第10回気候変動適応中国四国広域協議会 議事概要
第10回気候変動適応中国四国広域協議会
場所:Webex によるオンライン開催
開会
1 構成員等の変更について(資料1)
【協議】
意見なし
2 環境省気候変動適応室より情報提供(資料2)
【質疑応答】
特になし
3 地方支分部局の取組紹介
(1)地球温暖化の現状と将来予測(資料3-1)
(2)流域治水プロジェクトについて(資料3-2)
【質疑応答】
○島根県気候変動適応センター
中国地方整備局に質問がある。プロジェクトの更新について、島根県にある1級河川を含め、順次更新されていくという理解でよいか。
○中国地方整備局
1級河川の流域治水プロジェクト2.0への更新はしていく予定である。今後、適宜調整をさせていただきたい。
4 広域アクションプランの取組紹介
(1)山地・森林等の植生及びニホンジカ等の生態系における気候変動影響への適応について(資料4-1)
(2)海水温の上昇等による太平洋沿岸域の海洋生態系の変化への適応について(資料4-2)
【質疑応答】
○福岡管区気象台
黒潮生物研究所に質問がある。資料4-2の最初の方に20年間で劇的な変化があった、と説明があった。サンゴの成長を考えると、20年でここまで成長するのは一般的な成長速度と言えるのか。
また、写真が2011年頃であったが、10年経過しており、その後の情報があれば教えていただきたい。
○公益財団法人黒潮生物研究所
サンゴの成長量を考えると、20年でこれくらいの大きさになるのは常識的な範囲だと思っている。以前、新設した人工ブロックが色々な年代のものを海の中で計測したものが、どの程度で極相に達するのかということを調べたことがある。その結果、四国のエリアでサンゴの被度が60~80%の極相に近い状態になるのに、大体14年~18年の期間がかかることがわかっている。なので、20年でこのくらいになるのは妥当なところであると考えている。
それから10年が経過し、そのサンゴがその後も増え続けたのか、というとそうではない。どんどん夏は高水温になり、冬は水温が低くなっている。夏にサンゴが白くなる白化現象がこのエリアでも見られる。白化現象は軽く済んで、冬にかけて治っていったが、その冬に今度は寒波に襲われて、ここのサンゴのおおよそ8割から多いところで9割ぐらいのサンゴが死滅してしまった。それから、また現在、回復に少しずつ向かっているような状態である。
○近畿中国森林管理局
資料4-1の左下の図「情報集約のイメージ」について、情報集約のイメージ図があるが、詳細なイメージ図であると思う。これは、すでに他の地域でこのような図が作られていてそれを活用したものか、それとも新しいものとして作ろうとしているものなのか教えていただきたい。
○中国四国地方環境事務所
この図は、みなさんからいただいた情報を集約して、シカが東から大山・蒜山などの西の方に向かって分布域を広げていって、そこの植生がどのくらい被害にあっているのかを示したもので、赤が一番ひどいところである。それを見える化したもので、これは令和4年度の広域アクションプラン策定事業において作成した。植生は毎年作図するほどの大きな変化はないので、必要に応じて、何年かに1度チェックをしていくことを考えている。
また、このような図を作成している他地域の事例はある。
【質疑応答】
○野田アドバイザー(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校 生物生産学科 特命教授)
新分科会等についての資料5のP12の中で「九州地域においても新たなモニタリングマニュアルによる情報集約がスタートする」とあるが、事業主体や情報のとりまとめ方法等に関する情報があれば教えていただきたい。
○事務局
九州地域では、昨年度まで広域アクションプランとして、サンゴや藻場を含めたモニタリングのマニュアルを作成した。そのマニュアルを今年度から、実際に運用して、みなさんで情報を集めていこうとしている。まだ体制はきっちりとは整っていないと思われる。そのあたりをどのようにされていくのかについても情報をいただきながら、上手く連携できるところはしていきたいと思っている。
○野田アドバイザー(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校 生物生産学科 特命教授)
モニタリングを実際に行う主体は、地域のダイバーなどか。
○事務局
その点については、これから決まっていくことである。
○藤木アドバイザー(兵庫県立大学/兵庫県森林動物研究センター)
