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アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

中国四国地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大山隠岐国立公園 松江

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2014年01月09日あけましておめでとうございます ~宍道湖渡り鳥飛来数調査~

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

新年あけましておめでとうございます。
本年が皆様にとって健康で平安な年でありますこと、そして地球の環境が良い方向に向かうことを祈ります。
年末年始はいかがお過ごしでしたか。今年は9連休だったと言う方も多かったと思いますが、仕事始めはスムーズに入れましたか?     
この事務所でも仕事が始まりましたが、早速宍道湖の渡り鳥飛来数調査をおこないました。

この日は山陰の冬としては数少ない晴れ渡った一日でした。
空気は冷たいですが、風が弱く日差しが嬉しいです。

【風がやみ、湖面が鏡のように静まりました。右寄り奥にちょこんと見える山が三瓶山です。】
湖にはシジミ漁の船が出ています。鳥たちものんびりと過ごしているように見えます。
カモたちは更に南下したのでしょうか。最盛期には何万羽と数えましたが今はそれほどではありません。
数は少ないのですが多くの種類が混ざり合って分散していたので、カウントするのに時間が掛かりました。
頭に冠でも乗せているような羽が特徴的な水鳥が見えます。カンムリカイツブリです。年前までは10羽前後しか見られなかったのですが、数が多くなってきました。例年年を越してから多くなって見られる鳥です。

宍道湖西岸の田んぼでは、コハクチョウの群がお食事中でした。泥に首を突っ込んでパチャパチャと水をはじく音がにぎやかです。真っ白なコハクチョウの顔は泥だらけです。
カウントしている最中にも、ちょくちょく小さな群が舞い降りてくるので困りました。

【バックに見えるのは大山です。この日は宍道湖の西岸からもハッキリ見えました。】

今日はマガンが見当たらないなあと思っていると、ガアガアと騒々しい音と共に大きな群が飛んできました。
宍道湖に注ぐ斐伊川の河口で昼休みをしていたのです。午後からの食事に一斉に飛び立ったところでした。

【三瓶山をバックに宍道湖の平野をマガンの群が飛びます】

ここではバードウォッチングをされている方の車を見受けます。他県ナンバーもあります。
地元にとってはなんてことはない普段の光景も、どこにでもあるわけではないのですね。
マガンは昔どこにでもいた鳥だそうですが、今ではここ宍道湖周辺が西日本唯一の大きな飛来地になってしまいました。
この宍道湖が、これからも末永く野鳥たちの楽園であり続けることを願わずにはいられません。

【河口にはまだ休憩しているコハクチョウとマガンがいました。】

環境省ホームページ内の「渡り鳥の飛来状況」より、調査した結果を御覧いただくことができます。
URLは下記の通りです↓
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/migratory/ap_wr_transit/index.html

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2013年11月28日秋から冬へ ~宍道湖渡り鳥飛来数調査~

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

ここのところ松江は強い風の吹く日が多く、ボロの我が家はガタガタといっています。今日はそれに時折雪が加わり、吹雪といった荒れ模様になっています。今シーズン初めての天気です。
三瓶山では先週雪が積もりました。山陰の季節は秋から冬に移り変わりつつあります。
三瓶山の北麓にある三瓶自然館サヒメルでは、現在「アクティブ・レンジャー国立公園写真展」がおこなわれています。
これは中国四国地方の各事務所にいる7名のアクティブ・レンジャーが撮った、国立公園やラムサール条約登録地での写真を展示したものです。
期間は12月19日(木)まで。玄関ホールにて展示していますので、入場無料となっています。三瓶にお出かけの際は、ちょっとお立ち寄りください。なお毎週火曜日と12月2日~6日はサヒメルの休館日ですのでご注意ください。



