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アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

中国四国地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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大山隠岐国立公園 松江

150件の記事があります。

2013年03月28日三瓶の春の風物詩~三瓶山西の原火入れ~

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

「バリバリバリッ、」辺り一円に轟く音をたてて炎が燃えさかっています。炎は草原をつらぬく火柱の帯となっています。
三瓶山の春の風物詩となった、西の原の火入れがおこなわれました。
西の原は、芝生やススキ草原が広がった高原です。
火入れは年に一度、春先に枯れススキを焼き、草原維持(藪化を防ぎ草原性の希少な動植物の生息環境を維持)や山火事予防等のためおこなわれている行事です。

【炎は乱舞しススキの原を焼き尽くします】

火入れ作業は沢山の方々の協力の下おこなわれます。
私たちもこの火入れ作業の一員として参加しました。
私たちの役目は野焼きの炎が類焼しないように消火する事です。
水袋を背負って班ごとに所定の区画に向かっていざ出発!
そう遠くない距離ですが、背中の水袋が肩に食い込みます。

【手前に写っているのが「水袋」と書きました消化器です。】

野焼きで最も重要な事は安全に作業が行われる事でしょう。
作業は計画立てられ、組織化されています。また本部と各現場の班長さん方が、トランシーバーでやり取りをおこない進められます。
本部指示の下、班長さんがススキの根元に点々と火を着けていきました。
その小さな炎はどんどんと燃え広がり、瞬く間に大きな炎の帯となり枯れススキを飲み込んでいきます。
その勢いのすごい事。そしてその後には真っ黒な灰と化した大地が残るのみです。


激しい炎をともないますが作業は安全に行われ、我々の出番もなく順調に進んでいきました。
この様にして所定の区画が終わると、指示のあった次の区画に移動して火入れ作業を行っていきます。

次の区画で着火をした際のことでした。しばらくして防火帯であるクロスカントリー道の芝がメラメラと燃えはじめました。それは小さな炎とくすぶりでしたが、どんどんと広がり始めました。
ここで食い止めなければ際限なく広がり、手の着けようがなくなります。山火事に繋がらないとも限りません。
一気に緊迫した状況になりました。
私も立ちこめる煙の中、必死に水鉄砲のような消化器のピストンを動かし、火種に向かって水をかけました。消防士の方々も本気です。
一帯に広まる勢いに対してこれっぽっちの水で食い止められるのか!?そんな気持ちに駆られましたが、火は皆さんの力により火種のうちに無事消し止められました。



その後作業は午後も順調に進み、西の原の火入れは無事に終わりました。
枯れススキでうっそうとしていた西の原は、見渡す限りの焼け野原となってしまいました。


ですが炎は全てを焼き尽くしたわけではありません。
灰の下にはしっかり草花の根が生きています。春の暖かさに誘われじきに草が芽吹き、野の花々を目にする事が出来るようになります。
そして火入れをした事など嘘のように青々とした草原へと再生するのです。

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2013年03月15日冬のお客様

大山隠岐国立公園 松江 前川 文吾

隠岐の島に冬の間お客様が来ていました。
左からソデグロヅル、マナヅル、カナダヅルの3羽のお客様です。


左のソデグロヅルは日本では希少種であり世界的に非常に貴重な野鳥です。
世界的にも生息数が少なく約3000羽程度しか生息していないようです。夏季は主にシベリアの北極圏に近いところで過ごし、越冬地は中東と中国の2グループに分かれて越冬するようです。今回の隠岐のように日本でも極稀に記録されるようです。写真では翼が折りたたまれて見えませんが羽を広げると翼の先が黒くなっておりまさにソデグロの名にふさわしいツルです。

中央のマナヅルは絶滅危惧Ⅱ類の野鳥です。
世界的にも4000~5000羽が生息していますがその大半が鹿児島県の出水市で越冬することからご存知の方も多いのではないでしょうか?

