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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

ウスイロヒョウモンモドキ生息調査

2012年07月20日
松江
急斜面の藪の中をかき分け登ります。まだ10時過ぎですが、もう暑くてバテバテです。
山陰は梅雨明けしました。梅雨明けに合わせたように暑さもギヤチェンジしたように“1段上の暑さ”になりました。
さてこの日はウスイロヒョウモンモドキと言う蝶の生息調査に三瓶山に行ってきました。
この蝶はわずか9種類の(国立・国定公園の)指定動物に選ばれている、日本の絶滅危惧種です。
以前は三瓶山でたくさん見られました。ですが近年は数を減らし、去年・一昨年の調査では見つけることが出来ませんでした。


「これがウスイロヒョウモンモドキです」

この日は今年一番の猛暑で、恨めしいほどに太陽が輝いていました。
この蝶は草原に住む蝶です。草原と言っても調査する自然の中では気持ちいい草原ばかりとは限りません。
草が深い所、藪化している所、低木が混じり思うように進めない所など様々でおまけに急斜面の所もあります。
イバラに覆われている所もあり、いちいち「イタタタタ」なんて言っているひまもありません。
ダニにでもかまれたのでしょうか。数日たった今も時々ぶり返すかゆみは、蚊によるものと比べものになりません。

三瓶ではこの蝶の生息環境を守ろうと、藪を刈り払い食草のオミナエシやオカトラノオを植える活動がおこなわれてきました。
その努力の跡が草原の中のあちこちで咲いていました。


「三瓶自然館の学芸員の方々、島根県職員の方々と共に調査をおこないました。」

ですが残念ながらこの日、ウスイロヒョウモンモドキを見る事は出来ませんでした。
今回はこの蝶以外に見られた蝶を全部記録していきました。
私はさっぱり判りません。三瓶自然館の学芸員、昆虫の専門家の方々に教えていただきました。


「綺麗ですね~。アサギマダラは世代交代しながらはるかな旅をする蝶です」

その結果色々な種類の蝶を見る事が出来ました。中にはヒメヒカゲと言うレッドデータブックに載っている蝶も見られました。
この掛け替えのない自然を荒らす事無く大事にしていきたいものです。


「オカトラノオの花の密を吸うヒメヒカゲ」

ところでウスイロヒョウモンモドキはなぜ減ってしまったのでしょうか。
昔三瓶は放牧が盛んでそれに伴って草原が多かったのですが、畜産の衰退で草原が減った事などが理由に挙げられています。
ただ三瓶が開拓されるよりはるか昔から彼らが生きていた事を考えると、日本全体の自然破壊など大きな原因が考えられます。
またこの蝶は判りませんが、グッと数を減してしまった種は、ごく一部の人間が安易に採取してしまう事によって深刻なダメージを受けることもあります。
今世界中で数え切れないほどの種が絶滅の危機をむかえています。私たちの豊かさの代償や安易な考えが、彼らを絶滅に追いやっているとしたら・・・。
心の片隅にでも留めて考えていただければと思います。