さて今話にも出ましたラムサール条約登録地ですが、松江では宍道湖と中海がそれにあたります。
ここでは冬場月3回、渡り鳥の飛来数調査をおこなっており、私は宍道湖を担当しています。
一昨日11月下旬の調査に出かけました。宍道湖の向こうには島根半島の里山が赤く色づいていました。
この日は多少日差しがありましたが、強い西風が吹いていました。
湖は日本海のように荒れ、濁流のように茶色く濁っています。
観測場所は西側に開けた高台です。案の定正面から強烈な風が吹き付けていました。
風に飛ばされてはいけないと、書類を手提げ袋にしまって置いておいたところ、みごとに飛ばされ、慌てて追いかけたりなんてして・・・。
望遠鏡をのぞくと像は震えて見えます(いや、見えたものではありません)。それを押さえ着けて必死でにらみます。
「近くの係留所にいる鳥は何ガモだ?」震える映像と自分の今までの記憶の映像とをすりあわせて、種類を割り出さねばなりません。

【波は防波堤に砕け散り、次の瞬間防波堤を越えてシブキを飛ばしていました。】

前回11月中旬に見られたように沖合に大群はいるのか。はるか沖合に砂粒のようなカモの群が波に見え隠れしていないかと、ゆっくりと望遠鏡をスライドさせます。白波と像の震えで見落すことがないよう注意しながら。
前回は今季最大の三万羽を越えるカモが見られたのですが、今回は三千羽台しか見られませんでした。あれだけいた大群はどこに行ったのでしょう。
遠く湖上には無数の粒がチカチカと見えました。羽ばたいているカモの群です。この日は宍道湖を飛び立つ群が多かったように思えます。
宍道湖が荒れているから他のところに避難したのでしょうか。でもあれだけの数のカモたちが避難できる場所などあるのでしょうか。
それとも、どうせならと一気に南下して行ったのでしょうか。

宍道湖を巡回して湖の西岸に来ました。西風なので西岸側は波が穏やかで、水も青いです。それに湖岸の土手が風よけになっているのか、多くのカモたちがいました。

【様々な種類のカモたちが見えます。鳥たちの避難所となっているようでした。】

更に宍道湖周辺の田んぼを巡回しました。ここには毎年マガンの群がやって来ます。前回よりも数が増えて二千五百羽ほどいました。
このマガンと共にヒシクイも少数やってきます。区別がつきにくいですが、マガンのクチバシが桃橙色なのに対し、ヒシクイは御覧のような黒地に黄色の2色です。

【ヒシクイです。この日はマガンの群から離れていました】
宍道湖周辺にはコハクチョウたちもやって来ます。ハクチョウたちも倍近くに増えて八百羽ほどいました。
吹雪といいマガンやコハクチョウたちといい、いよいよ山陰の冬到来です。

【この日のごちそうは田んぼの二番穂。黄金色の穂からピョコピョコと白い首が動いています。】

さて来年のことを言うと鬼が笑うと言いますが、もうそんな時期になってきました。
来年2月8日(土)に松江の街で冬鳥を見て回ろうという催しをおこないます。
これはNPO法人「まつえ・まちづくり塾」さんと共同で開催する企画です。
下記URLアドレスから開催概要のホームページを御覧いただけます。
http://www.mmjuku.or.jp/machikore/autumn2013/wataridori

マガンやコハクチョウは見られないと思いますが、松江の街でも色々な渡り鳥が見られます。ラムサール条約登録地である、宍道湖の畔にある松江ならではの光景ではないでしょうか。
鳥など全くわからないといった方大歓迎。皆様ふるってご参加ください。お待ちしております。_(._.)_

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2013年11月08日三瓶山は紅葉の季節です

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

すっかり秋も深まってきました。三瓶山も紅葉の季節をむかえています。
山を歩くと淡く色づいた落葉の木々に包まれました。また麓の西の原ではススキの海原が秋風にゆれていました。この季節晴れた日に野山を歩けば、素敵な風景に出会えるでしょう。

【色づく落葉樹の道を歩くのはいいものです。】



そんな三瓶で先日、「ウスイロヒョウモンモドキ」という希少な蝶の生息地の植生調査と維持作業の立ち会いに行って来ました。
これは環境省が委託しておこなっている事業です。
植生調査はこの蝶の食草、特にオミナエシの生育状況調査をおこないました。
オミナエシは秋の七草の一つで、沢山の小さな黄色い花を咲かせる草花ですが、これがこの蝶の幼虫の餌なのです。三瓶山ではオミナエシがないとこの蝶は生きていけません。
ですが近年オミナエシが減少しているため、その苗の植栽を関係者と一緒におこなってきました。
調査の結果、昨年植えられた苗は花を咲かせたり、株を増やしたりして順調に生育していました。調査されたデータは今後の保全のための活用ができればと考えています。

