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アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

五色台体験教室~昆虫教室・マニアックな虫捕り方法教えます!~

2024年10月10日
高松 竹本 末佳

五色台体験教室~昆虫教室・マニアックな虫捕り方法教えます!~

 みなさんこんにちは。今回は、9月15日(日)に行われた、五色台体験教室「昆虫教室・マニアックな虫の捕り方教えます!」のご報告です。
 今回の講師は、日本昆虫学会会員の三浦大樹さんです。
 まずは、虫のお話から。昆虫図鑑に掲載されている虫の種類は数が少なく、1000~2000種ほどだそうです。国内の虫はおおよそ10万種で、目に見えない虫がほとんどなのだそう。その虫たちを捕るためのマニアックな方法を本日伝授していただけるとのこと。楽しみです!
 その1.「たたき網法」。木の葉や枝にとまっている虫を捕まえる方法です。昆虫は驚くと足を引っ込めて地面に落ちる習性があります。この習性を利用し、葉っぱや枝をたたき、落ちてきた虫を下に置いた布で受け止める方法です。トレーの代わりに傘でも代用できるそうですよ。
 「落ち葉ふるい」という方法もあります。これは落ち葉をざるに入れてふるう方法です。受け皿には白色のものを使うと虫がとても分かりやすく、食器を乾かす容器がちょうど良いのだとか。
 その2.「バナナトラップ」は、カブトムシやクワガタなど、樹液に集まる様々な虫を捕まえる方法です。
 その3.「落とし穴トラップ」という方法もあります。夜間に地面を歩き回る虫を落とし穴で捕獲するのに使います。透明なコップに餌を入れて埋めるだけ。落ちた虫はコップがつるつる滑って登れないので捕まる、というわけです。地中深くにいる虫をタッパーで捕まえる方法もあります。餌を入れたタッパーを地中深くに埋めておくと、暗闇で生活している目のない虫が捕れるそうです。
 さて、実際に落とし穴トラップで虫が捕れているか、野外へレッツゴー!
 
座学
まずは座学から
座学
アミを使わず虫捕り
座学
色々な方法があるんだな
 今回実際に使用した落とし穴トラップにはお酢が入っていました。今回は動物の被害を受けにくい食酢を使用しましたが、何個かはタヌキが掘り返していて残念ながら捕獲できていませんでした。餌を入れたトラップは動物に邪魔されることがあり、人と動物の知恵比べになることもあるのだとか。また、餌の有る、無し、餌の種類によって捕まる昆虫にも違いが生じるそうです。かろうじて残っていたトラップを持ち帰って、後でルーペを使って見てみることにします。
 さて、また座学に戻ります。
 
野外
トラップの場所まで移動
野外
トラップどこだ?
野外
虫は捕れたかな
野外
いるいる!
 その4.「フェロモントラップ」というものもあります。これは、メスが出す特殊なにおい(フェロモン)を使ってオスをおびき寄せて捕まえる方法です。特定の種類の虫を捕まえるのに適しているため、害虫対策で使用されるそうです。
 その5.「ライトトラップ」もよく使われる方法です。ライトの前にシートを張って夜間に光に飛んでくる習性を利用して捕まえます。ただし、LEDライトは紫外線が含まれないものが多く虫が来ないため不向きです。「水中ライトトラップ」といって、水の中にライトを沈める方法もあります。主に水生昆虫を捕まえることができます。
 その6.「ツルグレン装置」という装置を使った捕獲方法もあります。この装置は、土の中にいるとても小さな虫を捕獲する際に使います。土の中にいる熱や乾燥を嫌う虫が移動する習性を利用します。ただし、いろいろな所の土を持って帰ってくると、後の処理が大変とのこと。
 その7.「水盤トラップ」はお皿に水を入れるだけの簡単なトラップです。黄色いお皿がたくさん捕れるそうです。次によく捕れるのは白いお皿です。さてどうしてでしょうか。参加した子どもたちに聞いてみました。
・光の反射で捕れる
・黄色が明るいから
・一番見やすいから
・虫の仲間だと思うから
・餌だと思って食べるために集まってくるから
みんなからたくさんの意見が出ました。全てがほぼ正解です。黄色は花や花粉の色に見え、白はお花に見えるから寄ってくるようです。反対に、青や緑のお皿には虫は来ません。
 その8.「マレーズトラップ」という大がかりなトラップもあります。飛ぶ能力が高いハエの仲間などを捕まえるのに適しています。ただ、網が大きく、コストもかかります。
 その9.「衝突板トラップ」です。飛んでいる虫が障害物にぶつかると落下する性質を利用したトラップです。とても簡単に作れるのでみんなで作ってみましょう!このトラップはクリアファイルに棒を付けるだけです。風通しの良いところに立てて、受け皿には洗剤を混ぜた水を入れます。
座学
作ってみよう
座学
上手にできるかな
 その10.「トラックトラップ」です。車の上に網を取り付けて走るだけで虫を捕まえる方法です。日暮れごろに山道を走ると簡単に捕まえられます。ただし、どこで捕れたかがわからないのがデメリットです。飛行機に網を付けて捕った人もいます。標高1万メートルを越えた地点にも、空中プランクトンや気生プランクトンといった虫がいるそうです。
 いろいろな採集方法があり、とても勉強になりました。私は「虫」といえば目に見えるものや図鑑に載ってるものが全てだと思っていたところもあり、まだまだ見つかっていない虫がいたり、それを採集するために様々な装置や手作りトラップがあることも知りませんでした。私の自宅で飼っているネコの水(白の容器)のなかに、朝起きると虫さんが浮かんでいることがあるのは、知らないうちに水盤トラップを作っていたのですね!
 
 最後に三浦先生からひとこと。
 虫取りは、人と虫との知恵比べです。まだ採集方法や生態がわからない珍しい虫や名前のない虫はたくさんいます。例えば、地下水の中にいる虫は井戸水にフィルターを取り付けて捕まえることができたことで研究が進みました。図鑑に載っていないような新種の虫を捕まえたい人は、採集方法を考えてみましょう。普通とはちょっと違うことをすると珍しい虫を発見できる可能性が高まります。是非、今回お話しした方法とは違う、変わった虫取り方法を考えてみてください。大学などの先生も小学生の自由研究に注目しています。是非、自由研究で実践してみてください。
観察
捕った虫は図鑑で調べよう
観察
何がいるかな
観察
色々な道具を使おう
 いろいろな方法で採集して、今回参加してくださったみなさんの中から、新種の虫を発見した!なんてことがあると素敵ですね!
 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
 
 五色台ビジターセンターでは、月に1回程度、体験教室を実施しています。
 次回は10月20日(日)に「地形地質観察会・座学」を予定しています。
 興味のある方は是非、五色台ビジターセンターのホームページをご覧ください。
 
 五色台ビジターセンターHP:瀬戸内海国立公園 五色台ビジターセンター (goshikivc.jp)