れからはセミの羽化を観察するのもいいかも。

またセミの抜け殻は採取した場所と日時などを記録すると、セミの分布を調べるのに役立ちますよ(自由研究のヒント!)


【AR日記 広島2010年7月20日「アブラゼミの一生」】

https://chushikoku.env.go.jp/blog/2010/07/20/


クラフトハウスに戻り、少し休憩した後は広場でバッタ探し競争!

・・・のはずが、広場いっぱいに飛んでいるナツアカネやショウジョウトンボ捕りがメインになってしまいました。

講師から「追いかけるんじゃなく、じっと待ってトンボからやってきたところで捕虫網をかけるんだよ」とアドバイスを受けるも、体は自然と追いかけてしまうようです(笑)



さぁ、タイムアップ!何匹捕まえられたか数えてみましょう!



・・・なんと、1番多い子は24匹も捕まえていました!ツマグロヒョウモンやナツアカネ、ショウリョウバッタにクロアリといろいろありました。

そんな子ども達にはスタッフ手作りのうれしいプレゼントが★


竹の皮で作られたバッタです。


観察し終えた昆虫はまた自然に帰しました。

昆虫観察は捕まえる楽しさだけでなく、観察する楽しさ、自然に対する優しい気持ちを育んだり、また今必死でやっている宿題のテーマ決めなどいろんな種類の楽しさがあります。昆虫は少し怖いな、と感じる子もきっと何かきっかけがあれば好きになるかも。

そして、昆虫観察や採取する時は以下のことも気をつけてもらえるといいですね。

・肌を守るために長袖、長ズボン、運動靴、帽子など服装はしっかりと準備しましょう。

 スズメバチや蚊は黒いものに寄りつきやすいので黒い服は避けましょう。

・水分やタオルなど日焼け、暑さ対策は十分に。

・捕虫網や虫かごなど道具はていねいに正しく使い、ギュウギュウになるまで虫かごに入れないようにしましょう。

・昆虫を捕まえる時はそっと、やさしく持ちましょう。


夏~秋にかけては虫の鳴き声も変わる季節。

目に見える昆虫だけではなく、耳で感じる昆虫も楽しんでみましょう。

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2016年08月05日【お知らせ】 タイムラプス動画の公開について

瀬戸内海国立公園 大林めぐみ

今年は猛暑というだけあって、陽射しが強い、雨天からの晴天になった時の気温上昇にビックリする、というくらい暑い夏です!

そんな暑い、だけど楽しみな夏休みを迎えた皆さまにご案内です。

昨年度より少しずつ試行しておりましたタイムラプス動画を環境省ホームページにて公開しました。


タイムラプス動画とは、長時間の事象の変化を短時間で表現した動画をいい、これを活用することで静止画だけでは見られない季節や時間とともに流れゆく風景をご覧いただくことができます。

瀬戸内海国立公園には、陸から船から眺められる穏やかな内海に点在する島々の多島海景観や古くから人が暮らしてきた瀬戸内ならではの自然と共存・調和した人文景観など魅力ある風景が数多くあります。その中には意外と知られていない展望スポットや時間や季節のタイミングで眺められる絶景も。

高松事務所では、このタイムラプス動画を用いて、朝焼けや夕景をはじめ、時間や季節とともに移りゆく美しい瀬戸内海国立公園の風景を順次ご紹介していく予定です。

まずは、五色台からの夕景を音楽と共にお楽しみください。


【環境省動画チャンネル】

https://www.youtube.com/user/kankyosho

タイムラプス動画「瀬戸内海国立公園~五色台からの夕景~」

【高松事務所HP】

http://chushikoku.env.go.jp/takamatsu/

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