アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]
【蒜山】「山焼き」によって守られる草原
2015年04月17日大山の南東に位置する蒜山には、はるか昔から人の手によって維持されてきた草原(半自然草原)が広がっています。四季折々に、美しい牧歌的風景と雄大な景色を楽しむことができます。
人々の生活においても、草を肥料や家畜の餌や茅葺屋根の材料としたり、山菜の採取や狩猟の場としたりと、とても重要な役割を果たしてきました。また、草原特有の動植物が生息・生育しており、たいへん貴重な動植物の宝庫でもあります。
毎年春になると、地元の人たちによって「草原」を維持するための作業が行われてきました。草を刈り、火が燃え移ることを防ぐ「火道」を作り、火を入れて山を焼きます。
しかし、この「山焼き」の作業はかなりの労力と危険を伴います。時代の流れとともに、地域の開発によって草原の利用価値がなくなり、また地域住民の高齢化によって、山焼きの面積は年々減りつつあります。
こうした山焼きを継続している地域の方々の作業に参加し、草寄せや火入れなどの作業を体験して来ました。
まず初日は「草よせ」作業。草をかき分けて傾斜を登っていきますが、なかなかの斜度があり、登るだけでも一苦労です。事前に刈られた大量の草を、大人数で手分けをして寄せていき、火道を作ります。
<斜面に線が入ったように見えるのが火道です>
ウサギの糞があちこちに落ちていたり、草やぶの中にイノシシのねぐらがあったりと、作業をしながらも生き物たちの気配を感じることが出来ました。ショウジョウバカマや希少なサクラソウも見られました。こうして自然の中で体を動かすことは、目にも体にも心にも、気持ちが良いものですね。
そして火入れ当日。ボランティアの皆さんや地元の方々、関係者の方々が多く集まりました。火をつけた竹やバーナーを片手に火をつけていく人と、ジェットシューターという水のタンクを背負って火道沿いの火を消していく人とに分かれます。
上山と下山に分かれてタイミングを合わせて火をつけたり、風の向きや強さ、火の燃え進み方、地形によって異なる火入れの仕方・・・何十年と経験されてきた地元の方々ぞ知るノウハウや感覚的なものを頼りに、みんなで声を掛け合いながら作業を進めます。危険と隣り合わせの作業、慎重かつスピード感を持って進めていきます。前日に雨が降ったため草が湿っていてうまく燃えるか心配されましたが、陽が上がり風が強まるにつれて徐々に火の勢いも増し、たちまち広大な草原が真っ黒になりました。
作業終了後、地域のお母さんたちが作ってくださったおいしいご飯をいただきながら、地元の皆さんと談笑しながら楽しいひととき。こうしたコミュニティの場が維持されることもまた、山焼きによる産物ですね。
<火入れのbefore → after。背後には大山が見えます>
春の山焼きが終わるとやがて草花が芽吹き、この黒焦げの山が初夏には鮮やかな緑色で覆われます。美しい四季折々の景色を見に、ぜひ一度蒜山へ足を運んでみてくださいね!