アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]
日本ジオパークネットワーク隠岐大会 その2
2013年10月28日
松江
日本ジオパークの全国大会日程の後半は隠岐を巡るジオツアーです。台風の影響により隠岐の島町内を見学するコースのみとなりましたが、中止になったコースの参加者も含めて、大勢の方が参加されました。
ジオツアー参加者
私もその中の1コースにサポートとして同行しました。
まずは隠岐自然館を見学します。自然館は隠岐世界ジオパークのビジターセンターに位置付けられており、隠岐の自然環境の概要を知ることができます。今回の大会に合わせて、今年隠岐で発見された2000万年前の巨大ワニの化石が展示されていました。東アジアで発見されていた同種のワニは、これまで台湾で発見された1000万年前の化石が最古とされていましたが、今回の発見でその年代を大きく更新しました。発見者によると、化石から推定すると7~8m級の巨大ワニであることも世界的な発見だそうです。
自然館見学の様子
以前隠岐で発見されたワニの歯の化石
今年発見された巨大ワニの胸骨の化石
ジオツアーではメインのガイドさんだけではなく、様々な人がジオパークの見どころを案内します。隠岐の古民家については、隠岐の島町の文化財担当の方に案内していただきました。藁ぶき屋根の家で、写真でいうとの奥から3つ入口があるのが隠岐の古民家の特徴です。一番奥の入口が殿様・神官レベル の方の入口、中央は庄屋レベルの方、それ以下のレベルは一番手前の土間の入口を使うそうです。
隠岐の古民家の解説
隠岐のジオパークでは、地形や地質といった大地のはなしだけではなく、大地の影響を受けて形成された島の生態系や歴史・文化についても解説します。※隠岐総社 の玉若酢命神社(たまわかすみことじんじゃ)では樹齢約2,000年といわれる幹回り11mの巨大な杉が立っています。この神社の裏山には古墳群があり、かつて隠岐の※国府 があったことから「国府原(こうのばら)」という地名がついているなど、古代から重要な場所として隠岐の人々が守ってきたことがうかがえます。
※総社とは?
古代日本において地方の統治はその土地の有力者(旧豪族)からの任命だったため、中央政府支配の要は行政官として派遣する国司(こくし)にかかっていました。その国司が地方に赴任した際に最初に行う仕事は赴任地内の神社をすべて参拝することでした。しかし、隠岐は古い記録によると300以上の神社があったといわれています。すべて参拝することはできないので代表の総社一社に参拝することで領内のすべての神社に参拝したことにするというのが総社制度です。
※国府とは?
国司が政務を執り行う施設が置かれた都市のことです。各地の政治的中心地であると同時に司法・軍事・宗教の中心地でもありました。
樹齢2000年といわれる八百杉(やおすぎ)
国立公園内で行うふれあい事業などでは、自然のしくみなどをわかりやすく参加者に伝えるインタープリターの存在が欠かせません。今回のジオツアーでは、隠岐で活躍するインタープリターの手法も紹介されました。それによると、ジオパークでは岩石・地質に偏りがちだが、その前に自然全般に親しむ入り口として身近な草花を使った解説などが大切であり、この技術は全国どこでも使えるとのことでした。写真はカタバミの葉で10円玉を磨いているところです。カタバミにはシュウ酸が含まれており、酸によって十円玉がピカピカになります。
インタープリターの手法を参加者も実践します
隠岐ジオパーク推進協議会の外国語担当として働いているテレサさんは、福浦トンネルを案内してくださいました。このトンネルは、550万年前に発生した火砕流跡地に1870年代に人々が手彫りで掘ったトンネルです。その後、交通手段の変遷とともに火薬を使用してより大きなトンネルを掘り直し、最後は自動車を通すために重機でトンネルを拡幅しました。福浦トンネルは大地の成り立ちと人の営み、土木技術の遷移を見ることのできる場所です。同行していた世界ジオパークビューローの委員もテレサさんの案内はパーフェクトだと喜んでいたそうです。
ジオサイトを案内するテレサさん
火砕流跡に掘られたトンネルに地質学者も興味津々です
隠岐では旅館のご主人も地質について案内します。ここは隠岐片麻岩という岩石が見られる場所です。この岩石は日本にある岩石の中でも古いものに分類されるそうです。隠岐片麻岩は、大陸の砂が水に流され堆積して砂岩となり、2億5000万年前頃の地殻変動によって変成したものだそうです。2億5000万年といっても私たちの感覚ではイメージできませんが、その当時日本は大陸の一部で日本海もなかったそうです。
隠岐片麻岩の露頭を解説
ここは大山神社という自然物を対象にした古代信仰の流れを残す神社です。隠岐にはこうした社が無い神社が数多く残されており、小さい集落で守っている神社も含めると小さな島に100以上の神社があるといわれています。ここでは、大山神社で2年に一度行われるユニークな祭りの話やこの神社が長野県の諏訪御柱祭りの源流であることなどをお話していただきました。
古代信仰の流れを残す大山神社
