中国四国地方のアイコン

中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

ウスイロヒョウモンモドキ情報交換会

2013年10月11日
松江
三瓶山ではウスイロヒョウモンモドキの保護活動や研究を、長年にわたり熱心にされた方々がいらっしゃるので、貴重なノウハウが蓄積されています。
この蝶は大山隠岐国立公園の中では、大山蒜山地域の新庄村にも生息しています。新庄村でも蝶を守ろうと活動されている方々がおられます。
ですが今までは生息地域同士のつながりというものはほとんどありませんでした。そこで保護保全に係わる情報を共有し役立てていこうと、関係者一同が集まる情報交換会を開催しました。昨年度より開かれたこの会は今年度で2回目です。

三瓶の現地見学をおこない、蝶の保全活動や草原維持活動について各代表から説明していただきました。

【大田の自然を守る会の伊藤さん。蝶の保全活動に尽力されてこられました。】
室内に場所を移し、この蝶を長年研究繁殖活動されてきた方、新庄村で保全活動されている代表の方、そして参考事例として山口県の秋吉台で草原維持活動をおこなっている方の話もうかがいました。

【秋吉台草原ふれあいプロジェクトの副代表、太田さん。】
今回この会で色々な情報が共有され、とても参考になる話が交換され、有意義な会合となりました。

現在ウスイロヒョウモンモドキは日本全体でもとても厳しい状態となってしまいました。
この蝶は草原を住みかとする蝶です。以前は牧場や採草地として人が利用していた土地があり、そんな場所にこの蝶は住んでいました。それが利用されなくなって放置され、森林化したため住みかを追われてしまったのです。
ですがこの蝶は人間が草原を作り出す前から何万年と日本に住み続けてきたわけです。昔は人間が作り出さなくても自然の草原がいくらでもあったのでしょう。今は開発されて自然の草原など貴重な存在です。

私はたまに飛行機に乗る事があるといつも窓際の席を予約します。飛行機からの景色はいいですよね。
上空から下を眺めると、箱庭のように地上の様子がわかり楽しいです。
地上を眺めていると、なんと人工物の多いことかと改めて驚かされます。海は人工護岸、平地はくまなく区画整備された田畑、川は運河のようになめらかです。都市はアスファルトとコンクリートで覆われた巨大な要塞かコンビナートのようです。
山は自然に見えますが、その多くが人の手が加えられた半自然です。スギなどの単一林は「よくもこんな山奥にまで植えたものだ」と思うほど多いのですが、日本中で手入れをされる事無く荒れている森が多いのです。
人は自然と寄り添う暮らしから離れ、自然と分離した暮らしを送るようになりました。ですから草原、里山などといった半自然は荒れ果てています。
一方では土地は効率的に使われるようになり“遊びの土地”はなくなりました。天然林、沼地、荒れ野、ダムのないうねった川、干潟など、利用価値がない自然な土地は珍しいものになりました。

【これがウスイロヒョウモンモドキです。小さく柔らかく舞う蝶です】
以前あるテレビ番組の中で、将来の食糧問題などを子供達と語らうものがあり、ある子どもが「世界にはたくさん遊んでいる平地があるから、まだまだ食料は作れるよ」と言っていました。皆さんはどう思われますか。
こんな話があります。
「森は海の恋人」と言うキャッチフレーズをご存じですか。全国各地で海の漁師さん達が魚や貝などの採れる豊かな海を守るには山の森を豊にすることだと言って、荒れた山に木々を植え始めました。漁師さんだけでなく農家さんたちも協力し始めています。
またこんな話もあります。
オホーツク海は世界的な漁場ですが、それはどうも流氷と大陸から流れ出るアムール川のお陰であるようなのです。
流氷は漁師にとって漁ができなくなる厄介者とされてきました。アムール川流域は開発が進んでいない遊びの土地が多く残っている地です。川自体もぐねぐねと蛇行した自然の姿が多いようです。その厄介者と遊びの土地がはぐくむ川のお陰で、オホーツクの海が豊かなのだそうです。
ただ近年は流域の開発が進むなどしており、オホーツク海の環境への影響が心配されます。

どんなに自然と離れた暮らしをおくっていても、私達は自然の恩恵を受けて生きています。そして自然が病めば私たちの暮らしも苦しいものになってしまう、その事に私達は気づかないといけないのでしょう。