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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

お騒がせしております。今年も大発生です

2013年05月30日
高松
このタイトルを見て「何?」と思われた方。
屋島(特に北嶺)と五色台へ行くとそのタイトルの理由が分かります。

そう。昨年度AR日記でも書いた蛾の幼虫・ケムシが大発生中なのです。
昨年度のAR日記↓↓
http://chushikoku.env.go.jp/blog/setonaikai/a-takamatsu/index_2.html
(2012年6月21日付け)

昨年から目立ち始めたこのケムシたち。
引き続き、屋島ではマイマイガ、五色台ではクワゴマダラヒトリと今年から目立って増えたマイマイガの2種類の蛾の幼虫が一際存在感を放っています。


屋島に多い【マイマイガ】

マイマイガは卵塊で越冬し5月上旬~孵化します。
その後、5回脱皮し終齢(6齢)幼虫-さなぎ-7月頃~成虫となります。
写真のマイマイガは大きさから5齢~終齢幼虫だと思います。
この位大きくなると看板など人工物や樹木の幹のくぼみ、下草にいますが、若齢幼虫(~4齢幼虫)は少し「お騒がせ」するような過ごし方で大きくなります。
その過ごし方とは・・・?
孵化後、幼虫たちは生まれた場所から分散して食草を求めるため糸を吐き、高い枝からぶら下がって移動を繰り返します。
移動する若齢幼虫の体長は約1~2㎝程度のため、気付いた時には目の前なんてことも。
ケムシということ、暖簾のように何匹もぶら下がっているので、特に虫が苦手な方には嫌な印象を受けているようです。。。

そして五色台の下草には・・・

【クワゴマダラヒトリ】
これも今の時期大発生中です。
広葉樹などの葉を集団で網目状に食べ尽くすのが特徴のひとつ。
こちらはぶら下がることはなく、主に下草や人工物にくっついていることが多いです。
クワゴマダラヒトリもマイマイガと同じく年1回の発生です。
越冬した6齢幼虫は3月下旬~暖かい日に越冬場所から離れ単独生活し、3回脱皮し9齢を迎えサナギ-7月中旬頃~成虫となります。
成虫は8月下旬~9月中旬にクワやアカメガシワなどの葉裏に1000~2000個の卵を平板状に重ねて産み、その上に淡黄褐色の綿状分泌物で覆います。
そして10日後には孵化し、3齢幼虫までは葉上に糸を吐いてテント状の巣網を作り集団生活。発育する度に巣網は大きくなります。
4齢幼虫以降は数百頭単位に分散し、11月下旬には6齢幼虫(孵化後5回脱皮)となり、数十頭単位で越冬します。

「ケムシの毛に毒はないの?」
マイマイガは1齢幼虫(孵化して約2週間後に1回目の脱皮→2齢幼虫)のみ毒針毛がありますが、2齢幼虫後はなくなります。
クワゴマダラヒトリは毒針毛無しです。


【屋島北嶺出入り口付近設置中】

ケムシの発生時期は毎年5~6月下旬まで。その後はサナギ→成虫になります。
マイマイガは成虫になっても何も食べず、ただ子孫を残すのみで約10日の命を終えるそうです。卵塊の近くに白い羽根の蛾がいれば、それは卵を産んだ後、短い生涯を終えた雌のマイマイガ。

そして、この大発生は今後ずっと続くわけではありません。
これらは8~11年周期で大発生する昆虫のひとつで、やがて終焉を迎えます。ただ1年で終焉を迎える場合もありますし、4年ほど続く場合もあるようです。
樹木や農作物への甚大な被害が起きれば何らかの処置を施す地域もあるようですが、自然公園としては大きな被害が出ない限り自然の流れに任せるしかありません。
これも生態系のひとつとして。

苦手な方は「駆除して欲しい」と言う方もいらっしゃるかと思いますが、6月下旬までの間は対策を施して利用して頂ければ有り難いです。
よく見るとケムシもカワイイ顔をしていたり、キレイな斑紋が付いていたり、また1年を通して完全変態する昆虫なので観察しても面白いと思いますよ。


【5月中旬の屋島・北嶺広場のようす】