【ススキを調査しているように見えますが、そうではありません。その手前のオミナエシの株の数や高さ、花茎の数や高さを調べています。】


【西の原ではこんな光景も。】

さてその調査から1週間後、今度はナラ枯れ被害や対策の情報共有のための現地会参加のため再び三瓶山に行って来ました。
全国でナラ類などの木々が枯れる伝染病「ナラ枯れ」が問題になって久しいですが、ここ三瓶山でも近年被害に悩まされています。
ここは国有林でもあるため、林野庁が対策を講じています。その甲斐あってか壊滅的な打撃は受けていませんが、未だ終息に向かっていません。

【ナラ枯れの被害木を見ながら説明を受けます。】

ナラ枯れは比較的大きくなった木がやられやすいそうです。
里山とよばれる山は、薪などとして利用できる木々に造り替えられてきた森で(薪炭林・二次林)、樹木を切り出すことによって木々が若返り(萌芽更新)森が維持されてきました。
ところが高度経済成長と共に石油や電気を使うことにより、薪炭林は放置される様になりました。放置され何十年か経った今日、大きくなった木々が増え、全国的にナラ枯れの問題が噴出しているのだと言われています。
人間が植林し管理していた杉・檜を放置してしまっているために、今 山が荒れ土砂災害が起きやすい要因となっているように、人が一度手を加えたものは、最後まで責任を持たないと、結局何らかの形でそのツケが帰ってくるのかもしれません。


【室ノ内の森です。わずかの間に山の色づきはすっかり濃くなりました。】

【道には落ち葉のじゅうたんが敷き詰められていました。】

さて三瓶山の紅葉は見頃をむかえています。(11月7日現在の状況です)
三瓶山は天候が急変しやすいです。辺りが晴れていても雨が降る事も多々あります。山に登られる方は装備と心の備えをしっかりして、紅葉狩りを楽しんでください。

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2013年10月28日日本ジオパークネットワーク隠岐大会 その2

大山隠岐国立公園 松江 前川 文吾

日本ジオパークの全国大会日程の後半は隠岐を巡るジオツアーです。台風の影響により隠岐の島町内を見学するコースのみとなりましたが、中止になったコースの参加者も含めて、大勢の方が参加されました。


ジオツアー参加者

私もその中の1コースにサポートとして同行しました。

まずは隠岐自然館を見学します。自然館は隠岐世界ジオパークのビジターセンターに位置付けられており、隠岐の自然環境の概要を知ることができます。今回の大会に合わせて、今年隠岐で発見された2000万年前の巨大ワニの化石が展示されていました。東アジアで発見されていた同種のワニは、これまで台湾で発見された1000万年前の化石が最古とされていましたが、今回の発見でその年代を大きく更新しました。発見者によると、化石から推定すると7~8m級の巨大ワニであることも世界的な発見だそうです。


自然館見学の様子


以前隠岐で発見されたワニの歯の化石


今年発見された巨大ワニの胸骨の化石

ジオツアーではメインのガイドさんだけではなく、様々な人がジオパークの見どころを案内します。隠岐の古民家については、隠岐の島町の文化財担当の方に案内していただきました。藁ぶき屋根の家で、写真でいうとの奥から3つ入口があるのが隠岐の古民家の特徴です。一番奥の入口が殿様・神官レベル の方の入口、中央は庄屋レベルの方、それ以下のレベルは一番手前の土間の入口を使うそうです。


隠岐の古民家の解説

隠岐のジオパークでは、地形や地質といった大地のはなしだけではなく、大地の影響を受けて形成された島の生態系や歴史・文化についても解説します。※隠岐総社 の玉若酢命神社(たまわかすみことじんじゃ)では樹齢約2,000年といわれる幹回り11mの巨大な杉が立っています。この神社の裏山には古墳群があり、かつて隠岐の※国府 があったことから「国府原(こうのばら)」という地名がついているなど、古代から重要な場所として隠岐の人々が守ってきたことがうかがえます。

