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アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]
第9回 滑床山植生回復検討会
2013年10月28日
土佐清水
滑床山(なめとこやま)植生回復検討会に参加しました。
滑床山は通称:三本杭(さんぼんぐい)と呼ばれている山です。ここでは、シカの食害によりササなどの植生が衰退・消失しており、現在その植生を回復するための取り組みが行われています。
今回の検討会では、実際に現地を見ながら取り組みについての報告や意見交換を行いました。
登山口からまずは八面山(やつづらやま)の山頂を目指しました。
登り始めて10分も立たないうちに早速、シカが角を研いだり、樹皮を食べることにより樹皮が剥がれてしまった木がありました。
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これは木の枯死につながる場合もあります。
宇和海を望みながらさらに進んでいくと
今度はシカに食べられ丈が短くなったミヤコザサが出現。
本来1~1.2mの高さまで成長するはずですが、50cmほどの高さの所で茎が折られたようになっています。まるで人工的に刈ったようにも見えますが、シカの仕業です。
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他にもシカなど動物の通り道であるけもの道や、
シカが食べない植物ばかりが残ってしまった場所など、八面山山頂まで様々なシカの痕跡がありました。
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【左:けもの道、右:シカが好まないアセビばかりの場所】
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【八面山山頂】
八面山を越えていくと森林総合研究所や四国森林管理局が設置したシカ防護ネットがあります。
ネットの内外で植生の差は歴然!
ネットの内側ではミヤコザサが回復しつつあります。しかし、同じササでもスズタケという種類のササはなかなか回復が見られないとのこと…。
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【写真の奥側がネット内】
また、登りはじめは50cmほどの高さだったササも、先へ進むにつれさらに短くなり、ついには裸地化状態の場所も…。
このように林床が無くなってしまうと土壌が流出してしまい木が根返ってしまうため、優先的にネットで囲われています。
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【裸地化した場所に張られたネット。真ん中には倒れてしまった木…】
他にも藤ヶ生越(ふじがおごえ)では枯木を置く方法で土壌の流出を防ぐ対策がとられています。
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ここで一旦、お昼休憩をとりました。三本杭までもうひとがんばり!!
「横の森」を通過するといよいよ三本杭が見えてきます。
この三本杭山頂付近も深刻な食害を受けており、5年前からシカ防護ネット設置やミヤコザサ移植などの対策がとられています。
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【2008年10月の三本杭】
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【2013年10月の三本杭】
5年前と比較すると裸地状態だった場所にもかなりササが生えてきていますね!
そして、山頂にてこれまでの活動の取り組みや調査について報告が行われました。
特に印象に残った話は、あるネット内ではササの回復が見られる一方、ササが生い茂っていることによって他の植物が育っていない所もあるという話でした。
シカが多くなり、ササなどを食べ尽くし、林床が無くなると土壌が流れてしまう。
シカがいなくなり、ササが食べられなくなると今度はササが増えすぎてしまう。
シカが多すぎる環境も、シカが全くいない環境もこの場所にとっては不自然なのですね。
もちろん裸地化した土地の植生をまずは回復させることは重要です。しかし、その先にある新たな課題にも気づかされました。
様々な面からの取り組みを継続し、その成果を振り返りながら、これからやるべきこと、必要なことは何なのか…
その時々で考えながら進めていくことが大事なのかなと感じました。
以前日記に書いたオニヒトデもそうですが、オニヒトデもシカも「存在自体が悪」では決してありません。ただ両者とも増えすぎると、それが生態系全体にとって好ましくなかったり、人間にとって都合が悪かったりする訳です。
ちなみに…
この日、歩いた登山道周辺では少しずつ紅葉で色づいてきた木も見られました。宇和海も見渡すことができる気持ちのよい場所なので、秋を楽しみながら、ちょっとシカに思いを馳せながら、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
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滑床山は通称:三本杭(さんぼんぐい)と呼ばれている山です。ここでは、シカの食害によりササなどの植生が衰退・消失しており、現在その植生を回復するための取り組みが行われています。
今回の検討会では、実際に現地を見ながら取り組みについての報告や意見交換を行いました。
登山口からまずは八面山(やつづらやま)の山頂を目指しました。
登り始めて10分も立たないうちに早速、シカが角を研いだり、樹皮を食べることにより樹皮が剥がれてしまった木がありました。
これは木の枯死につながる場合もあります。
宇和海を望みながらさらに進んでいくと
今度はシカに食べられ丈が短くなったミヤコザサが出現。
本来1~1.2mの高さまで成長するはずですが、50cmほどの高さの所で茎が折られたようになっています。まるで人工的に刈ったようにも見えますが、シカの仕業です。
他にもシカなど動物の通り道であるけもの道や、
シカが食べない植物ばかりが残ってしまった場所など、八面山山頂まで様々なシカの痕跡がありました。
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【左:けもの道、右:シカが好まないアセビばかりの場所】
【八面山山頂】
八面山を越えていくと森林総合研究所や四国森林管理局が設置したシカ防護ネットがあります。
ネットの内外で植生の差は歴然!
ネットの内側ではミヤコザサが回復しつつあります。しかし、同じササでもスズタケという種類のササはなかなか回復が見られないとのこと…。
【写真の奥側がネット内】
また、登りはじめは50cmほどの高さだったササも、先へ進むにつれさらに短くなり、ついには裸地化状態の場所も…。
このように林床が無くなってしまうと土壌が流出してしまい木が根返ってしまうため、優先的にネットで囲われています。
【裸地化した場所に張られたネット。真ん中には倒れてしまった木…】
他にも藤ヶ生越(ふじがおごえ)では枯木を置く方法で土壌の流出を防ぐ対策がとられています。
ここで一旦、お昼休憩をとりました。三本杭までもうひとがんばり!!
「横の森」を通過するといよいよ三本杭が見えてきます。
この三本杭山頂付近も深刻な食害を受けており、5年前からシカ防護ネット設置やミヤコザサ移植などの対策がとられています。
【2008年10月の三本杭】
【2013年10月の三本杭】
5年前と比較すると裸地状態だった場所にもかなりササが生えてきていますね!
そして、山頂にてこれまでの活動の取り組みや調査について報告が行われました。
特に印象に残った話は、あるネット内ではササの回復が見られる一方、ササが生い茂っていることによって他の植物が育っていない所もあるという話でした。
シカが多くなり、ササなどを食べ尽くし、林床が無くなると土壌が流れてしまう。
シカがいなくなり、ササが食べられなくなると今度はササが増えすぎてしまう。
シカが多すぎる環境も、シカが全くいない環境もこの場所にとっては不自然なのですね。
もちろん裸地化した土地の植生をまずは回復させることは重要です。しかし、その先にある新たな課題にも気づかされました。
様々な面からの取り組みを継続し、その成果を振り返りながら、これからやるべきこと、必要なことは何なのか…
その時々で考えながら進めていくことが大事なのかなと感じました。
以前日記に書いたオニヒトデもそうですが、オニヒトデもシカも「存在自体が悪」では決してありません。ただ両者とも増えすぎると、それが生態系全体にとって好ましくなかったり、人間にとって都合が悪かったりする訳です。
ちなみに…
この日、歩いた登山道周辺では少しずつ紅葉で色づいてきた木も見られました。宇和海も見渡すことができる気持ちのよい場所なので、秋を楽しみながら、ちょっとシカに思いを馳せながら、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
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