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アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

五色台体験教室~粘菌の世界へようこそ!「変形菌入門講座」~

2025年07月03日
高松 竹本 末佳

五色台体験教室~粘菌の世界へようこそ!「変形菌入門講座」~

 みなさんこんにちは。今回は、大人気体験教室の一つである「変形(へんけい)(きん)入門講座」のご報告です。
 まずはお知らせから。五色台ビジターセンターでは、8月31日(日)まで(とう)(ちゅう)夏草(かそう)と変形菌」の企画展を展示中です。興味のある方はぜひ五色台ビジターセンターへお越しください!
企画展
企画展「冬虫夏草と変形菌」
 さて本日の講師は和歌山県立自然博物館学芸員の川上(かわかみ)新一(しんいち)先生です。変形菌に関する著書も多数出版されていて、あちこちの変形菌講座で引っ張りだこの川上先生。昨年同様、今年も講師として来てくださいました。今年も午前は座学、午後はフィールドワークと盛りだくさんの内容です。
講師
講師の川上新一先生
 まずは座学からです。(ねん)(きん)は、植物でも動物でもなく、菌類でもないアメーバ生物に属することがわかっています。粘菌のなかの3グループのうちの一つが変形菌です。世界では1100種以上の変形菌が確認されていて、日本では600種以上が確認されています。この数は年々増え続けています。
 では変形菌はどのような生活環をしているのでしょうか。
 変形菌は成熟した()実体(じつたい)から10ミクロン(1/100mm)ほどの胞子(ほうし)を飛ばします。それが15℃~25℃で発芽し、粘菌アメーバとなります。水分の多いところでは鞭毛(べんもう)をもつ遊走(ゆうそう)細胞となります。粘菌は別性とくっついて大きな細胞になります。それを接合子(せつごうし)といいます。粘菌の性はたくさんあり、モジホコリは720もの性があるとされています。なぜそんなに性が多いのか。性別が多いほうが出会いの確率が増えるためという仮説があるそうです。接合子から大きな(へん)形体(けいたい)となり、そこから子実体へと変化していきます。と、文字で説明してもわかりづらいですよね。こんな感じです。
生活環
変形菌の生活環
 そのほか、どのような種類の変形菌があるのか、粘菌の自然界における役割とは、観察や採集に必要な道具、今日見つけられるかもしれない変形菌の種類など盛りだくさんの内容で、充実した座学でした。
座学
座学の様子
テキスト
詳しい座学テキスト
 それではお待ちかね!午後からはフィールドワークです!
 昨年の反省を生かし、今年は長靴を履いていざ出発です!
 今年のスポットは昨年とは違うスポットです。さて、今年は何が出るかな! 
 金色に光る変形菌を発見しました。コニセジクホコリかな?と川上先生。持ち帰って調べることになりました。
 今年のスポットはどんどん発見があります。参加者さんが持ってくる変形菌を川上先生が丁寧に観察し答えていきます。どれだけの発見があったのでしょうか。答えは最後に・・・
その1
写真に収める参加者
その2
光を当てて虫眼鏡で観察
その3
どこを見ても変形菌がいっぱい
その4
詳しく観察する川上先生
その5
変形体スポット
 フィールドワークを終えてクラフトハウスに戻り、参加者の皆さんは自分が持ち帰った変形菌を顕微鏡で熱心にのぞいていました。それでは本日の成果発表です!さて、何種類の変形菌を発見することができたでしょうか。なんと!20種発見です!日本で確認されている600種のうちの20種が五色台で発見されました。これには一同大喜びでした。昨年度の11種を大幅に更新!来年度がまた楽しみになりました。
本日の成果
本日の成果!
 フィールドワークの帰り道、自宅の庭に変形菌があるという方のお話を伺うことができました。私も自宅で変形菌を発見できたらいいな~と思い、庭に朽木を放置しているのですが、なかなかお目にかかれません。その方がおっしゃるには、ナメクジやカタツムリは変形菌を食べるので、ナメクジやカタツムリがいる場所には変形菌があるかも!とのこと。また、変形菌はあっという間に無くなるので、毎日こまめに見るのがオススメとおっしゃっていました。なるほど。それらを踏まえて、私もお庭で変形菌発見!できたらいいな~

 それでは本日の成果の一部をご覧ください。(写真提供:参加者Y様)
1
黄色変形体
2
ヌカホコリ
3
コムラサキホコリ
4
シロジクモジホコリ
5
シロジクキモジホコリ
6
サカズキホコリ
7
ツノホコリ
8
ホネホコリ
9
アミホコリとウツボホコリの仲間
 五色台ビジターセンターでは、定期的に体験教室を開催しています。年間スケジュールはこちら。気になる体験教室がありましたら、ぜひご参加ください。