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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

三瓶山山開き

2013年04月26日
松江
三瓶山は今年、国立公園指定50周年と言う節目の年を迎えました。地元では様々な記念行事が行われています。皆さんぜひ三瓶山に遊びに来てください。

※インターネットHP「“三瓶山”国立公園指定50周年記念事業公式サイト」のURL↓
http://nature-sanbe.jp/sanbe50th/about_sanbe/index.htm

さて、その三瓶山で4月21日(日)に山開きが行われました。
まず始めに麓の西の原で、今シーズンの登山の安全を祈願しました。



そしてその後、それぞれで三瓶山山頂に向けて登山を行いました。
三瓶山は標高1126m、1時間半ほどで頂上に登れる手頃な山です。
今回は壊れたままになっていた山頂の祠を修復するために、皆さん手分けして3キロづつ資材を持って上がりました。
この日は平均気温をグッと下回る寒い日でした。冷たい風が吹き、おまけに昨夜からの雨がまだ時よりパラつきます。山頂は厚い雲に覆われ望む事が出来ません。
そしてその厚い雲の下からなにやら白い物がのぞきました。
雪です。誰かが山頂には10cmの積雪があるらしいと言っています。昨日は東の原のスキー場跡地が真っ白になったらしい、とも。
悪い冗談でしょう・・・。にわかには信じられません。
なにせ松江はもうすっかり暖かな春を迎えているのですから。

しかし出発する頃には冷たい雨が本降りになってきました。ちょっと不安な登山開始です。
幸い登山道はしばらく林内で、風もなく雨もいつの間にかやんでくれました。
着込みすぎたため体はすぐに暑くなり、逆に汗で衣類が湿ってしまうので気をつけなければなりませんでした。
登山道沿いには青紫のスミレの花が沢山咲いていて綺麗です。と言いたいところですが、皆しおれたように元気がありません。やはり一度雪をかぶったのでしょうか。
標高800m半ばほどです。雪がちらほら残っていました。それは登るに連れ増えていきます。辺りは濃い霧に覆われ真っ白です。
地面がうっすらと白くなった頃、みぞれが降り出してきました。それはあられへと変わります。幸いにして一時でやんでくれたので助かりました。

標高1000m近く。岩場でしかも勾配はきつくなります。雪で辺りは真っ白、登山道も雪が積もり足下が悪くなっています。
岩陰にスミレが咲いているのを見つけました。やはり本来ならばこの標高にもスミレが咲く季節なのです。

【すっかり開ききったフキノトウも、雪に埋もれていました。】

急勾配の岩場を過ぎ、山頂近くのススキの原まで来ました。
雪原一面に、枯れススキだけが濃い霧の中にボーッと突っ立っています。
ススキに目をやると更に異様な光景が広がっていました。ススキの片側にだけ樹氷のように氷の“たてがみ”が立っています。どれだけ冷たく激しい風が吹いていたのでしょうか。



ついに三瓶山(男三瓶)山頂に到着しました。雪に覆われ濃霧に包まれた世界はさながら冬山のようでした。
皆さんが運んできた資材は山頂そばの避難小屋に集められました。これで山頂祠の修復もおこなえます。



寒くて長居は出来ません。早々に握り飯をほおばり下山することとしました。
下山は雪により足下がすべり、登りの時よりもずっと注意が必要でした。
ちなみに西の原に下るルートはもう一つあるのですが、この道は険しいため今回は避け、登ってきた道を下る事にしました。
辺りは濃い霧に覆われ、奈落の底に下るようです。

ところが標高900m辺りでしょうか。スーッと霧が消え始めたかと思うと視界がにわかに開けてきました。それはどんどんと遠くまで伸び、みるみる景色が望めるようになりました。
そして一面のパノラマが眼下に広がりました。空気が澄みクッキリと鮮やかに見えます。今まで閉ざされた世界にいただけに爽快な光景でした。


仰ぎ見れば山頂も雲が晴れクッキリと望めます。
私達にも日差しが降り注ぎ、先ほどまでの雪山の世界が嘘のように思えてきます。
下山した私たちが振り返ると、山頂には雪、中腹には新緑、そして山桜までが一望できる三瓶山の姿がありました。

4月下旬ともなれば三瓶山は春の陽気が感じられます。今回もスミレやフキノトウが咲いていました。それでも冬に逆戻りするような日もあるのです。
平地に住んでいるとどうしてもそんな状況を思い浮かべられないものです。
この日は幸いにして雨も風も止みましたが、もし冷たい雨が降り続き、強風が吹き付けていたら、更にずっと厳しいものとなっていたでしょう。
またこの日周辺は日差しもありましたが、三瓶山だけが厚い雲に覆われていました。天候も刻々と変わりました。
春を迎え、これから登山を楽しもうと思われる方も多いでしょう。
登山の際は天気予報を確認するのは当然ですが、最悪の状況も考慮し、装備は万端にし、状況に合わせて対応判断し、無理のない計画と行動を心がけたいものです。