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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

隠岐ジオパーク学習会に参加してきました。

2012年09月10日
松江
先日、島後の都万にある塩の浜で地元の中学生がシーカヤックや山登りといった体験を通じ隠岐の自然の素晴らしさを学ぶ学習会が実施されました。その学習会に講師として参加した時の様子をお伝えしたいと思います。



「スタッフの話に聞き入る中学生たち」


まずは、遊歩道沿いの植物観察です。
中学生に隠岐の植生を教えるのは84歳のスタッフですが日本の山をほぼ登り尽くした山男です。ユニークな話も交えながら植物の不思議な生態や隠岐の不思議な植生について語ってくれました。
「森が『※極相林』になっているとな、せっかく芽を出しても植物は陽が当たらずに枯れてしまうやろ?せやから種は何年も何年も何年も土の中でじーっと陽が当たる日を待っとんねん。それくらいな植物はすごい生命力を持ってんねんで。」と穏やかな関西弁の語りに中学生も聞き入っています。

※『極相林』
自然状態のままの植生の変遷を見ていくと、コケ類から一年草へ移り多年草へと変化して低木・陽樹から高木・陰樹へといった具合に、植生が移り変わっていきます。その最終的な状態を極相林と言います。



「矢尻づくりに夢中!」

植物観察の次は古代体験です。
みんなが取り組んでいるのは黒曜石の矢尻づくりです。隠岐で採れる黒曜石は4万年前から古代人によって瀬戸内地方まで運ばれており、現在でも質の良い黒曜石が採掘されています。現在ではお土産品として地場産業に活用されるだけでなくこのように子供達の地域学習にも活用されています。
古代人と同じく鹿の角と鹿の皮だけで矢尻をつくりあげるのは想像以上に難しく全員「これができないと古代ではご飯食べられなかったんだぞ」と一心不乱に黒曜石と格闘していました。


「黒曜石の矢尻で作った復元弓はダンボール位なら貫通します」



「使う道具は鹿の角・鹿の皮………だけ!」

次に、国立公園や隠岐の自然環境、隠岐ジオパークについて学びます。
隠岐は国立公園に編入されて来年で50周年を迎えますが具体的にどのあたりが国立公園に指定されているのか知っている人はなかなか居ないようです。
たくさんの隠岐の風景写真や日本各地の国立公園の写真をスライドで見ていきます………



「国立公園や隠岐の自然について話してきました」



岩石の成り立ちを解説
スタッフ「左手の白い岩石と右手の黒曜石の成分は一緒です!」
一同「へぇ~~~」

そして、海洋生物についても学びます。
水槽の中には「タコクラゲ」「ウミシダ」「アカヒトデ」「ムラサキウニ」が入っています。
7割の生徒は海遊びをする時にウニやヒトデを触った経験があるそうですが、写真の『ウミシダ』は見たことがなく興味津々でした。
ウミシダは名前のとおりにシダによく似た形をしていますが海藻ではありません。
棘皮動物でウミユリに近い“動物”です。普段は水深10m~20mくらいの海に生息しているそうで、海に潜って漁をする人でなければなかなかお目にかかれません。しかし、この学習会ではどうやって捕まえたのでしょうか?

漁師の漁に答えがありました。
隠岐では漁師が網を使ってサザエや魚を取りますが、その際捕獲されたウミシダが港で網から外されて漁港の岸壁にくっついているのだそうです。漁港の岸壁に行くと水深1mくらいのところでひっそりと生息しています。



「水槽の中の生き物はなんだ???」

最後は全員お待ちかねのシーカヤック体験です。
まずはパドリングの講習を受けて漕ぎ方を学びます。海の上で頼れるのは自分の力だけなので全員真剣にスタッフの説明を聞いていました。
船のそこが透明になっているクリアカヤックで元気よく漕ぎだして行きます。
海はエメラルドグリーンに輝いて水深8mくらいまではっきり見える絶好のシーカヤック日和でした。隠岐特有のアルカリ流紋岩という白っぽい岩石の砂が海底に敷き詰められ、海中に入った光を反射しているためエメラルドグリーンに見えます。このようなエメラルドグリーンの海は地中海でみられるのと同じ条件なのだそうです。日本に居ながらにして地中海と同じ海を中学生は楽しみました。



「パドリング講習の様子」



「さぁ!出発だ!」



「大海原へ漕ぎだすぞ!」

最後に、生徒たちが書いてくれた感想文のなかには「隠岐はすごい自然がたくさん残っていることがわかった」「こんなにすごいものがたくさんあることを知らなかった。隠岐にいいものがたくさんあるからあとは隠岐の人が頑張って守って行かなければいけないと思う」「隠岐のことがもっと好きになった」と嬉しい感想を書いてくれていました。

写真提供(隠岐ジオパーク戦略会議事務局)