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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

【瀬戸内海】 海ゴミの実態見学に行ってきました

2014年02月03日
高松
海岸沿いや離島に行くと、ゴミでいっぱいになっている場所を
見たことありませんか?
地元の方や行政がクリーン作戦を行っていても、
しばらくするとまたゴミでいっぱいに、なんてこともあるのではないでしょうか。
これらのゴミは一体どこからやってくるのでしょう?
そんな海ゴミの実態を知るための勉強会に参加してきました。

主催は今年度の設立された、かがわ「里海」づくり協議会。
「海ゴミ」=「海域」の問題としてではなく、山、川、里(まち)、海の陸域、海域を一体として考え、行政や関係機関が連携、協働し進めていくために設立された協議会です。
また、今年度より香川県の呼びかけで県内17市町と漁業者らが協力し、海底堆積ごみを回収する取り組みが始まりました。
その取り組みを1番手に始めた漁協のひとつ、さぬき市の鴨庄漁協さんの
協力の下、今回の見学会が行われました。

海上の目的地までの船内では、海ゴミを調査している会社の方から
説明がありました。
ほとんどの方は海中のゴミまたは海岸に打ち上げられたゴミをひとまとめに「海ゴミ」呼んでいますが、ゴミは確認される場所によって3種類に分類されます。
「海岸漂着ゴミ」 陸に流れ着いたゴミ
 「漂流ゴミ」  海中に漂っているゴミ
「海底堆積ゴミ」 海底に沈んでいるゴミ
調査会社ではトレーサー(蛍光砂)を使い海底堆積ゴミがどのように動いているのか、GPSの付いたフロートを使いどのように流れ漂流、漂着するのかなどゴミの動態、またそれぞれがどのように関係していくのかを調査しているそうです。
その結果どこがゴミの発生源となり堆積・漂流・漂着しているのか、どこに重点を置き対策を施せばいいのかなどを見つけていくのが調査の目的。
その説明の中で昨年調査をおこなった海底の映像を見せて頂きました。
         

【昨年11月調査 海底のようす】

画面真ん中には海藻に白い物体が引っ掛かっているのが見られます。
白い物体は海藻に絡まり、多少の潮の流れだけでは抜け出せずに海底で留まっていました。
海底が濁って見えるのは長年ゴミが沈んだままの状態が影響しているのでしょうか。
他の映像には便座など不法投棄されたであろう大きなゴミも見られました。
海上のポイントに着くと、船の下の海底の様子を見せてくれました。



【少し見えづらいかもしれませんが、赤く見えるのが海底】

画像を見る限りは、あまり海底にゴミがないように見えますが・・・。
沖に待機していたダイバー2人が実際に潜り、ゴミがあるのか探ります。
さぁ、どのような結果が待っているのでしょうか。


【水深3mの海底には・・・?】

【こんなに!?】

潜水時間はわずか5分!
しかもダイバー2人で海底10m×10m範囲だけでこんなにゴミが出てくるとは・・・。
もしかすると持ち上げられないような大きなものもあったかもしれません。
拾ってきたゴミは一体どんなものなのか・・・。



肥料袋や菓子袋などビニール素材のゴミがほとんどでした。
ビニール袋は軽量で潮に流されやすいから漂流して海岸に辿り着くのでは?
と思いがちですが、袋の中に海水が入りその重みで沈み、年月が経つにつれ船内で見た映像のように海底から脱出できなくなり堆積ゴミになってしまう。
沈まなかったゴミは海に漂流し海岸に漂着するものもあれば、漂流中に海水を含み海底堆積ゴミになってしまう場合も。
ボロボロになったビニールもあれば、製造年月日が2ヶ月前と新しいものまで長い年月の中で分解されることなく海底に溜まっていくことが分かります。
沖の深い海溝にはどれだけ溜まっているのかと考えると・・・。

下船した後に3ヶ所の海底地点の海底堆積ゴミを見比べてみましたが、
どこも生活から出たゴミ、レジャー後に出るようなゴミばかりでした。


【今でも使えそうなどんぶりも出た!】

回収したゴミの中にはタコが住処にしていることもあったそう。
「タコも好きでこんな所に暮らしているのではなく、仕方なく住処にしているんでしょう」と調査会社の方。
またビニールは海底に堆積するだけでなく、海底の土を覆うことで土に酸素が供給されなくなり、そしてヘドロが発生します。
それが海藻の中であれば海藻の成長を妨げ、またヘドロによって魚たちは産卵、生育場所を失ってしまうことになります。


【ドロッとした臭う土が付いています】

今年度より香川県で始まった海底堆積ゴミの回収・処理システムは、漁業者が漁の時に底引き漁など漁網にかかったゴミをボランティアで港まで持ち帰り、分別したものを地元自治体もしくは県が業者委託して適正に処理しています。

瀬戸内海の海底堆積ゴミは13,000t以上あるとも言われており、その個数割合97%が生活系ゴミと報告があります。
生活ゴミは直接海へ入るのではなく、陸から川を伝って、風に乗ってと間接的に流入していくものが大半です。
海にゴミが多くなれば魚たちは住処をなくし、また自然分解されないゴミをエサと間違えて食べてしまうことで奇形になったり、死んでしまったり。
漁業者たちにとっては漁獲量が減少するというお互いが悪循環に陥ります。
そもそもゴミでお腹いっぱいになった魚を食べたいですか?嫌ですよね。

今年、平成26年3月16日には瀬戸内海国立公園指定80周年を迎えます。
シーボルトやリヒト・ホーフェンなど海外の方から絶賛された瀬戸内海について今一度考えることがあるように感じさせられます。


【水中カメラでアマモを確認できた湾】

8年位前にこの湾でイカ釣りに来たことを思い出しました。
今思えばイカ釣りができたのはアマモのおかげでした。