※総社とは?
古代日本において地方の統治はその土地の有力者(旧豪族)からの任命だったため、中央政府支配の要は行政官として派遣する国司(こくし)にかかっていました。その国司が地方に赴任した際に最初に行う仕事は赴任地内の神社をすべて参拝することでした。しかし、隠岐は古い記録によると300以上の神社があったといわれています。すべて参拝することはできないので代表の総社一社に参拝することで領内のすべての神社に参拝したことにするというのが総社制度です。

※国府とは?
国司が政務を執り行う施設が置かれた都市のことです。各地の政治的中心地であると同時に司法・軍事・宗教の中心地でもありました。


樹齢2000年といわれる八百杉(やおすぎ)

国立公園内で行うふれあい事業などでは、自然のしくみなどをわかりやすく参加者に伝えるインタープリターの存在が欠かせません。今回のジオツアーでは、隠岐で活躍するインタープリターの手法も紹介されました。それによると、ジオパークでは岩石・地質に偏りがちだが、その前に自然全般に親しむ入り口として身近な草花を使った解説などが大切であり、この技術は全国どこでも使えるとのことでした。写真はカタバミの葉で10円玉を磨いているところです。カタバミにはシュウ酸が含まれており、酸によって十円玉がピカピカになります。


インタープリターの手法を参加者も実践します

隠岐ジオパーク推進協議会の外国語担当として働いているテレサさんは、福浦トンネルを案内してくださいました。このトンネルは、550万年前に発生した火砕流跡地に1870年代に人々が手彫りで掘ったトンネルです。その後、交通手段の変遷とともに火薬を使用してより大きなトンネルを掘り直し、最後は自動車を通すために重機でトンネルを拡幅しました。福浦トンネルは大地の成り立ちと人の営み、土木技術の遷移を見ることのできる場所です。同行していた世界ジオパークビューローの委員もテレサさんの案内はパーフェクトだと喜んでいたそうです。


ジオサイトを案内するテレサさん


火砕流跡に掘られたトンネルに地質学者も興味津々です

隠岐では旅館のご主人も地質について案内します。ここは隠岐片麻岩という岩石が見られる場所です。この岩石は日本にある岩石の中でも古いものに分類されるそうです。隠岐片麻岩は、大陸の砂が水に流され堆積して砂岩となり、2億5000万年前頃の地殻変動によって変成したものだそうです。2億5000万年といっても私たちの感覚ではイメージできませんが、その当時日本は大陸の一部で日本海もなかったそうです。


隠岐片麻岩の露頭を解説

ここは大山神社という自然物を対象にした古代信仰の流れを残す神社です。隠岐にはこうした社が無い神社が数多く残されており、小さい集落で守っている神社も含めると小さな島に100以上の神社があるといわれています。ここでは、大山神社で2年に一度行われるユニークな祭りの話やこの神社が長野県の諏訪御柱祭りの源流であることなどをお話していただきました。


古代信仰の流れを残す大山神社

ジオツアー参加者は各地に整備されているジオパーク案内看板の内容も興味深く見ていました。昨年度環境省が作った総合案内看板もしっかり活用されていました。 ツアーでは活発な意見交換が行われ、隠岐の国立公園とジオパークの事例が全国の自然公園とジオパークの連携強化につながっていく期待が持てるツアーでした。


環境省が整備した看板も見学です

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2013年10月24日日本ジオパークネットワーク隠岐大会

大山隠岐国立公園 松江 前川 文吾




10月15日~10月18日に隠岐で日本ジオパークネットワークの全国大会が開催されました。台風の影響により本土と隠岐を結ぶ高速船・フェリーともに欠航する中、全国のジオパーク関係者約500人が集り開催されました。




日本ジオパークネットワークの全国大会は隠岐大会で4回目となりますが、毎回ジオパークの質を高めるため分科会でテーマを設定して活発な意見交換が行われています。今回は「首長セッション」「無形文化財を取り入れたジオパーク活動」「ジオパークガイドの交流意見交換会」が行われ、関連イベントとして環境省中国四国地方環境事務所主催の「自然公園とジオパーク」イベントが実施されました。




