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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

ミヤジマトンボ生息地環境整備作業

2012年11月20日
広島
今年もミヤジマトンボは順調に発生し、
10月上旬には産卵を終え、終焉を迎えました。
生息地はイノシシに多少荒らされたものの、
海水の流入もあり、
生息条件に必要な“汽水”も保たれていました。

と思いきや!
10月の高潮で海と湿地をつなぐ水路が砂で埋まってしまいました。
ミヤジマトンボの幼虫はケンカに弱いため、
他のトンボの幼虫が生息できる淡水下では食べられてしまいます。
放っておくと海水が入らず湿地が淡水化してしまうため、水路の整備作業を行いました。

整備作業と一言でいっても、
生息地には道がなく重機も入らない自然海岸。
どうやって行うかというと、
船で渡って人の手でひたすらシャベルで土をかき上げ、
水路が崩れないよう土嚢袋を積んでいくという100%人力作業です。
この作業を行う度に良くも悪くもミヤジマトンボの希少性を感じます。

[水分を含んだ土嚢を運ぶのは重労働です]


人の手がなければ生きられない生き物なら
そもそも生きていく力がないのでは?
以前、私はそう思っていました。
ですが、ミヤジマトンボが野生絶滅してしまえば、
ミヤジマトンボをとりまく様々な生きものの命が脅かされます。
そして、トキのように再び野生に復活させるには
莫大な時間と労力、そしてお金がかかります。
元々、水路も自然にできるものでしたが、
近年の異常気象や埋立て等による海流の変化、山の保水力低下など、
少なからず人的要因によって生息地が危ぶまれています。
人的要因によって、一種の生きものが絶滅してしまうなんて
悲しいことだと思いませんか?

今は水路さえ埋まらなければ、
ミヤジマトンボは自力で生きています。
どうか来年も元気な姿を見せてくれますように!

[羽を休めるミヤジマトンボ成熟♂(8月に撮影)]