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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

姫逃池のカキツバタ保全作業

2013年06月12日
松江
カキツバタと言う花をご存じですか。アヤメやハナショウブに似た花で、古くから歌にも詠われてきた花ですが、今では日本の絶滅危惧種となっています。
三瓶山の北麓にある姫逃池(ひめのがいけ)には沢山のカキツバタが自生しており、県の天然記念物にもなっています。
ところが一時はほとんど無くなってしまい危機的だった事もあったのです。
そのカキツバタを復活させようと、毎年この時期にカキツバタ保全のための草刈りがおこなわれています。
今年も色々な団体や自然公園指導員をはじめボランティアの方々など多くの参加がありました。

【三瓶自然館サヒメルの学芸員の方が、ショウブとカキツバタの見分け方などを説明します。】

みんなで雑草を刈ったり、スコップで根こそぎ取り除いたりします。
ここにはショウブもありますが、これも刈り取ります。ショウブはとても良い香りがし、菖蒲湯はよく知られていますよね。そのようなものなら残しておけばいいのになぜ取り除くのでしょうか。
このショウブ、じつはもともと姫逃池にはなかった植物なのです。
誰かによって持ち込まれた物なのです。それが元々あったカキツバタを追いやっているのです。
私が参加し始めた4年前には菖蒲湯にしても有り余るくらい多かったのですが大分減ってきました。
以前はカキツバタが少なかったので気を使わないで鎌を振って草を刈られました。ですが今は「カキツバタが増えて草を刈りづらくなった。」と嬉しい悲鳴が聞こえてきます。長く参加されている方々は手応えを感じているのではないでしょうか。

【今年は雨にたたられず、暑い日差しもなく、作業日和となりました。】

さて私は姫逃池に入りました。と言っても池で泳いだわけではありません。池に生えるスイレンを刈ったのです。
ちょうど湖面には沢山の美しい花を咲かせていました。
そんなスイレンをなぜ刈り取るのか。これもまた元々姫逃池にはない植物だったのです。やはり人間が持ち込んだ物なのです。
姫逃池は以前干上がった事がありました。水生植物が増えすぎると池の水を吸い上げ、枯れては池の底に堆積してしまうのです。池が干上がってしまえば、水辺を生活の場としてきたカキツバタやモリアオガエルは生きていけなくなります。

長い鎌でスイレンを刈り、それをボートなどに乗せて池から持ちださなければなりません。
胴長を履いて池に入ると、ズブズブズブッ・・・、ピンチ!胴長の上から水が入り込みそうになりました。姫逃池は底なし沼のようです。
うまく水生植物の根に足を乗せ、一歩一歩慎重に足場を確認しながら作業をおこないます。それでもときどき、ズブズブズブッ・・・、ピンチ!となります。

【こんなに綺麗なスイレンなのですが、刈り取らなければなりません。
なかなかの重労働で気も使います。皆さんお疲れ様でした。】

スイレンは刈り取り切れませんでした。また毎年刈っているにもかかわらず、しつこく生えてきてなかなか減りません。取り除くのは大変な事なのです。
外来の生物が持ち込まれ元々の生態系が崩れる。姫逃池に限らず日本中で起こっている問題です。
そして一度広まってしまった外来種を駆除しつくすことは、ほとんどの場合できていません。
今もなお新たな外来種や新たな場所に外来種が入り込んでいます。
まずは外来種を放たない事、自然の中に進入させない事。それが一番の対策ではないでしょうか。


【作業が終わると地元のお母さん方が作ってくださった食事をいただきました。これがまた格別、皆さんに大好評です。興味のある方は来年参加してみませんか。】


【今年5月30日の花の様子です。姫逃池では活動の甲斐あって、美しい光景が復活してきました。浮島にもカキツバタが咲いているんですよ。また来年が楽しみです。】