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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

世界ジオパークの現地審査

2012年07月31日
松江
皆さん「ジオパーク」という言葉をご存知でしょうか?

ジオパークとはその地域特有の地形地質に基づく素晴らしい景観や貴重な生態系、そこに住む人々の歴史や文化を保全・保護しながら経済活動・教育にも活用し、持続可能な社会づくりに取り組んでいる地域が指定されているものです。

ユネスコの支援を受けて現在世界中で27カ国87地域が世界ジオパークとして活動を行なっています。日本ではすでに洞爺湖有珠山、糸魚川、雲仙島原、山陰海岸、室戸の5地域が世界ジオパークに認定されています。

隠岐は地域の様々な取り組みが評価されて2009年に日本ジオパークに認定され、この7月に世界ジオパークになるための現地審査を受けました。

私は今回の現地審査で国立公園のアクティブレンジャーとして現地の自然環境と国立公園制度について審査員に説明させていただきました。隠岐ジオパークの見どころの大部分は国立公園の範囲内にあります。ジオパークの保全・保護の部分において国立公園は重要な要因となっています。

私が説明を担当したのは隠岐島後の乳房杉と大山神社です。


乳房杉(ちちすぎ)

乳房杉は樹齢800年、樹高が約40mになる杉の巨木です。
古い信仰の流れを残しており、社殿はなく乳房杉の後ろにある大満寺山全体が神社とされています。乳房杉は神社の御神体として隠岐の人々に親しまれています。
写真にもあるようにこの周辺は霧のよくかかる場所です。
大満寺山(607m)の頂上付近から乳房杉のあるあたりまで岩石が崩壊した地形になっており、岩石の隙間が「風穴」になって地下で冷やされた空気が出ています。海から来る湿度の高い風がこの周囲の冷たい空気に当たると温度差で霧が発生するためです。霧が発生することから標高の割には涼しく、本来ならば標高600m以上に生えるような植物がこの周辺で見ることができます。周囲の植生を見ても大地との繋がりを知ることができます。


自分で作った隠岐の国立公園のマップを使って国立公園の解説

「皆さんが審査でご覧になったジオパークの主なジオサイトは国立公園として法律できちんと保護されています。自然環境を保全・保護をしながら活用していく国立公園の目的とジオパークの目的は同じなのでこれからも地域の人々と協力しながらジオパークの活動を支援していきます。」


オシダも解説

審査員のお一人はマレーシア出身で「マレーシアにもたくさんシダがありとても興味深い」と、おっしゃったのでシダについてもお話しました。「この大きなシダは『オシダ』といって本来であれば隠岐の気候よりも寒い地方に生える植物です。隠岐の不思議な環境がこういった植物たちが生えるのに適した場所になっています。」


次に大山神社を説明しました。
この神社では2年に一度樹齢400年、樹高約40mの杉にサルナシの葛を巻く「帯締め神事」が行われます。山仕事の安全と子孫繁栄を願う祭りで、同じ全国の山祭りの中でもこの大山神社が一番古い山祭りだと言われています。


帯締め神事の様子(今年3月)

昨年の山祭りには私も参加していたので祭りの様子や順番など、映像をみていただきながら解説しました。


祭りの様子の動画を興味深く鑑賞する審査員

大山神社は先ほどの乳房杉と同じ古い信仰の流れを残す神社です。
「アニミズムのような自然信仰です」と説明すると「なるほど」と外国の方でも理解していただけたようでした。


最後に大山神社の祭りの歌を披露しました

現地審査後の記者会見では「隠岐はジオパークの本質をよく理解して活動している。環境省の看板にジオパークの内容が入っていてとても素晴らしい」と評価いただきました。
今回の現地審査の結果は9月15日~20日に行われるポルトガルの世界会議で可否がわかる予定です。
良いご報告ができる事を期待しています。