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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

宍道湖 冬の渡り鳥調査にて

2012年12月20日
松江
この日は山陰の冬としては貴重なよく晴れた一日でした。
昨日吹雪いたのが嘘のようです。
宍道湖の水鳥たちものんびり過ごしているように見えます。
沖合には何千羽といった大きなカモの群れが見えます。
カンムリカイツブリは単独で、点々と湖に散らばっています。
大きな獲物にありつけたアオサギが、魚を喉に詰まらせもがいています。
月3回渡り鳥の種類と数を定点観測地から観測するのが、秋から春にかけての私の仕事です。

定点観測を終え、今度はマガンやコハクチョウを探して宍道湖周辺を廻ります。
宍道湖西岸に来ました。ここはのどかな田園ですが、野鳥たちにとって大切な餌場でもあります。
特にマガンは最大で5000羽ほどがやって来るようです。

「珍しく宍道湖の西岸からも大山がクッキリと望めました」

明るい日差しの逆光に不思議な光景を見ました。
蜘蛛の糸らしき物が田んぼ一面を覆っています。
宍道湖西岸の田んぼ全てではないでしょうが、かなりの広い範囲で見られました。
いったいどうしたというのでしょう。
これは秋に生まれた小蜘蛛たちが、散らばるために糸で橋を張り巡らせているのだそうです。

「見えますか マガンの群れの前と奥にビッシリと張られた蜘蛛の糸 これが田んぼ一面にです」

田園を廻っているとふとすぐそばの休耕田に、見かけない大きな鳥が目に入りました。
白地に黒のタンチョウヅルのような柄。でもツルよりはずんぐりとしています。
急いでカメラを取り出しシャッターを切りました。
この鳥は、もしや・・・。鳥の図鑑を広げます。それはコウノトリでした。
物語ではよく登場する有名な鳥ですが、野生の実物を見るのは初めてです。
これは明日の地方紙を飾るか!?と若干期待しましたが、どうやら11月頃より見られたそうです。宍道湖ではごくたまに来るそうです。
かつては全国に生息していた鳥ですが、いまでは絶滅危惧種で国の特別天然記念物です。
どうしてコウノトリは全国から姿を消してしまったのでしょう。

「思ったよりも大きい これなら赤ちゃんも運んで来れそうです」

野鳥たちは神経質です。近寄り過ぎるなどしてストレスを掛ければ飛び去り、場合によってはもうそこには寄りつかなくなるかもしれません。その事により良い餌場を失い、死んでしまわないともかぎりません。
訪れる方はどうぞ静かに野鳥たちを見守ってあげてくださいね。

「美しいですね~」

宍道湖はラムサール条約登録地で野鳥たちの楽園ですが、その周辺の人間たちの利用する土地も、野生動物たちの重要な住処です。
ここでは人々の暮らしのそばに野生動物たちの暮らしがあります。