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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

【体験教室】 昆虫観察会

2018年08月29日
瀬戸内海国立公園 大林めぐみ

今週で8月も終わり。

夏休みを終え通常生活に戻った方、まさに今、宿題にラストスパートをかけている子、すでに2学期がスタートした学校などさまざま。

少し遅くなりましたが、8月上旬に開催した五色台体験教室のようすをご紹介します。

8月はここ数年おなじみの昆虫観察会。

講師は、松本慶一さん(みんなでつくる自然史博物館・香川)。

昨年度に開催された香川県立ミュージアムでの企画展では、「むしむし博士」として子ども達から絶大な人気を誇ったむしのスペシャリスト。

実は、私自身が楽しみでもあったり。

今回は「さまざまな環境と昆虫」をテーマに五色台ビジターセンター周辺には、どんな昆虫がみられるのかを観察しました。

観察や採集を始める前に、まずは道具の使い方から。

捕虫網。網がやぶれたり、柄のところが折れたりと毎年購入するはめになったり、昆虫を捕まえられたとしても羽や足が折れてしまっていたなど、そんな経験ありませんか?

左:トンボを捕まえたい! → トンボを後ろから追うように網をすくうこと(前からだと逃げられてしまうのです)

右:バッタを捕まえたい! → 網をまっすぐ下に、下ろす時は腰も落とすのがポイント

親御さんたちは「だから、うちのはすぐ壊れるのか~」と捕虫網の使い方講座に感心しきり。

■草ムラ編

網を持って一斉にスタート!

子どもたちはバッタやトンボ、チョウを手にすると、すぐさま松本さんの元に駆け寄ってはドヤ顔(笑)

バッタやチョウの幼虫は主に草や葉を食べますが、昆虫の種類によって好みの草も変わります。

例えば・・・トノサマバッタはイネ科、オンブバッタはシソ科など。

同じチョウの幼虫でも、モンシロチョウはキャベツ、ヒョウモンチョウはスミレなど。また、成虫になっても花の蜜を好むチョウとゴマダラチョウのように樹液を好むチョウなどいろいろ。

種類によって食草が違うことで、エサ取り競争が起こりにくくなり、生存競争に勝っているんだそう。

■林内編

多目的広場から少し園路を歩くと、常緑樹と広葉樹に囲まれた林の中に。

前日に仕掛けたトラップ。

結果をみんなで見るのですが、さぁ、いかに!?

・・・・・・

残念ながら、幹に仕掛けたバナナトラップには何もおらーず。

ということは、この周辺には樹液を好むカブトムシやクワガタムシが

ほぼいないということが分かりました。

ふもとにはいるカブトムシが、なぜここにはいないのか・・・?

それも昆虫観察会で分かった結果。

次に地中に仕掛けたベイトトラップを引き揚げると・・・。

<いましたー!!しかも、ほとんどのトラップにかかってる!>

その中からミイデラゴミムシをピックアップ。お尻を少し押してみると・・・

「アツッ!!クサッ・・・?におい微妙!!」

ミイデラゴミムシは刺激を受けると、「プッ」と高温のオナラを出して敵を追い払う術を持つ、昆虫界のスカンク。難しい話をすると、過酸化水素とヘドロキノンが酵素の働きによって体内で急激な酸化還元反応を起こして、高温の水蒸気となってお尻から発射して危険から身を守っているのだそう。すごいシステム。。。

その特徴から「ヘッピリゴミムシ」とも呼ばれています。

近くにあった朽ち木を割ってみると・・・


<出てきた!コクワガタの幼虫!>

トラップに成虫は来なかったけど、どこかにクワガタはいるってこと??

この後、子ども達はバリバリと朽ち木を剥がし、幼虫探しに夢中。

■沢(流水域)編

ベイトトラップを仕掛けたすぐ近くには小さな沢があります。

水路に差し込んだ網は動かさず、足でガシガシと泥をかき入れると・・・。

<オニヤンマのヤゴ!トンボ界のドン現る!>

五色台の中でも浅瀬の流水域、かつ水底に泥が被っているところはオニヤンマが生息しやすい環境なのだそう。

写真に撮ることはできませんでしたが、ヤゴを探している間もオニヤンマ(成虫)が飛来する度にみんなの注目を集めていました。

私たちは下から見ることが多いオニヤンマですが、上から見る捕食する鳥からは、オニヤンマの黒と黄緑のボーダー模様が日なたと木陰のように見え、森林とカモフラージュできるようになっているんだとか。

昆虫のからだの色や模様、形には意味があり、敵から見つけられにくいように、その生息場所に適応するようにうまくできています。いろんな昆虫のボディカラーを調べると、そんな由来も分かるかも。

■魚の池(止水域)

多目的広場ではウスバキトンボが多かったのに対し、ここではギンヤンマやショウジョウトンボ、シオカラトンボ、コシアキトンボ、数種のイトトンボが見られました。

ここでオニヤンマが見られないのはなぜか??

オニヤンマは浅瀬の流水域かつ木陰のある林内で生息するのに対し、ギンヤンマは陽当たりのいい開けた場所、ため池など止水域に産卵します。食性の好みと同じように環境を棲み分けることで互いに競争せず、生存していけるのです。

みんなが傘を使った採集やトンボを追いかけている中、スタッフと講師は池の中をゴソゴソ。

「いたーー!!」の声で集まると、そこにはヒメミズカマキリやコオイムシがいました!

ミズカマキリは小魚や水生昆虫などをエサとしますが、一回り小さいヒメミズカマキリはアメンボなど水面近くにいる昆虫をエサとしています。ヒシやジュンサイなどしっかり掴まれる浮葉植物がないとエサが取れず、生息環境も自然度が高いところじゃないといない、結構レアな水生昆虫。

<左:ヒメミズカマキリ 右:コオイムシ>

最後に捕まえた昆虫をリリース。

それぞれの昆虫の棲み分け、色や形の意味などいろいろ気付きがあった観察会。

蚊からヒントを得て、痛くない注射針ができたり、衛星や一眼カメラのレンズもアリやハチなどの複眼をヒントに作られたり、医薬品も昆虫由来のものがあるなど人の生活と欠かせない関係。

虫は発明のヒント、人の進歩にとって重要や役割があるということ。

参加者にとっても何かヒントや気付きが得られた半日だったのではないでしょうか。