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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

ある荒れ模様の午後 ~鳥インフルエンザにかかわる死亡野鳥回収~

2012年11月07日
松江
それはいつも突然掛かってきます。
受話器を取ると米子事務所の角レンジャーが済まなそうに(なにも角さんが悪いわけではないのですが)伝えてきます。
死亡した野鳥が見つかったとの情報が入ったとの連絡です。
私は回収するためすぐに車で出動しました。

「今年も宍道湖周辺の田んぼに コハクチョウたちが集まってきました」

皆さんは鳥インフルエンザをご存じですか。
一昨年の冬、国内の養鶏場のニワトリが感染、死亡し、それにともなって日本中が騒動となり、養鶏農家などに大打撃を与えました。

鳥インフルエンザは渡り鳥が媒介しているとされています。
そこで死亡した野鳥が見つかればそれを回収し検査して、鳥インフルエンザが持ち込まれていないか情報収集をおこなっています。
松江事務所では国指定の鳥獣保護区である宍道湖と中海の一部を担当しています。
今回は外部の方から死んだ野鳥を発見したとの通報を受け、そしてどうもリスク種1※¹のようだとの事で、回収に向かいました。

この日は強い風の吹きすさぶ日でした。
途中宍道湖沿いの国道を走っていると、堤防を飛び越え波しぶきがフロントガラスに降りかかってきました。
発見現場に到着したのですが、車を駐めるスペースがありません。少し離れた所に車を駐めました。
長靴とカッパを着ていると、私を歓迎してくれるかのように雨が強くなってきました。
道具を持ってブカブカの長靴を引きずりながら、現場に向かって探しながら歩いて行きます。
電話で聞いた情報だけでは、自分が思っている場所とずれている事も考えられるので、ある程度広い範囲を視野に入れ探さないといけません。
今日の宍道湖は「冬の日本海か!」と思うほど荒れ、波が消波ブロックで砕けています。
変わり果てた姿で“物”となった鳥は、なかなか見つけにくいものです。
見落とさないように注意して探しますが、強い風と雨が眼鏡を曇らせます。


遠くに何か白い物が2つほど見えました。
「カモメか?」そう思い私は長靴を引きずりながら小走りしました。
イメージと違いますがカモメのなかまは死肉をついばむのです。
近づくとカモメは逃げだしそこには変わり果てた姿のカモがいました。
まだ新しそうなので※²回収し検査することにしました。
回収した鳥を持って車に戻ったころ、私をねぎらうかのように雨がやんできました。

これを家畜保健衛生所に持って行き、簡易検査を行ってもらいます。
また更に死んだカモの粘膜を検体として取り、筑波にある国立環境衛生所に送り詳しい検査を行ってもらいます。
これにより死んだ野鳥が鳥インフルエンザに感染していたのか、いたのならばどのようなタイプのウイルスなのか調べます。
このように鳥インフルエンザの進入を早めに見つけ、場合によっては関係機関と連帯して感染拡大の防止に努めます。

産業の発展に伴い、伝染病も世界規模化し被害も大型化するようになりました。
私たちは文明が発展すれば、自然を完全にコントロールできるようになると思っていたふしがなかったでしょうか。
ですがどれだけ文明が発展しようとも、自然を支配することなどとうてい出来ないと言う事を私は感じさせられてしまうのです。

※¹ リスク種1とは
鳥インフルエンザウイルスの影響を受けやすく、死亡野鳥調査で監視の重要性が高いと考えられる種類18種。
1羽でも死骸があれば回収し検査する。
カモ目カモ科
・シジュウカラガン ・マガン ・ヒシクイ ・コブハクチョウ ・オオハクチョウ 
・コハクチョウ・オシドリ ・キンクロハジロ
タカ目タカ科
・オジロワシ ・オオワシ ・オオタカ ・ハイタカ ・ノスリ ・サシバ ・クマタカ
・チュウヒ
タカ目ハヤブサ科
・ハヤブサ ・チョウゲンボウ

※²新しそうなので回収し検査
死亡し鮮度が落ちると鳥インフルエンザウイルスも死んでしまいます。ですから新鮮な死骸でないと判定できなくなるのです。

鳥インフルエンザに関する情報については下記HPにも掲載しています。
環境省HP内より↓
「鳥インフルエンザに関する情報」
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/index.html


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【お知らせ】『アクティブ・レンジャー国立公園写真展開催!!』

 中国四国地方に配置された6名のアクティブ ・ レンジャーが出会った、独自の特色を持つすばらしい国立公園、ラムサール条約登録湿地の自然。その風景や利用する人々や活動など、様々な表情を紹介する写真展です。

場所  :島根県三瓶自然館サヒメル玄関ホール(入場無料)
期間  :平成24年11月10日(土)~12月16日(日)
開館時間:9:30~17:00
休館日 :毎週火曜日、メンテナンス休館日12月3日~7日