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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

カブトガニの棲む干潟~椹野川河口域~

2013年05月09日
広島
潮汐によって海になったり陸になったりする砂泥地“干潟”は
水をきれいにする浄化槽の役割を担っています。
護岸が増え自然海岸が少なくなった今でも、
干満の差が大きい瀬戸内海では多くの干潟が残っています。

といっても、干潟があるからと楽観視できるものではなく、
藻場の衰退や川から流出する栄養や土砂の減少、
今まで日本近海で確認できなかった南方系の魚介類の増加、
それに伴って様々な生き物たちの減少が指摘されています。

山口県の椹野川(ふしのがわ)河口域は瀬戸内海有数の広大な干潟が広がり、
現在では数の少なくなったカブトガニが産卵・生息する貴重な干潟です。
干潟があればカブトガニがいるのかというと、
実はそういうわけでもありません。
カブトガニは少しキメの粗い砂利で産卵し、
子どもの頃は栄養のある泥質の干潟でゴカイなどを食べて成長し、
大人になるときれいな海に旅立っていくため、
どれか一つでも条件が揃わない干潟では生息できません。
昔は食用にしていたほど多く見られたカブトガニも
今や最も絶滅が心配される甲殻類の一種。
1時間ほど探してみましたが幼生は見つからず。
脱皮殻は数個見つけることができました。

[孵化後5年(7~8齢)ほどの脱皮殻。約10年で15~16回脱皮をして成体になります。]

椹野川では少なくなったカブトガニやアサリ、藻場などが生息できる豊かな環境を取り戻していこうと現在、自然再生事業が実施されています。


冬は静まりかえっている干潟の生きものたちも
これから活動が活発になる季節です。

一見何もいなさそうな干潟も…



ちょっと目線を下げるとほら。

[潮が引いて20分ほど経った干潟]
この日は主にヘタナリとホソウミニナが歩き回っていました。

[ヘタナリ(左)とホソウミニナ(右)]

まだカニ類はあまり見かけませんでしたが、
一ヶ月もすれば、多種多様な生きものが地上に出てにぎやかになります。
カブトガニも6月下旬頃になると産卵の季節です。
今年も椹野川につがいはやってくるでしょうか?