資料5のP10~11について、P10(1)のモデルアクションプランで行ったことを周辺地域に水平展開していくのはイメージが掴めている。しかし、P11の次年度以降の動きについて「気候変動影響情報を得るための課題や可能性についてとりまとめる」のところはイメージが掴めない。具体的なイメージがあれば教えていただきたい。
○事務局
アクションプランの中で、モニタリングを継続的に実施していくことをアクションのひとつとして挙げていたので、既存の情報とどう連携が取れるのか、また、継続的にモニタリングを実施するためにはどのようなことができるのか、またそれらを統合していくためにはその情報をどのように整理し、どのように誰に伝えていくのが良いのか、という辺りの課題を整理できると良いと思っている。
具体のイメージとして、山地の情報の何を全体で共有していくのか、については難しいところがあると思っている。シカの情報などは既に広域での共有が進められているところがある。一方で、シカの情報以外の高山・高標高域での植生や希少植物への気候変動による直接的な影響がどのようなところに出てくるのかについては、色々な地域で観測されている方がおられるので、それらの気づきを共有していくようなことが今後必要になってくる。そういった意味で、自然環境や植物等に関する情報の生物多様性情報を今後、国としても集約していこうという流れもあるので、そういったところと新分科会との繋がりがどうなるのか、といったあたりの検討を深めたい。
○藤木アドバイザー(兵庫県立大学/兵庫県森林動物研究センター)
モデル地域に関しては、昨年度までの分科会で一通り必要なデータなどの整理がされ、シカの侵入状況など色々とわかってきたところであると思う。将来的な課題として、そのようなモニタリングがきちんと継続されて、関係者間で情報が共有され続けていくことが重要になってくると思う。それをどうしていくのか、ということも含めて、この会議で検討していくという理解でよいのか。
○事務局
モデルアクションの中でも、それぞれの地域の中で共有していくこと、と中国四国地域のスケールの中で共有していくこと、2つがあると思っている。そのあたりの、何をどちらで、という整理が必要になってくると思っている。
○藤木アドバイザー(兵庫県立大学/兵庫県森林動物研究センター)
とりあえずはわかったので、また、色々と議論させていただきたい。
○野田アドバイザー(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校 生物生産学科 特命教授)
黒潮生物研究所の発表について、太平洋沿岸の生態系の保全という部分で適応というのが、サンゴが発達した場所を新たなダイビングスポットとして利用するなど、エコツーリズムの中で適応を考えていこうというような将来的な考え方になるのか。
○公益財団法人黒潮生物研究所
沿岸を長期的に調査する中で、場所によって課題や変化の方向性が異なる。よって将来の適応としては、場所ごとに考えるものを見つけ出して取り組んでいかなければならない。
その一つの例として、エコツーリズムなども一つの方向性だと思う。しかし、場所によってはそれに適して変化していない生態系もあるので、それについては、また違った形での適応を模索していく必要があると考えている。
[アドバイザーからの総括コメント]
○石川アドバイザー(国立大学法人高知大学 名誉教授)
山林のシカ等の生態系分科会について、水平展開していくと書かれており、四国讃岐山脈を想定しているが、モデルアクション地域を参考として情報を収集するとなっている。
石鎚山系にシカが侵入し始めた際に、被害が拡大しないうちに何とか手を打ちましょう、ということで動き始めた時には、愛媛県でも一般の方や行政関係者は被害の実態を未だあまり把握できておらず、大きな被害が出ていないので、ほとんど関心を持たれなかった。
讃岐山脈に展開していった時に、おそらく香川県もほとんど情報が無いのではなかろうか、と想像している。
自治体や県庁の方たちも色々な業務で忙しく、実際に被害が目に見える形で出てこないと動かない現実があると思う。そのあたりをどのようにクリアしていくのかについては大きな問題であると認識している。
讃岐山脈は徳島県にも半分は面している。徳島県には非常に関心が高い方がたくさんおられるので、そのあたりから情報を集めるもの一つの方法かと思う。
得られる情報は期待したほどないのかもしれないので、心配はしている。そのあたりは色々な人脈を使って、手を伸ばして集めていただきたいと思う。
○西嶋アドバイザー(国立大学法人広島大学/環境安全センター)
6年前から事業に参画しているが、気候変動は長期的に見る必要があり実感として掴みにくいところがあり、切迫感がなかなかない。
各自治体の構成員に自分の問題として考えてもらいながら進めていかなくてはいけない。