右のカナダヅルは希少種で名前の通りカナダに主に生息しています。
アラスカからカナダ全域に広く生息しており主にカリフォルニア付近で越冬するようです。日本でも稀に迷鳥としてマナヅルに混ざって過去に出水市で記録されたようですが、その数は少ないようです。

隠岐では数年前にコウノトリやクロツラヘラサギなども記録されており、コウノトリは数年隠岐に留まったことから「隠岐の島 幸(さち)」という名前で隠岐の島町から住民票が発行されています。現在、佐渡や出雲でトキが繁殖されていますが、実は隠岐は佐渡の次にトキが生き残っていた場所だそうです。
トキやコウノトリ、ソデグロヅルもどちらかと言えば肉食の鳥でドジョウやカエルなどを好んで食すようです。こうした鳥達が隠岐にいたということは隠岐にはまだ以前の日本の田園風景のように生きものの豊かな生態系が残されているのかもしれません。


現在はソデグロヅル、マナヅルがシベリアへ向けて飛び立ったようです。カナダヅルはまだ飛び立ってはいないようですが、もし見かけた際には遠くからそっと見守ってください。

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2013年02月13日ウスイロヒョウモンモドキ情報交換会

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

ウスイロヒョウモンモドキとは何でしょう。
私が書いた日記で何度か話題にあげてきましたが、これは蝶の一種です。
現在日本では中国地方を中心に、局地的に幾つかの場所で見られるだけになってしまった絶滅危惧種です。

「これがそのウスイロヒョウモンモドキです 豹紋蝶に似た淡い色の蝶と言う事ですね」

それぞれの地域ではこの貴重な蝶を守ろうと保全活動がおこなわれています。
ですがそれぞれが独自に活動をおこなっており、互いの交流はあまりありませんでした。
今回このウスイロヒョウモンモドキの保護活動をされているそれぞれの地域の市民,NPO,行政の皆さんが集まり情報交換の会が開かれました。



生息地の一つが大山隠岐国立公園である三瓶山(島根県)と毛無山(岡山県新庄村)です。それに岡山県の恩原高原で活動されている方にもお越しいただきました。

どの地域もウスイロヒョウモンモドキを守りたいと願う、地元有志が起こした活動が始まりでした。 生息環境を維持するための草刈りや食草を植える等といったご努力をされてきました。そのような熱意がやがてNPOや行政などを巻き込んでおこなわれてきました。
ただどこもチョウが順調に増加しているとは言えず、また担い手となる新たな協力者や財源の不足といった問題を抱えています。

「各地域の活動団体の方の発表」

この会では日本チョウ類保全協会の方を招き、このチョウについての知識や保護,増殖のノウハウについても伺いました。
これをきっかけとし、ウスイロヒョウモンモドキが回復の道へとむかう事を願わずにはいられません。

今回皆さんの発表を聞いていて、このチョウを守ろうと活動を始められた皆さんが、チョウのみならず生物の環境,自然環境全体に視野を広げお考えになられているようにうかがえました。
現在地球上の生物はすごい早さで絶滅し続けています。その早さはあの恐竜大絶滅の時代よりも1,000倍のスピードで進んでいる、とも言われています。
私たちの気がついていないうちに地球の環境はずいぶんと変わってしまって来ているのかもしれません。
生き物たちが住みにくい環境の中で私たち人間だけは生きて行けるのでしょうか。

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2012年12月20日宍道湖 冬の渡り鳥調査にて

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

この日は山陰の冬としては貴重なよく晴れた一日でした。
昨日吹雪いたのが嘘のようです。
宍道湖の水鳥たちものんびり過ごしているように見えます。
沖合には何千羽といった大きなカモの群れが見えます。
カンムリカイツブリは単独で、点々と湖に散らばっています。
大きな獲物にありつけたアオサギが、魚を喉に詰まらせもがいています。
月3回渡り鳥の種類と数を定点観測地から観測するのが、秋から春にかけての私の仕事です。

定点観測を終え、今度はマガンやコハクチョウを探して宍道湖周辺を廻ります。
宍道湖西岸に来ました。ここはのどかな田園ですが、野鳥たちにとって大切な餌場でもあります。
特にマガンは最大で5000羽ほどがやって来るようです。

