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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

宮島地区パークボランティア公募観察会を開催しました!

2012年06月05日
広島
6月2日に宮島地区パークボランティア公募観察会〔紅葉谷~大聖院コース〕を開催しました!
今年3月の観察会が雨天中止となり、約半年ぶりの開催となります。
今回は植物観察に加え、自然物の中でも“石”をテーマとした観察会でした。

江戸時代に島民によってモミジが植樹され、
史跡名勝地として知られる紅葉谷(もみじだに)公園。
ですが、ただの公園ではございません!
紅葉谷公園は治水砂防を考慮した庭園風砂防公園なのです。

昭和20年(1945年)に上陸した枕崎台風の被害により土石流が発生し、
紅葉谷や厳島神社は18,000㎥に及ぶ土砂に埋まりました。
史跡名勝にふさわしい景観を残しつつも、
土砂災害に強い砂防庭園として復旧しなければならないため、
・石材は全て現地のものを使用し、傷つけない
・樹木は切らない
・コンクリートは表に出さない
・庭園師が仕事を行う
など、厳しい条件の中、復旧工事が行われ、
昭和25年に現在の自然と調和した紅葉谷公園が完成しました。
これが人手も物資もままならないはずの終戦直後に実施されたのだから驚きです!

[昭和24年に復旧工事された紅葉谷川]

[観察会の様子:右側の大石が前の写真中央部にあるもの]

続く紅葉谷コースでも土石流対策のため、
昭和24年から34年にかけて16基もの砂防堰堤が設置されました。
これも一つ一つ石の積み方が異なっていますので、
紅葉谷を登られる際は気にかけて見てみてください。


下山は大聖院コースです。
平成17年の台風14号による土石流は
記憶に新しいという方も多いのはないでしょうか。
幸い大聖院に影響はなかったものの、
登山道は崩壊、滝宮通りや厳島神社にまで被害が及びました。
弥山は天然記念物のほか、文化財保護法や自然公園法など様々な保護規制があり、
復旧工事は周辺環境への配慮が求められました。
こちらも現地の石を使用した渓流砂防工事が行われ、
自然石を用いた類い希な砂防堰堤が平成20年に完成しました。

[大聖院横:平成20年に完成した渓流砂防]

[土石流で流された滝宮神社も復旧されました!左に見えるのが白糸の滝]

花崗岩でできた急勾配の弥山は過去に何度も土石流に見舞われており、
登山道の位置が少しずつ変わっています。
古文書によると約200年おきに3回の水害があったとか。
その度に多くの方の熱意や協力によって復旧され、
宮島は昔から愛されてきた神の島なんだなぁと感じました。

コンクリートなどが普及した現代では、
普段の生活の中で自然の石を見かける機会があまりありませんが、
自然のままの石を用いた紅葉谷公園や弥山登山道をたどると
“石も自然の一部”だということを改めて思い出させてくれる気がします。

※次回は観察会で見られた植物をご紹介します!



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