環境省のイベントでは、約150名にご参加いただきました。イベントでは日本ジオパーク委員会の委員でもある自然公園財団の阿部宗広氏をお迎えし「自然公園とジオパーク」と題して自然公園とジオパークは自然環境の保全・保護と利用・活用という点で共通しており共存共栄に向けて連携を進めていくことが大切という趣旨の基調講演をしていただきました。その後、全国各地のジオパークと国立公園の連携した事例について最初にえびの自然保護官事務所より「霧島ジオパークの魅力を高める」と題しノカイドウの保護・保全に向けた環境省の取り組みがジオパークの魅力アップに貢献している事例を紹介していただきました。次に島原半島ジオパーク推進連絡協議会より環境省の遊歩道整備とジオパークの事務局が遊歩道の管理で協力している事例を紹介していただきました。最後は隠岐ジオパーク戦略会議より環境省のソフト事業を活用したジオパークガイドの育成や国立公園内を活用したツアーや学習会などの事例を紹介していただきました。

つづいて、全国のジオパークとジオパークの候補地を対象として、自然公園との連携状況をアンケート調査した結果が発表されました。ここではジオパークの対象区域内の90%以上のジオパークが自然公園の区域と重複していることや、多くのジオパークが自然公園の管理者と保全・保護に関して連携を強化していきたいと思っていることなどが紹介されました。




最後に、講演をしていただいた4名と会場参加者全員で意見交換が行われ、アンケート結果や講演内容、今後の連携の進め方について活発な発言がありました。




イベントのまとめとしては、ジオパークと自然公園の連携は始まったばかりであり、様々な課題はあるものの連携強化に向けてジオパークと自然公園は今後も協力していくということで参加者の合意が得られました。

大会期間中、別会場で各ジオパークのポスターセッションが行われておりそちらも大盛況でした。




なかにはジオパーク対象地域内の地質をモチーフとしたアイデア菓子などのグッズも紹介されていました。




各分科会・関連イベント等が終了した後の全体会合では、隠岐の島町立北小学校の5・6年生が、今年の夏に隠岐世界ジオパークをテーマとして活動した子どもパークレンジャー事業について発表がありました。




やや緊張の面持ちでしたが、たくさんの聴衆が見守る中で立派に発表できました。




子供たちの発表が終わると、各分科会と関連イベントについて、まとめの報告がありました。大会の最後に隠岐の島町松田和久町長が発表した『隠岐宣言』にもしっかり「ジオパークと自然公園との関係はその内容や進捗度合に違いはあるもののより良い連携を目指してそれぞれの地域に応じた活動を進めていく」と明記されていました。

次回の日本ジオパーク全国大会開催地は南アルプスジオパークです。


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2013年10月11日ウスイロヒョウモンモドキ情報交換会

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

三瓶山ではウスイロヒョウモンモドキの保護活動や研究を、長年にわたり熱心にされた方々がいらっしゃるので、貴重なノウハウが蓄積されています。
この蝶は大山隠岐国立公園の中では、大山蒜山地域の新庄村にも生息しています。新庄村でも蝶を守ろうと活動されている方々がおられます。
ですが今までは生息地域同士のつながりというものはほとんどありませんでした。そこで保護保全に係わる情報を共有し役立てていこうと、関係者一同が集まる情報交換会を開催しました。昨年度より開かれたこの会は今年度で2回目です。

三瓶の現地見学をおこない、蝶の保全活動や草原維持活動について各代表から説明していただきました。

【大田の自然を守る会の伊藤さん。蝶の保全活動に尽力されてこられました。】
室内に場所を移し、この蝶を長年研究繁殖活動されてきた方、新庄村で保全活動されている代表の方、そして参考事例として山口県の秋吉台で草原維持活動をおこなっている方の話もうかがいました。