「珍しく宍道湖の西岸からも大山がクッキリと望めました」

明るい日差しの逆光に不思議な光景を見ました。
蜘蛛の糸らしき物が田んぼ一面を覆っています。
宍道湖西岸の田んぼ全てではないでしょうが、かなりの広い範囲で見られました。
いったいどうしたというのでしょう。
これは秋に生まれた小蜘蛛たちが、散らばるために糸で橋を張り巡らせているのだそうです。

「見えますか マガンの群れの前と奥にビッシリと張られた蜘蛛の糸 これが田んぼ一面にです」

田園を廻っているとふとすぐそばの休耕田に、見かけない大きな鳥が目に入りました。
白地に黒のタンチョウヅルのような柄。でもツルよりはずんぐりとしています。
急いでカメラを取り出しシャッターを切りました。
この鳥は、もしや・・・。鳥の図鑑を広げます。それはコウノトリでした。
物語ではよく登場する有名な鳥ですが、野生の実物を見るのは初めてです。
これは明日の地方紙を飾るか!?と若干期待しましたが、どうやら11月頃より見られたそうです。宍道湖ではごくたまに来るそうです。
かつては全国に生息していた鳥ですが、いまでは絶滅危惧種で国の特別天然記念物です。
どうしてコウノトリは全国から姿を消してしまったのでしょう。

「思ったよりも大きい これなら赤ちゃんも運んで来れそうです」

野鳥たちは神経質です。近寄り過ぎるなどしてストレスを掛ければ飛び去り、場合によってはもうそこには寄りつかなくなるかもしれません。その事により良い餌場を失い、死んでしまわないともかぎりません。
訪れる方はどうぞ静かに野鳥たちを見守ってあげてくださいね。

「美しいですね~」

宍道湖はラムサール条約登録地で野鳥たちの楽園ですが、その周辺の人間たちの利用する土地も、野生動物たちの重要な住処です。
ここでは人々の暮らしのそばに野生動物たちの暮らしがあります。

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2012年11月30日晩秋の三瓶~道標修繕~

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

島根県ではすっかり紅葉が里に下り、今は地面が落ち葉で染まっています。
三瓶山の様子はどうでしょうか。

「冬の森の海原に変わりました」

山陰は近頃ハッキリしない天気が多いですが、この日は小春日和となりました。
チラホラとではありますが、山を訪れる方もおられました。

登山道には道案内の道標が立っていますが、古くなり文字がかすれたものもあります。
関係者に聞いても設置者がわからず管理もされていない道標は放置され、なんとかならないものかと思っていました。
せめて私が出来る事として、今回道標のペンキ塗りをしてきました。(今回は室ノ内の道標をおこないました。)


「森はすっかり静まりかえっていました」

まず道標の板にサンドペーパーをかけます。ですが永年風雨にさらされた道標は木目が浮き上がり凸凹です。これではペンキが乗りません。
これまでの修繕でそれを感じたので、今回は新兵器を用意していました。
皆さんも小中学生の頃図工の時間に使ったのではないでしょうか。彫刻刀です。久しぶりに使いますね~。
小学生の頃私は図工“だけ”が5だったのですが(この意味わかりますか)、往年の技?発揮です。
彫刻刀作戦は正解でした。ですがそれでもペンキ塗りは容易ではありません。
ペンキがたれそうになるし、なかなか地に乗らないし、はみ出してしまうし。図工5もずいぶん腕が落ちたものです。


「上手に出来たとは言えませんが、読める事が大切ですから。お許しを・・・
左の道標“太平山”は下記のような理由から塗り直しませんでした。」
 
三瓶山は尾根づたいに一周する道があり、また分かれ道が沢山ある特性上、道標の行き先の書き方が難しい山です。
登山者から見れば、道標だけではどれが行くべき道なのかわかりづらい山です。
道標の指し示す向きがずれている物も多少あります。
今回不適切と感じた道標は塗り直しませんでした。
三瓶山に登られる際は詳しい地図を持ち、分岐点の度に確認できるように携帯してください。
地図と道標を照らし合わせ冷静に読み取る事も、登山の技術のひとつです。


