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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

カタクリの花咲く山頂 ~野生動植物の違法採取防止合同パトロール~

2013年05月02日
松江
船通山と言う山をご存じですか。
島根県と鳥取県にまたがる山で、比婆道後帝釈国定公園の一部となっています。またスサノオノミコトとヤマタノオロチの神話の舞台として古代より登場し、近年では山頂にカタクリの花が群生している事で知られています。
この船通山でゴールデンウイーク前半の昭和の日、地元の横田山の会による恒例のカタクリ登山が行われ多くの方が訪れました。
島根県では野生動植物の違法採取防止を目的とした啓発活動・パトロールが同日行われました。
この日は多くの方に呼びかけられるチャンスでもある事から、毎年関係機関が合同でおこなっているのです。

先日の日記にも書きましたが、1週間前の三瓶山の山開きは雪山でした。
船通山は三瓶山とほぼ同じ高さですが(船通山が若干高い)、先週の雪山がうそのように暖かな1日となりました。
紫のスミレや白いミヤマカタバミの花がそこかしこに咲いています。
日本ではもっとも小さい鳥のひとつ、ミソサザイがとてもいい声を響かせています。ウグイスも今年は上手に鳴いていました。
ところどころには指定植物※のエンレイソウやサンインシロカネソウが咲いていました。

【サンインシロカネソウ 小~さな花をつり下げてちょこんと咲いていました。シロカネソウと言いながら黄色い花です】
これらの花はもし摘み取られてしまったら、あっという間になくなってしまうほどはかないものです。
安易な気持ちで摘み取る事が絶滅に追いやる事につながるかもしれません。
絶妙な自然のバランスの下に咲く花を、大切にし楽しみたいものです。

登山道の鳥上滝コースは、中腹までずっと石段が積まれ歩きやすくなっています。

この石段はいつ頃作られたのでしょうか。一時の工事で作られたとは思えません。古くから積まれていたような石もあります。
何十年前からなのでしょうか。それとも戦前からなのでしょうか。はたまたそれよりもずっと昔からなのでしょうか。
この山は古代より神話に登場するほどの山。また古くから鋼を採掘してきた山だそうです。
もしかすると先人達が少しずつ積み上げ築いてきた石段を、私たちは踏みしめているのかもしれません。

もうすぐ山頂と言うところまで来ました。するとカタクリの花が沿道を染めていました。登山道に迫るほどに咲く花に囲まれながら山頂に向かい歩きます。



山頂に到着しました。そこには満開のカタクリの花が、敷き詰められたように一面に咲いていました。これらは人が植えたものではありません。素晴らしい光景です。


昔から船通山に登られている方によると、以前はこれよりもずっと花は少なかったそうです。
今はロープで柵をもうけ、人を入れないようにしてカタクリの生育エリアを保護しています。
こういった地元の方々の保護活動と訪れる人達のマナーの甲斐あって、これほどまでに素晴らしい光景を目にする事ができています。



さて登山者で山頂がにぎわった頃、カタクリの紙芝居が横田山の会の皆さんによって行われました。
それによると、カタクリは花を咲かせるまでに7~8年も掛かるそうです。しかも株が成熟するまでは(条件などにもよるでしょうが)花を咲かせた翌年は咲かないそうです。
自然のサイクルとはなんとスケールが大きいのでしょうか。自然を壊してしまう事は一時で出来ますが、それを取り戻すには長い年月を要する事を感じさせます。
ゴールデンウイーク後半あなたはどう過ごされますか。船通山にカタクリの花を見に登られるなんてのもよいかもしれませんよ。

【紙芝居を見ると更にカタクリがいとおしくなります。山頂は展望も良いですよ!】

※指定植物とは:国立公園,国定公園などの自然公園内で、採取などに規制がかけられている貴重な植物。