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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

五色台体験教室~大人のための変形菌入門講座~

2024年07月08日
高松 竹本 末佳

大興奮!変形菌の世界!!

 みなさんこんにちは。
 今日は6月30日(日)におこなわれた、五色台体験教室「大人のための変形菌入門講座」のご報告です。
  変形菌と聞いてなんぞや?と思ってしまった私からは、とてもハードルの高い講座になりそう・・・と戦々恐々で参加しました。まずは五色台ビジターセンターで現在開催中の夏の特別企画展「不思議な生き物 地衣類と変形菌」(8月25日まで開催中!)でお勉強です。ビジターセンタースタッフ小縣さんの力作展示物の解説を同じくビジターセンタースタッフの曽根さんがマンツーマンでしてくれるという贅沢な事前学習でした。
企画展示
特別企画展「不思議な生き物 地衣類と変形菌」(8月25日まで開催中!)
展示
展示風景
展示
展示風景
 本日の講師は和歌山県立自然博物館学芸員の川上新一先生です。変形菌の著書も多数出版されています。午前はクラフトハウスで座学です。変形菌の基礎知識やこのあたりで見られそうな変形菌の紹介など、映像を交えての座学はとても勉強になりました。
 変形菌とは、植物でも動物でも菌類でもない不思議な生き物。バクテリアや菌を食べ、アメーバのように移動し、最後は子実体をつくり、胞子を飛ばして増えます。変形菌の子実体は様々な色や形が美しく、ひそかなファンも多いのだとか。
 前日に雨が降ったこともあり、おそらく色々な種類の変形菌が見られるのではないかと言うことで、午後からの野外観察会が楽しみになりました。
講師
講師の川上新一先生です
座学
座学スタート
座学
スライドでの学習風景
顕微鏡
顕微鏡で観察
 お昼休憩をはさみ、長靴に履き替えて、いざ変形菌探しに出発です。
 なんと!最初のスポットでわたし、発見してしまいました。なんて幸先の良いスタートでしょうか!こちらはシロジクキモジホコリといいます。変形菌のなまえは、「○○ホコリ」といって最後に「ホコリ」がつきます。下側の写真も変形菌に見えますが、こちらはキノコだとのことです。???何が違うのか???見分け方がわからないなあと考えていたところ、参加者の方が教えてくれました。キノコとの違いは触るとすぐにわかるそうです。変形菌はすぐに潰れて胞子を出します。一方キノコはぷにぷにしていてさわっても潰れません。あとは密度と大きさで見分けます。キノコは密度も大きさもバラバラですが、変形菌は等間隔で同じ大きさで発生します。
 こちらのスポットではたくさんの変形菌を見つけることができました。参加者のみなさんも大興奮です。
シロジクキモジホコリ
キノコ
これはキノコ
参加者
皆さん大興奮です
 次のスポットまでの間も参加者の皆さんの楽しそうな様子を見ながら、また道ばたでいろいろな発見をしながら進みました。そこで気になったワードが「ガサぼう」。何だろうと思って聞いたところ、単にそのあたりに落ちている大きさ的に都合の良い枝のことで、落ち葉などをめくる際に「ガサガサする棒」のことだそうです。なるほど。素手でさわると危険な虫さんやヘビさんなどがいる可能性がありますから、ガサ棒は必須アイテムなのですね。参加者の方の中には、小さい手のひらが先についている金属製のMyガサ棒をお持ちの方もいらっしゃいました。
 さて、次のスポットに到着です。そこでは変形菌が繁殖する過程の「変形体」を観察することができました。変形菌にはアメーバ状の体が核分裂を起こして次第に大きくなっていく「変形体」と呼ばれる時期があります。左の黄色変形体と呼ばれる変形体は今まさにどんどん大きくなっている途中なのです。細菌などを捕食しながら網目状に大きくなっていきます。右の写真の変形体は変形体からキノコ状の「子実体」となる手前の状態です。細菌などの捕食するものが無くなったり、乾燥したり光を浴びたり様々な要因によって変形体が子実体へと変化していきます。
黄色変形体
子実体となる手前の状態
 こちらはクモノスホコリの子実体(左)です。変形菌は子実体にならないと何ホコリなのか特定するのが難しいそうです。ムラサキホコリも見つけました(中)。参加者の皆さんもこのスポットからは離れがたいようで、熱心に観察していました。
クモノスホコリ
ムラサキホコリ
離れがたい
 また、こちらの変形菌はケホコリの仲間だろうとのことですが、川上先生が持ち帰り、調べることとになりました。
ケホコリ
ケホコリの仲間
 さて第3のスポットへ移動しました。そこで発見したのはホソエノヌカホコリ(左・マスカラの形)とその奇形種(右・ボーリングピンの形)です。素人目には全く違う種類のものに見えますが同種なのですね。奥が深いです・・・
ホソエノヌカホコリ
奇形種
 またこのスポットでは超大型の変形体を発見!全長1メートル以上もの巨大変形体です。アメーバの一部が落ち葉の上にも落ちていて、なかなかお目にかかれないものだと、参加者の皆様も大興奮でした。
変形体
巨大変形体発見!
 さて、急斜面を登って、本日の最終スポットとなる地点へやってきました。チョウチンホコリの大発生現場です。とても珍しいものだそうで、参加者の皆様も長時間撮影を楽しんでいました。
チョウチンホコリ
大撮影会
 野外観察会は雨に降られることもなく無事終了しました。クラフトハウスに戻り、本日の成果発表会となりました。
本日の成果は11種類でした。
 この場では、採取したものを持ち帰る際の注意点や、持ち帰った後の育て方など、取り扱いについての説明をしていただきました。キッチンペーパーやタッパーを使用したりと、身近なものを使って採取したものを持ち帰り、オートミールを与えるなど食べるものについても説明がありました。達人級になると、育てた変形菌から胞子を採取しまた育てるということもできるそうです。
  講師の川上先生はじめ、今回ご参加いただいた皆様は終始楽しそうで、何か発見があるとわぁっと集まって色々な視点から自分たちの見解を述べ、また初心者の私には丁寧に説明をしてくださり、本当にお勉強になりました。私もさっそく帰り道や家の庭で落ち葉をひっくり返しては変形菌を探すなど、すっかりはまってしまいました。これからも勉強に励みたいと思います。皆様、ありがとうございました。
成果発表会
成果発表
こんなにみつかりました
ホソエノヌカホコリ
ホソエノヌカホコリ(曽根さん撮影)
クモノスホコリ
クモノスホコリ(曽根さん撮影)