「澄み切った室ノ内池を見たのは初めてです。こんなに浅いとは。自然の微妙なバランスにより保たれているのですね。」


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【お知らせ】『アクティブ・レンジャー国立公園写真展開催!!』

 中国四国地方に配置された6名のアクティブ ・ レンジャーが出会った、独自の特色を持つすばらしい国立公園、ラムサール条約登録湿地の自然。その風景や利用する人々や活動など、様々な表情を紹介する写真展です。

場所  :島根県三瓶自然館サヒメル玄関ホール(入場無料)
期間  :平成24年11月10日(土)~12月16日(日)
開館時間:9:30~17:00
休館日 :毎週火曜日、メンテナンス休館日12月3日~7日

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2012年11月07日ある荒れ模様の午後 ~鳥インフルエンザにかかわる死亡野鳥回収~

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

それはいつも突然掛かってきます。
受話器を取ると米子事務所の角レンジャーが済まなそうに(なにも角さんが悪いわけではないのですが)伝えてきます。
死亡した野鳥が見つかったとの情報が入ったとの連絡です。
私は回収するためすぐに車で出動しました。

「今年も宍道湖周辺の田んぼに コハクチョウたちが集まってきました」

皆さんは鳥インフルエンザをご存じですか。
一昨年の冬、国内の養鶏場のニワトリが感染、死亡し、それにともなって日本中が騒動となり、養鶏農家などに大打撃を与えました。

鳥インフルエンザは渡り鳥が媒介しているとされています。
そこで死亡した野鳥が見つかればそれを回収し検査して、鳥インフルエンザが持ち込まれていないか情報収集をおこなっています。
松江事務所では国指定の鳥獣保護区である宍道湖と中海の一部を担当しています。
今回は外部の方から死んだ野鳥を発見したとの通報を受け、そしてどうもリスク種1※¹のようだとの事で、回収に向かいました。

この日は強い風の吹きすさぶ日でした。
途中宍道湖沿いの国道を走っていると、堤防を飛び越え波しぶきがフロントガラスに降りかかってきました。
発見現場に到着したのですが、車を駐めるスペースがありません。少し離れた所に車を駐めました。
長靴とカッパを着ていると、私を歓迎してくれるかのように雨が強くなってきました。
道具を持ってブカブカの長靴を引きずりながら、現場に向かって探しながら歩いて行きます。
電話で聞いた情報だけでは、自分が思っている場所とずれている事も考えられるので、ある程度広い範囲を視野に入れ探さないといけません。
今日の宍道湖は「冬の日本海か!」と思うほど荒れ、波が消波ブロックで砕けています。
変わり果てた姿で“物”となった鳥は、なかなか見つけにくいものです。
見落とさないように注意して探しますが、強い風と雨が眼鏡を曇らせます。


遠くに何か白い物が2つほど見えました。
「カモメか?」そう思い私は長靴を引きずりながら小走りしました。
イメージと違いますがカモメのなかまは死肉をついばむのです。
近づくとカモメは逃げだしそこには変わり果てた姿のカモがいました。
まだ新しそうなので※²回収し検査することにしました。
回収した鳥を持って車に戻ったころ、私をねぎらうかのように雨がやんできました。

これを家畜保健衛生所に持って行き、簡易検査を行ってもらいます。
また更に死んだカモの粘膜を検体として取り、筑波にある国立環境衛生所に送り詳しい検査を行ってもらいます。
これにより死んだ野鳥が鳥インフルエンザに感染していたのか、いたのならばどのようなタイプのウイルスなのか調べます。
このように鳥インフルエンザの進入を早めに見つけ、場合によっては関係機関と連帯して感染拡大の防止に努めます。

産業の発展に伴い、伝染病も世界規模化し被害も大型化するようになりました。
私たちは文明が発展すれば、自然を完全にコントロールできるようになると思っていたふしがなかったでしょうか。
ですがどれだけ文明が発展しようとも、自然を支配することなどとうてい出来ないと言う事を私は感じさせられてしまうのです。

