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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

島前調査 海士編

2012年06月26日
松江
最近湿度の高い日が多く、ムシムシしますね。隠岐も梅雨入りしていますが、なかなか雨は降って来ません。そんななかでも私は元気にあっちこっちに行っています。中ノ島海士町(あまちょう)に行ったので、今日は「島前カルデラ」について少しお話ししたいと思います。

隠岐の島は今から約600万年前の火山活動により日本海に突如として現れた島々です。その後、氷期や間氷期による海水面の変動により島根半島と陸続きになる時期などを経て現在の形になっています。というわけで、600万年前は火山の隠岐の島だったわけです。「島前カルデラ」は約600万年前の火山活動の様子を今に伝えてくれます。

島前と書いて「どうぜん」と読みます。
古くは「隠岐之三子島」と古事記に記述がある隠岐諸島ですが、知夫里島・西ノ島・中ノ島の三島をあわせて島前、隠岐の島町のある島を島後「どうご」と呼んでいます。諸説ありますが島後を隠岐、島前を三子島としたらしいです。

“カルデラ”と言えば日本でおなじみなのは熊本県の阿蘇山ですが、隠岐の島の島前3島(知夫里島、西ノ島、中ノ島)はカルデラが海に沈んだ形をしています。

島前カルデラ

このように洋上にカルデラができているのは世界中でギリシャのサントリーニ島と日本の隠岐の島だけです。ちなみにみなさんも白い海岸に青い海の地中海地方の写真などご覧になったことがあるかもしれませんが、同じ地質が隠岐でも見られます。サントリーニ島と隠岐は成因が似ているのかもしれません。この白い岩石を詳しくは「アルカリ流紋岩」といいます。このアルカリ流紋岩が人類の歴史的にも重要な黒曜石の産出と深い関わりがあるのですが今日は別の話をしようと思います。

先日調査に行ったのはこの島前の中ノ島(海士町)です。


明屋海岸(あけやかいがん)

この明屋海岸はフェリーで隠岐に来る際、島前経由のフェリーに乗ると海から見ることができます。やはりここも火山の噴火によって形成された地形です。写真の海岸部は激しい噴火の際に上空で急激に冷やされた溶岩が降り積もり堆積してできた地質です。鉄分が上空で急激に酸化したため赤い大地になりました。約280万年前に起きた明屋の噴火は中ノ島の深い湾のほとんど埋め立ててしまいました。この埋め立てられた場所が現在では島前で唯一稲作が行える規模の平野となっています。海岸には「ハマビワ」が生えています。南方の植物でここ中ノ島の海士町が日本の北限になります。隣の島後には一切ありません。


タケシマシシウド

名前を「タケシマシシウド」と言います。日本の植物図鑑にはなかなか記載されていない植物ですね。大陸性の植物で花の咲いている写真もめったにありません。調査に行った際に運良く咲いていました。日本でここだけしか生えていない植物ですね。




しかし、隠岐にも外来種が少しずつ入ってきています。オオキンケイギクは特定外来生物です。きれいな花ですが、栽培したり、生きたまま運んだり、野外に撒いたり、植える行為などは法律で禁止されています。みなさんもご注意ください。


宇受賀海岸(うずかかいがん)

中ノ島の一番北側に当たる部分です。漂着ゴミには日本語でないものも見受けられました。


宇受賀神社

国立公園内ではありませんが宇受賀海岸の近くには立派な神社も立っています。
みなさんは「延喜式神名帳」というものをご存知でしょうか?
簡単に言うと平安時代に作られたご利益の高い神社ランキングみたいなものです。
その中でも“名神大社”という最高位の位を付けられている神社があります。延喜式神名帳には島根県に237の神社が記載されていますが名神大社に選ばれたのはわずか6社しかありません。その内4社が隠岐にあるのですが、宇受賀神社がそのひとつになります。社紋は丸に橘。主祭神は宇受賀命様です。

ちなみに本土側の2社は松江市にある「熊野大社」と出雲市にある「出雲大社」です。
出雲大社とその後ろの鎮守の杜は国立公園内であり愛鳥家達からは数多くの野鳥が見られるバードウォッチングのスポットとして人気です。