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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

JPR事業~ぼくのわたしの「宮島子ども自然遺産」さがし~(2・3日目)

2015年11月10日
瀬戸内海国立公園 大髙下理恵

2日目の調査はシカのフィールド調査です。

宮島の市街地周辺には推定約600頭の野生のシカが生息していますが、

住民や観光客からエサをもらうことで人慣れしています。

現在はエサやりが禁止されていますが、

今も人とシカとの距離が非常に近く、

市街地にはシカの生活痕が多く見られます。


生活痕とはどんなものがあるでしょうか?

まずは2メートルの計測棒を持って樹木の葉の高さを測っていきます。

すると、どこも大体150~160㎝以上に葉があることに気づきます。

シカの口が届く高さの植物はきれいに食べられてしまうため、

宮島には至る所にこの「ディアライン」が見られます。

[壁につたうツタにもきれいにディアラインができています。]


ですが植物も食べられまいと必死です。

シカの口が届かない金網の中や石の隙間で生き残っていたり、

普通の大きさよりも葉を小さくして食べられないように工夫している植物もあります。

[石の隙間にシカが食べられる植物発見!][右が宮島で見られる小さくなったチドメグサ]

市街地から山道をのぼると、

山頂には盆栽型のアカマツが多数...

シカの痕跡調査をしてきたJPRなら

これもシカの影響であることは一目瞭然です!

痛そうなマツの葉も柔らかい新芽の時に食べられると

枝を伸ばせずこんな形になってしまうようです。

宮島には豊かな自然が残っていますが、

シカとの共存生活が植物に影響を与えていることがうかがえます。


そして、シカの角が生えるこの時期はシカにとって繁殖期。

角を持ったオスジカや角研ぎ跡、繁殖期ならではの鳴き声、

また臭いを身体につけるためのヌタ場も見られました。

しかも!ヌタ場で泥をつける場面にも偶然出くわしました。


[ヌタ場でおしっこをした泥を首元につける様子]


シカのライフスタイルを調査したところで、

シカの身体の仕組みやシカが抱える問題について学びました。

シカは植物をタンパク質に変えるバクテリアや原生動物が胃の中に居ること、

人の食べ物をあげることでバクテリアや原生動物がいなくなったり、

ビニールなども間違えて食べてしまうこと、

結果栄養がとれなくなり自力で生きていけなくなったり、

栄養失調で死んでしまうシカもいること...

かわいいと思ってエサをあげてしまう行為がシカにとってはどうなのか...?

人間目線だけではなく、動物目線で見ると色々なことが見えてきたと思います。

[死んだシカの胃から出てきた3㎏ものビニールの塊]



最終日は二日間の自然調査を踏まえて

自分が伝えたい「宮島子ども自然遺産」を選定し俳画を作りました。

干潟の生き物やウミホタル、シカに星空、夜景など印象に残ったこと、

未来に残したいもの、人に伝えたいものは人それぞれ。

完成後は桟橋前で保護者や観光客の皆さんに街頭PRを行いました!

[五七五とイラストを描いた俳画作品]   [街頭PR大作戦の様子]

クラスでの発表と違い、大人に伝えるのは恥ずかしかったかもしれませんが、

みんな自分の言葉で「宮島子ども自然遺産」を伝えることができました。


自然や動物を正しく知ること、気づくこと、そして伝えることが

自然を守ることにつながります。

今後もJPRとして、たくさんの人に伝えて言ってもらいたいと思います。

3日間のJPR任務、ホームシックにも負けずお疲れさまでした!