※¹ リスク種1とは
鳥インフルエンザウイルスの影響を受けやすく、死亡野鳥調査で監視の重要性が高いと考えられる種類18種。
1羽でも死骸があれば回収し検査する。
カモ目カモ科
・シジュウカラガン ・マガン ・ヒシクイ ・コブハクチョウ ・オオハクチョウ 
・コハクチョウ・オシドリ ・キンクロハジロ
タカ目タカ科
・オジロワシ ・オオワシ ・オオタカ ・ハイタカ ・ノスリ ・サシバ ・クマタカ
・チュウヒ
タカ目ハヤブサ科
・ハヤブサ ・チョウゲンボウ

※²新しそうなので回収し検査
死亡し鮮度が落ちると鳥インフルエンザウイルスも死んでしまいます。ですから新鮮な死骸でないと判定できなくなるのです。

鳥インフルエンザに関する情報については下記HPにも掲載しています。
環境省HP内より↓
「鳥インフルエンザに関する情報」
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/index.html


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【お知らせ】『アクティブ・レンジャー国立公園写真展開催!!』

 中国四国地方に配置された6名のアクティブ ・ レンジャーが出会った、独自の特色を持つすばらしい国立公園、ラムサール条約登録湿地の自然。その風景や利用する人々や活動など、様々な表情を紹介する写真展です。

場所  :島根県三瓶自然館サヒメル玄関ホール(入場無料)
期間  :平成24年11月10日(土)~12月16日(日)
開館時間:9:30~17:00
休館日 :毎週火曜日、メンテナンス休館日12月3日~7日

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2012年10月19日「自然公園指導員」ってご存じですか?

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

近頃は暑すぎず寒すぎず、野に山に出かけるにはぴったりの季節ですね。
出かけた先が国立公園などの自然公園、なんてこともあるかもしれませんね。
この自然公園をパトロールしたり、訪れる人達にルールを守ってもらうよう指導したりと言った活動をおこなってくださる、ボランティアの方々の事をご存じですか。
「自然公園指導員」と言う方々です。
島根県内には自然公園指導員が43名います。
また島根県では県独自に「自然保護レンジャー」と言う、趣旨の近い組織があります。
今回島根県と共同して、県内の自然公園指導員と自然保護レンジャーの方々の研修交流会を開催しました。

場所は島根県の中央部に鎮座する三瓶山。この麓にある三瓶自然館サヒメルを会場にお借りしました。(いい所に三瓶山と自然館がありました。)


「当事務所の鈴木保護官と島根県職員の方が学習会で講義をおこないました」

日頃自然公園の活動をおこなってくださっている皆さんですが、お互いに顔を合わす機会はほとんどありません。また私たち職員も同様でした。
そこで参加者が幾つか班に分かれてミーティングをおこないました。
お互いこの日初めてお会いする方もいらっしゃるはずですが、皆さんわきあいあいと、活発にミーティングがおこなわれました。

一緒にお昼を食べた後は、サヒメルの皆木学芸員がハチへの習性や対処方についての講義をしてくれました。
先日新聞でもハチ対策の解説をされていた虫博士の講義に、皆さんも興味深そうに耳を傾けメモを取っていました。


「野外に出ての自然観察 マツムシソウにはコアオハナムグリ(コガネムシの仲間)が留まっています」

そして会の終わりには北の原の芝生で、ささやかながら茶話会を開きました。


「この日は天候にも恵まれ絶好の行楽日和。外でのお茶を楽しみました。」

この会が同じ自然を大切に思うメンバー同士や私たち職員との情報交換の場となり、ネットワークのきっかけになって、活動の発展に繋がればと思っています。
今回この会が実現できたのも島根県自然環境課の方々、サヒメルや埋没林公園さんなど多くの方のお力によるものでした。この場を借りてお礼申し上げます。


「おまけ 西の原のススキの原です。秋を感じる風景が広がっています。」

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2012年10月01日マガン飛来

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

10月に入りました。お住まいの地域では中秋の名月を見れましたか?