その中で、普及啓発の事業は位置づけとしては重要であると考える。
水産関係者やマリンレジャーをされる方はもちろん、もう少し範囲を広げて考える必要がある。
モニタリングについても、市民参加型モニタリングと謳われており、それをどうやっていくのかについては広域アクションプランの中でも釣りペディアを使ったりするなど、少し進めたところがある。
環境関係の市民団体もたくさんあり、それ以外にも様々な市民団体など幅を広げて、みんなで一緒にモニタリングができると良いと思う。
そのあたりについても認識を持ちながら実施を進めていただきたい。
○野田アドバイザー(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校 生物生産学科 特命教授)
今回、新たに気候変動影響把握・情報活用分科会が立ち上がったが、瀬戸内海・日本海の地域産業分科会の広域アクションプランである気候変動情報を対象とするということであるが、瀬戸内海・日本海の分科会と太平洋沿岸生態系の分科会では、海水温、魚種変化という意味でのモニタリングの接点はあるが、それ以上に太平洋沿岸生態系の変化と言っても四国の太平洋側の身近な海の変化で豊後水道や紀伊水道を通じて外海へ影響を及ぼしていくわけなので、おそらく瀬戸内海の各県の水産関係者も四国の太平洋側でどのような変化が起こっているのかについては、関心が高いのではないかと思っている。
また、太平洋沿岸生態系分科会の方でも、外海の影響が内海にどう影響が及んでいくのか、というところは興味がある点だと思うので、両分科会が新しい分科会の中に発展的に統合されていくことは一つの方向で、そこで色々な話し合いの中で、新たなモニタリングのテーマなども出てくるのではないかと思われる。
そのあたりについても含めて新しい分科会は考えられているのだと印象を持った。
○藤木アドバイザー(兵庫県立大学/兵庫県森林動物研究センター)
前半の話を非常に興味深く聞いていた。特に最近、雨の降る日数が減っている一方で、極端な短時間豪雨が増えているというのを実感している。
今年も私の住んでいる地域は、梅雨が明けてからお盆まで一滴も雨が降らなかった。川も干上がってしまい、田んぼ、畑にも水を引くことができなくて、本当に困った。
やっと雨が降ったら、いきなり250㎜以上の雨に降られた。そのような意味では、気候変動というのを凄く実感している。
兵庫県では平成16年の台風23号の際に、台風の暴風雨で3,000ha程度の人工林が倒れた。その人工林がシカの食害で森林が再生しない所がたくさん出て、その5年後の平成21年には佐用豪雨をもたらした台風9号が来て、シカの食害で再生していない人工林がたくさん斜面崩壊した。
そのような意味では、豪雨とシカ問題は災害に結びつくことを実感している。それを気候変動が後押ししているということが言えるかと思うので、気候変動の課題の中にシカの課題があることを改めて認識した。
○目﨑アドバイザー(公益財団法人黒潮生物研究所)
太平洋沿岸生態系分科会について、事業計画7でも指摘いただいたが、瀬戸内海との関係性は、やはり海は繋がっているので、太平洋で起こっていることは今後、瀬戸内海での動きに繋がっていくと思う。
現在の瀬戸内海の状況を私たちも知りたいと思い、モニタリングポイントのエリアを瀬戸内海の方にも拡大しようと考えている。
そういった意味でも今後の連携の可能性は考えられるので、分科会の中でも、その点に留意していただければと思う。
また、九州地域との連携もサンゴをキーワードにすると関わってくると思う。その後、和歌山など、太平洋沿岸、日本海側についても更に北の方への変化というのもサンゴ群集では考えられるので、その辺りの連携についても長い目では見ていかなくてはならないと思っている。
また、普及啓発の活動については、マリンレジャー関係者、自治体、事業者以外にも地域の今後を担う、地域のモニタリング活動を担うような人材の育成に繋がるような活動にも繋げていっていただきたい。
そのような方面にもお声がけいただけるとありがたい。今回の普及啓発のイベントは1回限りではなく、今後毎年1回行えるような、継続できるような仕組みで1回目を始めていただけるとありがたい。
そのまま引き継いで、ネットワークの中でこれが継続できるとありがたいと考えている。
いずれにしても、沿岸生態系の変化は水産と直接関わっているが、水産資源との結びつきの中で薄いところがある。
未だ、今起きている変化に対してイメージが湧かない部分もあろうかと思うが、今後は水産関係者とも連携して、沿岸の変化と水産の関わりというのも繋げていきたいと思っており、また、一緒に考えていきたいと思っている。
閉会