【秋吉台草原ふれあいプロジェクトの副代表、太田さん。】
今回この会で色々な情報が共有され、とても参考になる話が交換され、有意義な会合となりました。

現在ウスイロヒョウモンモドキは日本全体でもとても厳しい状態となってしまいました。
この蝶は草原を住みかとする蝶です。以前は牧場や採草地として人が利用していた土地があり、そんな場所にこの蝶は住んでいました。それが利用されなくなって放置され、森林化したため住みかを追われてしまったのです。
ですがこの蝶は人間が草原を作り出す前から何万年と日本に住み続けてきたわけです。昔は人間が作り出さなくても自然の草原がいくらでもあったのでしょう。今は開発されて自然の草原など貴重な存在です。

私はたまに飛行機に乗る事があるといつも窓際の席を予約します。飛行機からの景色はいいですよね。
上空から下を眺めると、箱庭のように地上の様子がわかり楽しいです。
地上を眺めていると、なんと人工物の多いことかと改めて驚かされます。海は人工護岸、平地はくまなく区画整備された田畑、川は運河のようになめらかです。都市はアスファルトとコンクリートで覆われた巨大な要塞かコンビナートのようです。
山は自然に見えますが、その多くが人の手が加えられた半自然です。スギなどの単一林は「よくもこんな山奥にまで植えたものだ」と思うほど多いのですが、日本中で手入れをされる事無く荒れている森が多いのです。
人は自然と寄り添う暮らしから離れ、自然と分離した暮らしを送るようになりました。ですから草原、里山などといった半自然は荒れ果てています。
一方では土地は効率的に使われるようになり“遊びの土地”はなくなりました。天然林、沼地、荒れ野、ダムのないうねった川、干潟など、利用価値がない自然な土地は珍しいものになりました。

【これがウスイロヒョウモンモドキです。小さく柔らかく舞う蝶です】
以前あるテレビ番組の中で、将来の食糧問題などを子供達と語らうものがあり、ある子どもが「世界にはたくさん遊んでいる平地があるから、まだまだ食料は作れるよ」と言っていました。皆さんはどう思われますか。
こんな話があります。
「森は海の恋人」と言うキャッチフレーズをご存じですか。全国各地で海の漁師さん達が魚や貝などの採れる豊かな海を守るには山の森を豊にすることだと言って、荒れた山に木々を植え始めました。漁師さんだけでなく農家さんたちも協力し始めています。
またこんな話もあります。
オホーツク海は世界的な漁場ですが、それはどうも流氷と大陸から流れ出るアムール川のお陰であるようなのです。
流氷は漁師にとって漁ができなくなる厄介者とされてきました。アムール川流域は開発が進んでいない遊びの土地が多く残っている地です。川自体もぐねぐねと蛇行した自然の姿が多いようです。その厄介者と遊びの土地がはぐくむ川のお陰で、オホーツクの海が豊かなのだそうです。
ただ近年は流域の開発が進むなどしており、オホーツク海の環境への影響が心配されます。

どんなに自然と離れた暮らしをおくっていても、私達は自然の恩恵を受けて生きています。そして自然が病めば私たちの暮らしも苦しいものになってしまう、その事に私達は気づかないといけないのでしょう。

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2013年10月07日隠岐自然保護官事務所開設

大山隠岐国立公園 松江 前川 文吾

10月1日より大山隠岐国立公園隠岐島地域の自然保護と利用の推進を強化するため、隠岐自然保護官事務所を開設しました。昨年4月からアクティブレンジャー1名が勤務しておりましたが、今後は自然保護官1名が加わり、2名が常駐して業務を行うことになります。10月2日には地元自治体の関係者など20名にご出席いただき隠岐自然保護官事務所の開所式が行われました。


隠岐自然保護官事務所前記念撮影

環境省中国四国地方環境事務所の築島所長の挨拶の後、隠岐の島町長の松田和久様と島根県隠岐支庁長の和田謙一様よりお祝いの言葉をいただきました。
松田町長からは隠岐世界ジオパーク、そして国立公園の名に恥じない自然環境をはぐくむ努力をしていきたいと力強いお言葉をいただきました。


隠岐の島町松田町長様の祝辞

その後、新しく隠岐に赴任した自然保護官の新中より国立公園の区域見直しに必要な調査の実施や、隠岐世界ジオパークと連携した環境教育プログラムの推進、野生生物の保全・保護などの隠岐自然保護官事務所の業務内容について説明がありました。


