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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

いろんな子孫の残し方

2012年12月25日
高松
今年は例年より寒くなり、市内でも雪がチラチラと舞う日が早くもありました。
五色台では、12月半ばにぼた雪の降る日もあったそう。
今年の冬はまた積もりますかねぇ。
五色台も紅葉が終わり、ひっそりと冬を迎え始めています。
寒くなると室内にこもりがちになってきますが、遊歩道を歩くとこの時期ならではの発見もありましたよ。

10月の雑草生け花の時にはエビヅルやノブドウ、ガマズミの実やノコンギクなどの草花が多く見られましたが、さすがに12月半ばになるともうありません。
それでも何かないかなーとキョロキョロと見渡してみると・・・


【イヌビワ】クワ科イチジク属

ありました!割ってみるとイチジクそっくりで、味もまさにイチジク。
そういえばイヌビワって食べると甘かったり、不味かったりするなと。
イヌビワは雌雄異株でリンゴやみかんのように花が咲くのではなく、実の中に花があります。これを花嚢といいます。
「実の中に花があったら受粉ってどうなるの?」って思いません?
この受粉に大きく役立っているのが【イヌビワコバチ】という昆虫。
そのイヌビワとイヌビワコバチの関係はこのようになっています。


雄果嚢の中に産み付けられた卵から幼虫が生まれ、冬の間は子房をエサにすくすくと育ちます。
春~初夏頃には成虫となり、同じ果嚢で育ったオスとメスが交尾します。


交尾後、翅のあるメスは雄果嚢出入り口付近の雄花の花粉を付けながら、別の果嚢へと飛び立ちます。
翅のないオスは飛び立つことができず、雄果嚢の中で息絶えます。
飛び立ったイヌビワコバチのメスはこんな運命を辿ります。
イヌビワは雌花が先に咲き、中間期があった後、雄花が咲きます。


雌果嚢に入ったイヌビワコバチは雌花めがけて向かいますが、上左図のように柱頭が長いのでうまく蜜が吸えません。あせったイヌビワコバチはバタバタと暴れ、その時に躰に付いていた雄花の花粉が一緒に散らされます。これが受粉となり、イチジクのような甘みのある実ができ種子ができます。果嚢の出入り口が塞いでしまえば、受粉の役割を担ったイヌビワコバチは脱出することなくそのまま息絶えます。

雄果嚢に入ったイヌビワコバチは雄花の奥にある「虫えい花」(仮雌花で花粉を持たないので不妊)めがけて蜜を吸いに行きます。この虫えい花の柱頭は短いので、花に留まって蜜を吸うことができます。そして果嚢の中で卵を産み付け、また翌年子どもたちが誕生していくのです。花粉を持たない「虫えい花」は受粉しないため、その実を食べても甘みもなく不味いのです。

イヌビワはイヌビワコバチに花粉を運んでもらうことで受粉でき種子を残していくことができます。
そのイヌビワコバチはイヌビワのために働く代わりに住処とエサを与えてもらい子孫を残していきます。
これを「共生」といい、どちらか一方が途絶えてしまうと、その代わりを担えるものがいない限りもう一方も絶えてしまう運命です。
共生関係を持っているのはイヌビワだけではなく、クマノミとイソギンチャクもそうですね。

他にも子孫を残すといえば、こんな残し方もあります。


           ↓

【テイカカズラの種】キョウチクトウ科テイカカズラ属
テイカカズラは初夏に白い花を咲かせ、10月頃には上写真のような赤い豆のような袋果ができます。それが2つに裂けて中から下写真の様な冠毛の付いた種が飛んで、植生範囲を広げていきます。代表的なものにタンポポがありますね。
タンポポは地面近くに生え丸く綿毛が付いているのでよく目立ちますが、テイカカズラは高い位置に袋果ができ、そして種子が飛んでいくので頻繁に目にすることはありません。見つけたら「やった!!」と思ってよしです。

紅葉が終わると野山は殺風景になり、花や生き物も少なく見応えがないかもしれませんが、よーく見るといろんな発見ができるものです。
また見つけたものを調ることで、今回書いた日記のようにイヌビワコバチの存在に気付いたり、共生の大切さや生物多様性の意味が少し分かったのではないでしょうか。