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アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

五色台体験教室「五色台の地形・地質を学ぼう」~長谷川修一先生によるジオ講座と白峯寺周辺のフィールドワーク~

2025年12月09日
高松 竹本 末佳

五色台体験教室「五色台の地形・地質を学ぼう」 ~長谷川修一先生によるジオ講座と白峯寺周辺のフィールドワーク~

 みなさんこんにちは。
 今回は大人気企画、五色台の地形地質を学ぶ体験教室のご報告です。
 香川大学特任教授であり、讃岐ジオパーク構想推進準備委員会委員長である長谷川修一先生が今回も講師を務めてくださいました。午前は座学、午後はフィールドワークと、盛りだくさんの1日です。ではまずは座学のご紹介から。 
 
講師
講師の長谷川修一先生
 香川県の名物、さぬきうどん。「大地の成り立ち」を考えれば、「うどん」に辿り着く!
 興味深いですよね。私たちの食文化は、大地の成り立ちと密接にかかわっているのです。では、瀬戸内海や香川県の成り立ちを簡単に説明すると・・・
 一億年前にユーラシア大陸東縁で形成された花崗岩が、隆起や浸食を経て香川県の土台となりました。その後1400万年前に急速に日本海が形成された直後に瀬戸内火山活動が起こり、サヌカイトなどの安山岩が噴出しました。その後の浸食によって、飯野山や屋島などの独特な景観ができます。300万年前に中央構造線が右横にずれるという断層の活動によって讃岐山脈が隆起し、北側の低い土地に讃岐平野と瀬戸内の低地が形成されました。そして1万年前の最終氷河期からの急速な温暖化によって海面が100m以上上昇し、現在の瀬戸内海や香川県が出来上がった、というわけです。
 香川県の土台となった花崗岩は約8000万年前には地表に露出しました。花崗岩は硬質ではありますが、長期間にわたる風化によって地表で土が形成され、土砂災害の素因にもなっています。瀬戸内海の「白砂青松」は、花崗岩由来の砂からできています。香川県で塩田が盛んにおこなわれていた背景には、この花崗岩からなる砂と温暖な気候が関係しています。また、塩を使った醬油の製造も盛んにおこなわれています。讃岐山脈の隆起で讃岐平野は雨が少なく、ため池を作って灌漑を行ってきました。裏作として小麦の栽培も盛んです。そして「天然生簀」として知られる瀬戸内海。海面の上昇により、島が集中している「瀬戸」と呼ばれるエリアでは潮流が速く、タイが取れ、砂地が海に沈んだ個所ではタコやヒラメなどが水揚げされます。一方、島がほとんどない「灘」と呼ばれる穏やかな潮流のエリアではイリコ漁が盛んで、海底は泥質となっておりアナゴ、ハモ、ノリの養殖等が盛んにおこなわれています。
 あれ、何か見えてきませんか?塩、醤油、小麦、イリコ・・・うどん作りには欠かせない素材ではありませんか!なるほど!だから「大地の成り立ち」は「うどん文化に辿り着く」んですね!こうしてみると、大地の成り立ちと気候などが私たちの歴史文化に多大な影響を与えていることがとてもよくわかりました。身近な題材を使って私たちの答えを導き出してくれる長谷川先生の講義は本当に楽しいです。
 フィールドワークへ出かける前に、植生の勉強もしました。秋の紅葉時期は地形地質が見やすくなります。実際に目で見て、植物の下の地質は何なのか、考えるのも楽しみになってきました。
座学
スライドを使用してせとうち讃岐について学びました
 ではお待ちかねのフィールドワークへ出発です。フィールドワークのテーマは「石を知ると石の文化財を深く理解できる」です。見学予定の白峯寺周辺には様々な「石」が存在します。それらを見学しながら石について理解を深めしょう。
 まず訪れたのは「稚児ケ滝」の見える展望地です。今回は雨量が少なく残念ながら滝は見えませんでしたが下からの眺めは圧巻です。
稚児ケ滝
滝が見えるときには黒くみえる箇所から水が出ています
 さて、ここはどんな岩質でしょうか。五色台の基盤は、先ほど香川県の基盤を紹介した通り花崗岩ですが山上部は安山岩です。安山岩は透水性が悪く、大雨が降った場合は地中に雨水はしみ込まずに地表水となって山上にある谷地形の低いほうへ流れます。そこで滝が形成されるのです。なるほど。滝が見られるのは透水性の悪い安山岩のおかげなのですね。
 反対側にみえる五色台の植生を見てみましょう。紅葉のおかげで植生がはっきりとわかります。緑色の部分は常緑広葉樹のウバメガシです。ここは安山岩。崖下のゆるやかな傾斜地ではミカン栽培がされています。ここは風化した花崗岩。このように山を見ると発見がたくさんあって面白いですよね。
秋の山
山を見て山の岩質を知ろう
 白峯寺へ場所を移し、歩きながらの見学です。最初に目についたのは駐車場わきの下乗石(※1)です。裏面を見ると、『鎌倉時代に建立されたものが破損崩壊して埋没しそうになっていたので修復した』とあります。鎌倉時代の石なのですね。
 (※1)参詣者が馬や籠から降りるための目印として使用された石のこと
下乗石
風化の激しい下乗石
 続いては「十三重の塔」です。こちらも鎌倉時代の建立と伝えられています。手前が凝灰岩でできたもので、奥は花崗岩でできたものです。
十三重の塔
凝灰岩と花崗岩でできた十三重の塔
 まだまだ散策は続きます。途中で季節を感じられるものを見つけました。
菩提樹
ボダイジュの実
紅葉
少し寂しい紅葉
綿毛
ガガイモの綿毛
 遍路道の脇には、サヌカイトがたくさん見られました。皆さん小さいものを手に取って、互いにカンカン打ち鳴らしてみます。とても良い音がするものがあれば、ちょっと鈍い音がするものも。原因は空気です。カンカンと良い音で鳴らないものはサヌカイトではなくサヌキトイドと呼ばれます。
サヌカイト
こんな感じでサヌカイトが
サヌキトイド
割ってみるとわかる音の悪い原因の空気穴
 最後に遍路道の脇にある、こちらも鎌倉時代のものとされる摩尼輪塔です。凝灰岩でできています。
摩尼輪塔
摩尼輪塔で説明を聞く参加者
 今回も良い天気に恵まれ、とても充実した体験教室となりました。長谷川先生からの問いかけに私たちも考えながら答えたり、いつまでも探求することの大切さを学ばせていただきました。石を見て時代を読み解く。これから石を見る目が変わるかもしれません。
長谷川先生、参加者の皆様、ありがとうございました。
 
 五色台ビジターセンターでは体験教室を定期的に開催しています。詳しくはホームページをご確認ください。
 瀬戸内海国立公園 五色台ビジターセンター
 
【お知らせ】
五色台ビジターセンターにおいて、私たちアクティブレンジャーが撮影した写真を展示する「中国四国の国立公園展」を、令和8年1月24日~2月24日まで開催します。興味のある方はぜひビジターセンターへお立ち寄りください。ご来場をお待ちしています。
ポスター
中国四国の国立公園展