新中自然保護官による隠岐自然保護官事務所の業務内容説明

今年は隠岐島地域が大山隠岐国立公園に編入されて50周年の節目の年であり、隠岐ジオパークが世界ジオパークに認定された記念の年でもあります。これから隠岐自然保護官事務所は地元の方々と隠岐の自然環境について、ともに考え、協力しながら地域の人が誇りに思える国立公園を実現したいと思います。


関係者による記念撮影

隠岐自然保護官事務所
〒865-0015
島根県隠岐郡隠岐の島町港町塩口24隠岐支庁別館1階
TEL 08512-2-0149 FAX 08512-2-0150

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2013年10月04日秋晴れの日に ~島根半島と宍道湖~

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

今年も早いもので10月です。朝夕はめっきり涼しいと言うよりちょっと肌寒くなってきました。皆さんもお身体気をつけてくださいね。
日中は暑さから解放されてすがすがしい季節となりました。
晴れた日などはお出かけするには最高の季節です。

【熱い日差しを避けて、この季節に海を見に行くにもいいものです。】
先日は島根半島の多古鼻に定点観測に行ってきました。
定点観測とは決まったポイントから継続的に写真を撮り、環境などの経年変化を記録していくものです。
この日は晴れたばかりでなく、空気が澄みわたって絶好の撮影日和でした。

【この写真は定点観測の写真じゃありませ~ん。あしからず。】
撮影日和と言う事は行楽日和でもあります。
青い海は一段と美しく見えました。
多古鼻からは隠岐がクッキリと見えました。こんなに大きく見えるのか、と改めて思うほどです。

【こちらは島前。この右には同じくらいの大きさで島後が並んで見えます。】
この季節、島根半島は青い海と美しい海岸風景を眺めながら、静かな時間を過ごせます。

また今日は今月初の宍道湖の渡り鳥調査に行って来ました。
宍道湖西岸には今年もマガンたちがやって来ました。初飛来日は9月の26日でした。
今日は130羽ほどの群が斐伊川の中州で昼寝をしているのが見られました。これから日に日に秋らしくなっていくと共に、どんどん増えていくことでしょう。


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2013年09月19日祝 隠岐ジオパーク世界認定!

大山隠岐国立公園 松江 前川 文吾

ジオパークは、「大地の公園」とも訳され、地形・地質を中心にした地域の貴重な自然環境や歴史・文化を体験プログラムやツアー等を通じて学び、その資源を次の世代へと守り伝える活動で、国際連合の専門機関であるユネスコも支援する取り組みです。
ジオパークの取り組みは環境の保全保護と持続的な利活用を主題としており、日本の国立公園の理念と合致する部分も多く、隠岐をはじめ日本各地で国立公園とジオパークの連携活動が行われています。
隠岐は平成21年に日本ジオパークに認定され、昨年世界ジオパークの認定審査を受けましたが、残念ながら情報が不足していると判断され認定が保留されていました。これを受けて、約1年間をかけて情報不足の点を補い、ジオパークの活動をさらに活発化させた結果、9月9日ついに隠岐ジオパークが世界ジオパークとして認定されました。今回の認定で世界ジオパークは全世界でちょうど100地域になり、日本では洞爺湖有珠、糸魚川、島原半島、山陰海岸、室戸岬に隠岐が加わり6地域となりました。

世界認定時の様子を写真提供頂きましたのでご紹介したいと思います。


済州島(韓国)でのAPGN(Asia Pacific Geoparks Network)大会で隠岐ジオパークのプレゼンがありました。このプレゼンの時はまだ認定発表前なので緊張の面持ちです。「写真提供 西ノ島観光協会 Nicola Jones氏」


島根県隠岐支庁舎で認定可否の第一報を受ける隠岐ジオパーク推進協議会松田和久会長(隠岐の島町長)「写真提供 ジオパーク推進協議会」


認定決定のくす玉割り「写真提供 ジオパーク推進協議会」


済州島では認定証授与式が行われました。向かって左から2番目が隠岐の認定証を持つ升谷西ノ島町長 「写真提供 ジオパーク推進協議会」


喜びに沸く隠岐 「写真提供 ジオパーク推進協議会」

今回の世界ジオパークの認定は関係者の方々の地道な努力が実った結果だと思います。私も隠岐ジオパークと国立公園の魅力が伝わるよう普及啓発に努めていきたいと思いました。