ジオツアー参加者は各地に整備されているジオパーク案内看板の内容も興味深く見ていました。昨年度環境省が作った総合案内看板もしっかり活用されていました。 ツアーでは活発な意見交換が行われ、隠岐の国立公園とジオパークの事例が全国の自然公園とジオパークの連携強化につながっていく期待が持てるツアーでした。
環境省が整備した看板も見学です
ジオツアー参加者
私もその中の1コースにサポートとして同行しました。
まずは隠岐自然館を見学します。自然館は隠岐世界ジオパークのビジターセンターに位置付けられており、隠岐の自然環境の概要を知ることができます。今回の大会に合わせて、今年隠岐で発見された2000万年前の巨大ワニの化石が展示されていました。東アジアで発見されていた同種のワニは、これまで台湾で発見された1000万年前の化石が最古とされていましたが、今回の発見でその年代を大きく更新しました。発見者によると、化石から推定すると7~8m級の巨大ワニであることも世界的な発見だそうです。
自然館見学の様子
以前隠岐で発見されたワニの歯の化石
今年発見された巨大ワニの胸骨の化石
ジオツアーではメインのガイドさんだけではなく、様々な人がジオパークの見どころを案内します。隠岐の古民家については、隠岐の島町の文化財担当の方に案内していただきました。藁ぶき屋根の家で、写真でいうとの奥から3つ入口があるのが隠岐の古民家の特徴です。一番奥の入口が殿様・神官レベル の方の入口、中央は庄屋レベルの方、それ以下のレベルは一番手前の土間の入口を使うそうです。
隠岐の古民家の解説
隠岐のジオパークでは、地形や地質といった大地のはなしだけではなく、大地の影響を受けて形成された島の生態系や歴史・文化についても解説します。※隠岐総社 の玉若酢命神社(たまわかすみことじんじゃ)では樹齢約2,000年といわれる幹回り11mの巨大な杉が立っています。この神社の裏山には古墳群があり、かつて隠岐の※国府 があったことから「国府原(こうのばら)」という地名がついているなど、古代から重要な場所として隠岐の人々が守ってきたことがうかがえます。
※総社とは?
古代日本において地方の統治はその土地の有力者(旧豪族)からの任命だったため、中央政府支配の要は行政官として派遣する国司(こくし)にかかっていました。その国司が地方に赴任した際に最初に行う仕事は赴任地内の神社をすべて参拝することでした。しかし、隠岐は古い記録によると300以上の神社があったといわれています。すべて参拝することはできないので代表の総社一社に参拝することで領内のすべての神社に参拝したことにするというのが総社制度です。
※国府とは?
国司が政務を執り行う施設が置かれた都市のことです。各地の政治的中心地であると同時に司法・軍事・宗教の中心地でもありました。
樹齢2000年といわれる八百杉(やおすぎ)
国立公園内で行うふれあい事業などでは、自然のしくみなどをわかりやすく参加者に伝えるインタープリターの存在が欠かせません。今回のジオツアーでは、隠岐で活躍するインタープリターの手法も紹介されました。それによると、ジオパークでは岩石・地質に偏りがちだが、その前に自然全般に親しむ入り口として身近な草花を使った解説などが大切であり、この技術は全国どこでも使えるとのことでした。写真はカタバミの葉で10円玉を磨いているところです。カタバミにはシュウ酸が含まれており、酸によって十円玉がピカピカになります。
インタープリターの手法を参加者も実践します
隠岐ジオパーク推進協議会の外国語担当として働いているテレサさんは、福浦トンネルを案内してくださいました。このトンネルは、550万年前に発生した火砕流跡地に1870年代に人々が手彫りで掘ったトンネルです。その後、交通手段の変遷とともに火薬を使用してより大きなトンネルを掘り直し、最後は自動車を通すために重機でトンネルを拡幅しました。福浦トンネルは大地の成り立ちと人の営み、土木技術の遷移を見ることのできる場所です。同行していた世界ジオパークビューローの委員もテレサさんの案内はパーフェクトだと喜んでいたそうです。
ジオサイトを案内するテレサさん
火砕流跡に掘られたトンネルに地質学者も興味津々です
隠岐では旅館のご主人も地質について案内します。ここは隠岐片麻岩という岩石が見られる場所です。この岩石は日本にある岩石の中でも古いものに分類されるそうです。隠岐片麻岩は、大陸の砂が水に流され堆積して砂岩となり、2億5000万年前頃の地殻変動によって変成したものだそうです。2億5000万年といっても私たちの感覚ではイメージできませんが、その当時日本は大陸の一部で日本海もなかったそうです。
隠岐片麻岩の露頭を解説
ここは大山神社という自然物を対象にした古代信仰の流れを残す神社です。隠岐にはこうした社が無い神社が数多く残されており、小さい集落で守っている神社も含めると小さな島に100以上の神社があるといわれています。ここでは、大山神社で2年に一度行われるユニークな祭りの話やこの神社が長野県の諏訪御柱祭りの源流であることなどをお話していただきました。
古代信仰の流れを残す大山神社
ジオツアー参加者は各地に整備されているジオパーク案内看板の内容も興味深く見ていました。昨年度環境省が作った総合案内看板もしっかり活用されていました。 ツアーでは活発な意見交換が行われ、隠岐の国立公園とジオパークの事例が全国の自然公園とジオパークの連携強化につながっていく期待が持てるツアーでした。
環境省が整備した看板も見学です