さて宍道湖西岸の稲刈り田んぼに、6羽のマガンが舞い降りました。
9月24日、これが今年のマガン初飛来日です。
例年1週間程度の誤差範囲で初飛来日が観測されています。
今年は暑かったので遅めになるかと思いきや、少し早めでした。
マガンたちは何を基準にほぼ同じ頃にやってくるのでしょう。
この頃から日ごとに秋が深まっているような気がします。


「まだ暑いくらいの日もあったのですが、マガンたちは何で秋の訪れを感じていたのでしょう」

私が調査に出かけた2日後の26日には更に別の集団も来ており、合計41羽が見られました。
これからは堰を切ったようにたくさんのマガンがやって来ます。
宍道湖グリーンパークの調査によると、昨年度は最大で4000羽を数えました。

これからハクチョウも飛来を仕始めます。他の水鳥たちもどっと宍道湖に押しよせます。
渡り鳥たちは、一足早く宍道湖の冬の訪れを告げているようです。

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2012年09月21日夏から秋へ ~三瓶山の草花~ 

大山隠岐国立公園 松江 太田嘉和

中国四国地方のアクティブレンジャーの仕事に、定点観測というものがあります。
これは国立公園の中で地点を決め、決まった季節に写真を撮り続け、経時変化を記録していくものです。
今回私は三瓶山を定点観測してきました。

三瓶山ではナラ枯れという現象が問題になっています。
紅葉の時期にはまだ早いに、緑の森の中に枯れ葉になった木々が点在しています。
これはナラ枯れという病気にかかり枯れてしまったミズナラなどの木々です。
現在森林管理署がナラ枯れになった木々を伐採し、燻蒸処理と言う方法で防除をおこなっていますが、それにもかかわらず被害は増えてきています。
定点観測は現在の三瓶のナラ枯れの状態、年ごとの変化、そして森がどう変貌していくのかと言った経過の記録としておこなっています。

「茶色に見みえるのがナラ枯れになってしまった木々です」

三瓶山では一足早く秋の訪れを感じられました。
涼しくなり山歩きや散策に訪れる方が増えてきました。
草原ではススキの穂が風にゆられ、ススキの海原を作り出しています。

また夏から秋にかけての花々がたくさん咲いています。
ススキ草原には秋の七草の一つ、オミナエシの黄色い花が咲いていました。
東の原の観光リフトに乗ると、マツムシソウ、ツリガネニンジン、シシウド、サワヒヨドリなどの花が点在して目につきました。
麓でも山の上の方でも室ノ内でもそれぞれに違った草花も咲いていて、私たちの目を楽しませてくれます。


「フシグロセンノウはもう少しで終わりでしょうか」


「今年も話題になったこれがそのナデシコです。可憐な花ですね」


「キバナアキギリ」

さて山歩きには良い季節ですが、山の天気は変わりやすいもの。
この日も天気予報は晴れ時々曇りでしたが、男三瓶山頂には雲がかかり、室ノ内でも少し雨が降りました。
まだまだ暑い下界から涼を求めて山に登ってみたら、天候が崩れて寒くて風邪を引いてしまった、なんてこともあるかもしれません。
備えは充分に、初秋の三瓶を楽しんでくださいね。


「山の上のススキ草原でもホソバノヤマハハコなど幾つかの花が見られました」


「イヨフウロ これも同じススキ草原で見られました」

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2012年09月10日隠岐ジオパーク学習会に参加してきました。

大山隠岐国立公園 松江 前川 文吾

先日、島後の都万にある塩の浜で地元の中学生がシーカヤックや山登りといった体験を通じ隠岐の自然の素晴らしさを学ぶ学習会が実施されました。その学習会に講師として参加した時の様子をお伝えしたいと思います。



「スタッフの話に聞き入る中学生たち」


まずは、遊歩道沿いの植物観察です。
中学生に隠岐の植生を教えるのは84歳のスタッフですが日本の山をほぼ登り尽くした山男です。ユニークな話も交えながら植物の不思議な生態や隠岐の不思議な植生について語ってくれました。
「森が『※極相林』になっているとな、せっかく芽を出しても植物は陽が当たらずに枯れてしまうやろ?せやから種は何年も何年も何年も土の中でじーっと陽が当たる日を待っとんねん。それくらいな植物はすごい生命力を持ってんねんで。」と穏やかな関西弁の語りに中学生も聞き入っています。

