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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

夏の終わり~秋の始まり~そして・・・

2012年09月10日
高松
夏休みが終わった先日、自然保護官と一緒に直島へ巡視に行ってきました。
直島は、世界的に名の知れた建築家やアーティストが設計、デザインした建築物やインスタレーションなどが宮浦港・本村港周辺や直島南側に位置する琴反地地区に点在する云わずと知れたアートの島でもあり、また環境問題にも積極的に取り組んでいる島でもあります。
年中観光客で賑わう直島ですが、特に7~8月の夏休み期間はフェリーの座席が埋まり座れなくなるくらい観光客でいっぱいになります。
さすがに9月入ると少し落ち着きを見せ、特に平日はゆったりと島観光ができるでしょう。
島内はレンタカーがないのでバスで回るのもいいですが、自転車でゆっくり景色や空気、音を楽しみながら回るのがオススメ。電動自転車じゃなくても勾配がキツくないので、苦にはなりませんよ。


宮浦港にある草間彌生作・赤カボチャ(公園外)
夏の間は人でごった返していましたが、今時期はまばら。

私たちも直島内での交通手段はレンタサイクル。
琴反地まで行き、一旦自転車を置いて園地や野営場など見て回りました。
その中で夏~初秋に見られる植物を見つけたので少しご紹介。


【ヒメイワダレソウ(姫岩垂草)】クマツヅラ科イワダレソウ属
花期:6~9月

海浜植物のイワダレソウ(国立・国定公園指定植物)に似ていますが、どちらかというとランタナにそっくりな花。
イワダレソウは円柱状の穂状花序を下から上へと順に咲き上がっていき、ヒメイワダレソウのように全体に花序は付かないのが特徴です。
ヒメイワダレソウはグランドカバーとして使用されているようなので、その種子が飛んできたのでしょうか。


【オオフタバムグラ】アカネ科オオフタバムグラ属(要注意外来生物)
花期:7~9月

【メリケンムグラ】アカネ科オオフタバムグラ属(帰化植物)
花期:6~9月

よく似た2種類ですが、両方とも北アメリカ原産。
海岸や河原で生育し、大抵この2種共に見られることが多いようです。
見分け方は、メリケンムグラの花冠に毛があり、雄しべ4本が外へ向き雌しべ柱頭が深く2つに裂けていることが特徴。
2つとも小さな花ですが、よーく見るとその違いが分かりますよ。


【ハマゴウ】クマツヅラ科ハマゴウ属
花期:7~9月

琴反地の浜辺に多く見られるのが青紫の花を付けるハマゴウ。
大きくなるとツル状から木状になり、高さ1mを超すまでに。
東の海浜植物代表がハマナスならこちらは西日本の代表格です。
実は線香の原料になったり、灰汁を染料として、また実を薬用としても使われているそうです。


【ノカンゾウ】ユリ科ワスレナグサ属
花期:7~9月

鮮やかな色を放つノカンゾウ。
この写真のように赤みが強いものをベニカンゾウとも呼ぶそう。
ハマカンゾウともよく似ていますが、ノカンゾウの方が葉が細いのが特徴。
またヤブカンゾウも似ていますが、そちらは八重咲きなので区別しやすいです。


【キキョウ】キキョウ科キキョウ属
(環境省RDB:絶滅危惧Ⅱ種(VU)・香川県RDB:準絶滅危惧種(NT).
 国立・国定公園指定植物)
花期:7~9月

家紋や着物柄にも使われる青紫の花がきれいな日本を代表する花のひとつ、キキョウ。
園芸種のキキョウは見たことあるのですが、実際自生しているものを私は初めて見ました。RDBに指定されていることからも野生で自生しているのが減ってきていることが分かります。
キキョウといえば、秋の七草のひとつ。
7つ全て言えますか?知らない方はこの際に是非!
「ハギ、キキョウ、クズ、フジバカマ、オミナエシ、オバナ、ナデシコ」
どれも今の時期~これから見られる植物なので探してみて下さいね。

夏~初秋の花を見ながら途中、エビヅルやヨウシュヤマゴボウ、ヘクソカズラの花も見つけ巡視を進めていくと・・・なにやら黄色く垂れ下がった花が。。。
・・・・もしかして・・・オオハンゴンソウ??
私、初めてみました。。。現地で保護官とオオハンゴンソウと判断したものの図鑑でそっくりなのを見つけ、違うかも!と期待しながら改めて調べてみましたが覆ることはありませんでした。。。


【オオハンゴンソウ】キク科オオハンゴンソウ属
花期:8~9月

近似参考:園芸種【ルドベキア(アラゲハンゴンソウ)】

よく似ていますが、一番の見分け方はルドベキアの筒状花は黒紫色で、オオハンゴンソウは筒状花が黄緑色。またキクイモなどとも似ていますが、ここまで筒状花が高くありません。

このオオハンゴンソウ、何故咲いていてほしくないのか。。
それは特定外来生物に指定されているからです。
『特定外来生物』とは・・・?
元々日本にはおらず、海外起源の生き物たち(外来生物)が何らかの理由で日本にやってきて野生化し、日本に元々いた生き物たち(在来生物)の棲み処を奪い捕食したり、また農林水産業への悪影響や人間に危害を加えてしまう生き物のことを指します。
これら外来生物を放っておくとどうなるか?
棲み処を奪われた在来生物がいなくなってしまう!→生態系がどんどん崩れてしまう!そして私たちの生活が危ない!といったことから駆除・防除する必要があります。
例えば、このオオハンゴンソウは地下茎が横に伸びてそこからクローンが成長、また種子を土に何年も残していくシードバンクシステムを持っている可能性もあり、繁殖能力は抜群。。しかも地下茎は強く張り、引っこ抜くことも容易ではなく、多数の筒状花は種子となるため1年や2年では駆除しきれないしつこさを持っています。

しかし、そもそも日本に連れてこられた理由の元は人。
自分たちの利益のために繁殖させよう、きれいだから栽培しようと連れてこられた生き物。この中にはペットとして輸入されたものの飼いきれなくなった人が野外に捨ててしまい繁殖している生き物もいます。
人間達の勝手な都合によって今まで棲んできた環境と違う中で生き延びた結果、最終的には駆除、そして殺処分です。

希少種を守ることも大切。そのために外来生物を駆除することも大切。
しかしその背景には人間の身勝手さもあることを知ってもらいながら、外来生物、在来生物のことを考えて欲しいです。

※環境省HP 外来生物法↓↓
http://www.env.go.jp/nature/intro/index.html

       *****特定外来生物の三原則*****
      ①入れない ②捨てない ③拡げない