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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

【自然情報】 屋島その2

2012年07月24日
高松
その1に続いて同じく屋島より。

屋島を巡視していると、植物の他にも見かけるのが昆虫たち。
南嶺は屋島寺や水族館、旅館、レストランなど観光施設が集まる場所なので、
いないんじゃないかと思われるかもしれませんが、意外と見つけられます。
駐車場近くにある広場では・・・

【ツマグロヒョウモン】 チョウ目タテハチョウ科

翅には豹のような紋様があり、前翅先端部は黒~青色でその中に白いラインが見えます。
この写真のツマグロヒョウモンは雌で、雄は前翅に黒~青の色づきがありません。
他のヒョウモンチョウ類は大抵年1回しか発生しないのに、このツマグロヒョウモンは年4~5回発生する多化性という例外な種類でもあります。
またツマグロヒョウモンの雌は、遠目で見ると【カバマダラ】という毒を持ったチョウに似ており(擬態)、鳥に襲われないという特徴も持っています。

その近くの空き地にはヒメジョオンが咲き、周りにはヒラヒラと
よく見かけるチョウが。


【ベニシジミ】 チョウ目シジミチョウ科

見えている翅は裏側(チョウで言うと腹側の翅)。
みなさんよく見かけるのはコチラ側だと思います。
ベニシジミは年3~5回成虫が発生し、発生する時期によって春型、夏型があります。
何が違うかと言うと・・・。


春型ベニシジミ

夏型ベニシジミ

赤丸部分、前翅の表側(チョウの背中側)の違いが分かりますか?
春型はオレンジ、夏型になると黒っぽくなり黒丸模様も少し大きくなっています。
今の時期、ちょうど春型と夏型両方が見られました。
蜜を吸うのに夢中なのか、人が近づいてもヒメジョオンから離れませんでした。

南嶺の巡視を終えて、北嶺へ行くと5月頃にたくさん見られたマイマイガの幼虫が成虫になってヒラヒラと飛んでいました。
その2ヶ月前にはサナギや幼虫がいっぱい張り付いていた北嶺の案内板。
やっといなくなったかと思いきや!


ベージュの卵塊がいっぱい・・・

表面がフワフワしているのは、成虫腹部の鱗毛が覆っているからです。
それにしても1卵塊につき卵100個から成り立っていると言うから・・・。
一体次はどれくらいの成虫が飛び回るんだろう。。。
生み付けられた卵はすぐに生育を始め、卵の中で1齢幼虫の状態で越冬し、また来年の今頃成虫になって飛び回ります。しかし、飛び回っているのは白い個体の雌ばかり。雄は一体どこにいるんでしょうかね。
そして看板をよーく見ると卵塊の近くや下には成虫(雌)が。


全く動きません。。
卵を産んで力尽きたようです。。。

子孫を残すために母は自分の命と引き替えに卵を産みます。
どの世界も母は強しです。

そして広場の芝生の中では見たことのない派手なのが。


【ビロウドハマキ】 チョウ目ハマキガ科

前翅は黒地に白い水玉模様に赤いラインが入っています。後翅は豹紋のよう。
蛾とは思えないキレイな翅を付けていました。
さて、蛾とチョウ。
同じチョウ目ですが何が違うのか。
チョウは昼間活動するため、色を見分ける複眼が発達し、蛾は夜活動することが多いため、匂いや音を感知する触角が発達しています。

この他に北嶺広場の池の周りではトンボがたくさん飛んでいました。


【ショウジョウトンボ】トンボ科

あでやかな赤になるのは雄。雌は成熟すると黄褐色になります。
ショウジョウトンボは五色台でもよく見られ、ここ屋島北嶺では毎年見ることができるトンボのひとつ。
そして、よく見られるのはコチラも。


【キイトトンボ】イトトンボ科

ちょうど交尾を終え、連結態のまま産卵に入っているのでしょうか。
雄(上側)は連結したまま直立姿勢になって、雌を外敵や他の雄から守っています。
他にも黒く光沢のある翅を持つチョウトンボ、
躯の青と黄緑が映えるクロスジギンヤンマ、
黄褐色で躯がズングリしているヨツボシトンボや
青白い躯でお馴染みのシオカラトンボなど見られます。

屋島は市内に位置し、麓は住宅地や商業施設が広がる地域。
目立って珍しい植物や生き物はいないかもしれません。
それでいいんです。
香川は住宅地が広がる中に田畑やおにぎり山が点々と存在する、人と緑、生き物たちが存在する場所。
日頃忘れがちなこの身近な自然環境こそ、瀬戸内の特徴なんです。