アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]
【鳴門】 苗木植樹と自然観察会
2016年03月07日毎年、この時期に行われる鳴門市立桑島小学校6年生によるウバメガシの苗木の植樹。
もともと鳴門山はクロマツが多く、青々とした景観が特徴でしたが、昭和50年代よりマツノマダラカミキリによって媒介するマツクイムシ(マツノザイセンチュウ)による松枯れが深刻化し、松林を保護するために当時はヘリコプターによる予防散布や伐倒駆除、薬剤樹幹注入など対策を行っており、現在でも樹幹注入と伐倒処理が続けられています。
このマツクイムシによって失われた植生や荒廃した林地を回復するために、平成8年度から地元小学生を対象に鳴門山に自生している樹木の種子から育てた苗木を植樹することが始められ、今年で20年目(植樹は17年目)を迎えることになりました。
3年生だった平成24年度はドングリが豊作で、いっぱい取れた年でした。みんな大切に育ててくれたかな。
http://chushikoku.env.go.jp/blog/setonaikai/a-takamatsu/index_10.html
3年前のドングリ拾いのようす(2012年11月13日掲載)
そして、今回も自然観察の先生として、徳島県植物研究会会長・木下さんと佐那河内いきものふれあいの里から市原さんが来て下さいました。
植樹の方法だけでなく、植物や生き物について、いろいろ教えてくれます。
植樹場所は、以前、レストハウスがあった跡地。
まずは木下先生から苗木の植え方について教わりました。
予め掘ってくれている穴に苗木を植えていくのですが、土がやや固めな場所なのでスコップでほぐしてから苗木が埋もれないようにして入れ、土を戻してペタペタと少し押し固めます。その後、水やり、苗木が小さく踏まれてしまうため、苗木があることが分かるように周りに石を並べれば完成です。
木下先生から「ナルト」が付く植物を知っていますか?の問いに、
「ナルト金時」「ナルトわかめ」と、さすが地元っ子からは名産品が飛び出してきます。
先生からは、1950年に発見されたが今では野生においては絶滅してしまったナルトオウギや、地元の大人でもほとんど知らない酸味があって美味しいナルトみかんがあること。
また河川や道路沿いなど至る所で見られるナルトサワギクは、1976年に瀬戸町日出湾で帰化し、その後別ルートで持ち込まれ、今では在来種への影響や牧草地に広がり家畜の飼料に混入すると健康被害が出るなど特定外来生物に指定されていることなど、ナルトの名前にまつわる植物について教わりました。
前日に雪の降った佐那河内から来てくれた市原先生は、児童のために残雪やサンショウウオや腐木にいる昆虫などを持って見せてくれ、それを見た児童たちはおおはしゃぎ。
先生のお話を聞く姿勢や興味津々に生き物にふれる児童の姿は3年前と変わらずでした。
この他にも、森のしくみや海岸植物の特徴、展望台では望遠鏡を使って野鳥を観察したりと鳴門の自然について改めて学べた時間でした。
そして、この日急遽、先生から国立公園についてお話をと提案があり、僭越ながら瀬戸内海国立公園や鳴門の渦潮はさまざまな要因があって見られる貴重な自然現象であることをお話させていただきました。また、11月にどんぐり拾いに付き添われた3年生のお母さんが、子どもの頃ここで植樹をしたことを嬉しそうに話されていたことなど、また大人になって育った木を見にきて欲しいことを伝えました。
子どもの頃の体験は成長過程では忘れがちですが、大人になって、ふと思い出すもの。
先生たちからも3年間一生懸命育てたウバメガシが1年後、3年後・・・と、どうなっていくのか見守り、みんなで鳴門の自然を守っていきましょうと児童たちに投げかけました。
今ある自然環境、きれいだなと見ている景色は1人1人がマナーを守り、大切に思うことが続いていく秘訣なのかなと思いました。