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2013年09月11日9月9日は隠岐の新記念日に (今回はテーマ色々です)

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

9月に入り8月の暑さがうそのように涼しくなりました。秋の虫の音がいいですね。
日中は暑い日もあれば涼しいを通り越して肌寒い日もあり、体が慣れていないぶん体調を崩さないように気をつけなければなりません。

さて真夏が終わったばかりですが、冬の私の仕事である宍道湖の渡り鳥の調査が今月から始まりました。上旬、中旬、下旬の月3回の調査は、冬の渡り鳥が北に帰る5月頃まで続きます。
近頃は雨の日が続いていましたが、調査初日は晴れました。視界も良好で遠くまで見渡せましたが、冬の水鳥の群は見られませんでした。ただキンクロハジロ(白黒のカモ)だけはすでに数十羽姿が見られました。これから秋の訪れと共に日に日に増す事でしょう。

【近頃の雨続きで宍道湖の水位は高く泥で濁っていました。】

話は変わりまして、今年は大山隠岐国立公園が誕生して50周年の節目の年です。
大山隠岐国立公園は、昭和11年2月1日に「大山国立公園」として指定され、その後、昭和38年4月10日に隠岐諸島・島根半島・三瓶山と蒜山地域を追加指定し、「大山隠岐国立公園」に名前を変えて誕生しました。
50周年に伴って今年は三瓶山を中心に各種イベントなどがおこなわれています。これから行楽には良い季節。三瓶山に遊びに行かれてはいかがですか。

※「“三瓶山”国立公園指定50周年記念事業公式サイト」のホームページアドレスです↓
http://nature-sanbe.jp/sanbe50th/

その一環としてこの春、三瓶山・隠岐・島根半島を紹介する展示会が三瓶自然館サヒメルでおこなわれました。
現在その展示の一部をお借りして鳥取県の大山で出張展示をおこなっています。
9月25日(水)まで大山の拠点 大山寺にあるビジターセンター「大山情報館」でおこなわれています。入場無料ですので、大山寺に来られる方はぜひちょっとお立ち寄りください。

【パネルのみの展示ですが、わかりやすくて興味深い内容ですよ。】

そしてそしてまたまた別の話題ですが、待ちに待ったニュースが届きました。
東京オリンピック開催決定!・・・もそうですが、それではなくて・・・、
隠岐諸島が「世界ジオパーク」に認定されました。\(^O^)/

9月9日18時過ぎ、韓国済州島で開かれていたジオパークネットワーク大会の場で、「島根県隠岐諸島を世界ジオパークに認定する。」と発表がありました。
昨年残念ながら情報不足を理由に世界ジオパーク認定保留を告げられてから1年、今回悲願達成となりました。
日本では6地域目の認定となります。
世界的に見ても貴重な地質と地形、特有の生態系、更には独自の歴史と文化が評価されたのです。



隠岐諸島には大地の変遷の歴史が詰まっています。ユーラシア大陸と一体だった時代、湖の底だった時代、深い海底にあった時代、火山活動によって隆起した時代、島根半島と陸続きになった時代、離島となった現在。これらの大地の歴史を見る事が出来るのです。


【雄大な海岸景観としても楽しめ、その素晴らしさは国立公園として折り紙付きです。】

またこのような成り立ちを経たからこそ、世界的に見ても珍しい特有の生態系が出来上がりました。北方系や南方系、大陸性、高山性、さらには氷河期の植物までもが一色単に同じ標高で見られます。もちろん隠岐固有の動植物もいます。

【圧倒的な存在感がある「乳房杉」。 日本海側に分布する「ウラスギ」のルーツは隠岐であるとも考えられています。】
さらに隠岐には独自の歴史・文化があり、それらは今なお守り継がれています。
隠岐には様々な不思議と魅力があります。これを機会に隠岐の不思議を探ってみてくださいね。

※「隠岐ジオパーク」のホームページアドレスです↓
http://www.oki-geopark.jp/

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