※『極相林』
自然状態のままの植生の変遷を見ていくと、コケ類から一年草へ移り多年草へと変化して低木・陽樹から高木・陰樹へといった具合に、植生が移り変わっていきます。その最終的な状態を極相林と言います。



「矢尻づくりに夢中!」

植物観察の次は古代体験です。
みんなが取り組んでいるのは黒曜石の矢尻づくりです。隠岐で採れる黒曜石は4万年前から古代人によって瀬戸内地方まで運ばれており、現在でも質の良い黒曜石が採掘されています。現在ではお土産品として地場産業に活用されるだけでなくこのように子供達の地域学習にも活用されています。
古代人と同じく鹿の角と鹿の皮だけで矢尻をつくりあげるのは想像以上に難しく全員「これができないと古代ではご飯食べられなかったんだぞ」と一心不乱に黒曜石と格闘していました。


「黒曜石の矢尻で作った復元弓はダンボール位なら貫通します」



「使う道具は鹿の角・鹿の皮………だけ!」

次に、国立公園や隠岐の自然環境、隠岐ジオパークについて学びます。
隠岐は国立公園に編入されて来年で50周年を迎えますが具体的にどのあたりが国立公園に指定されているのか知っている人はなかなか居ないようです。
たくさんの隠岐の風景写真や日本各地の国立公園の写真をスライドで見ていきます………



「国立公園や隠岐の自然について話してきました」



岩石の成り立ちを解説
スタッフ「左手の白い岩石と右手の黒曜石の成分は一緒です!」
一同「へぇ~~~」

そして、海洋生物についても学びます。
水槽の中には「タコクラゲ」「ウミシダ」「アカヒトデ」「ムラサキウニ」が入っています。
7割の生徒は海遊びをする時にウニやヒトデを触った経験があるそうですが、写真の『ウミシダ』は見たことがなく興味津々でした。
ウミシダは名前のとおりにシダによく似た形をしていますが海藻ではありません。
棘皮動物でウミユリに近い“動物”です。普段は水深10m~20mくらいの海に生息しているそうで、海に潜って漁をする人でなければなかなかお目にかかれません。しかし、この学習会ではどうやって捕まえたのでしょうか?

漁師の漁に答えがありました。
隠岐では漁師が網を使ってサザエや魚を取りますが、その際捕獲されたウミシダが港で網から外されて漁港の岸壁にくっついているのだそうです。漁港の岸壁に行くと水深1mくらいのところでひっそりと生息しています。



「水槽の中の生き物はなんだ???」

最後は全員お待ちかねのシーカヤック体験です。
まずはパドリングの講習を受けて漕ぎ方を学びます。海の上で頼れるのは自分の力だけなので全員真剣にスタッフの説明を聞いていました。
船のそこが透明になっているクリアカヤックで元気よく漕ぎだして行きます。
海はエメラルドグリーンに輝いて水深8mくらいまではっきり見える絶好のシーカヤック日和でした。隠岐特有のアルカリ流紋岩という白っぽい岩石の砂が海底に敷き詰められ、海中に入った光を反射しているためエメラルドグリーンに見えます。このようなエメラルドグリーンの海は地中海でみられるのと同じ条件なのだそうです。日本に居ながらにして地中海と同じ海を中学生は楽しみました。



「パドリング講習の様子」



「さぁ!出発だ!」



「大海原へ漕ぎだすぞ!」

最後に、生徒たちが書いてくれた感想文のなかには「隠岐はすごい自然がたくさん残っていることがわかった」「こんなにすごいものがたくさんあることを知らなかった。隠岐にいいものがたくさんあるからあとは隠岐の人が頑張って守って行かなければいけないと思う」「隠岐のことがもっと好きになった」と嬉しい感想を書いてくれていました。

写真提供(隠岐ジオパーク戦略会議事務局)

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