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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

野生の掟(おきて) ~宍道湖渡り鳥調査にて~

2013年04月08日
松江
松江の桜は満開となり週末は見頃、と思われましたが、全国を襲った週末の風雨で散ってしまったようです。皆さんのお住まいではいかがですか。
さて暖かくなり、宍道湖の冬鳥であるカモたちは大分少なくなりました。
周辺の田園で見られたコハクチョウやマガンたちは、前回調査(3月下旬)から姿を見せていません。みんな北に渡って行ったようです。

今回その田園での調査中、ある光景を目にしました。
車を進める先の交通標識に、なにやら大きな鳥が留まっています。
ノスリです。ノスリはカラスと同等かやや大きいタカの仲間です。沖縄以外の日本中で見られ、この辺りでは冬鳥としてやって来ます。

「鋭い嘴、そして爪。標識の上端の塗装がはげています。」

話はこれからです。
しばらくして、1羽のハシブトガラスが近くのガードレールに留まりました。
そのカラスがふいに飛び立ちました。そして・・・
ノスリの後方からノスリに向かって突っ込んで行きました。
あわやぶつかると思われるスレスレを飛びます。
ノスリも体勢を崩しながらも身をかわしてやり過ごし、標識の上にとどまっています。

「後方からのカラスの攻撃、ノスリもひるがえってこらえ、脅しには屈しない構えです。」

カラスはと言いますと・・・逃げてはいません。元いたガードレールに戻っています。
そして再び舞い上がり、ノスリに攻撃を仕掛けました。
同じような展開となり、またカラスはガードレールの上に戻りました。タイミングを見計らっているようです。
ノスリはと言いますと・・・カラスを攻撃しようとはせず、標識の上に留まったままです。





「右へ左へと揺さぶりをかけます」

カラスの攻撃は何度か繰り返され、そしてだんだん厳しくなっていきました。
そして何回目かの攻撃で、ついにたまらずノスリが留まっていた標識から逃げ出しました。


なおも追うカラス。
体の大きいノスリがカラスに追われています。


「烏合の衆」とは言いますが、いやいやどうして、たった1羽でも少し大きなノスリを追い払うカラスのしつこさ、したたかです。

そしてそのカラスは、今までノスリが留まっていた道路標識に代わって留まりました。

「俺様の天守閣だぞ!と言わんばかりです」

私がそのすぐ真下を車で通過してもそこから離れようとはしませんでした。
けして弱肉強食だけでは表し切れない「野生の掟」を見た気がしました。