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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

第7回滑床山植生回復現地検討会

2011年10月19日
土佐清水
10月18日、快晴。
愛媛と高知の県境に位置する鬼ヶ城山系の滑床山(三本杭)で、シカ食害によるササの喪失の回復に関する現地検討会がありました。



有識者として(独)森林総合研究所四国支所より奥村栄朗氏、関係機関として愛媛県、宇和島市、松野町、四万十市、四国森林管理局、地元関係者として滑床を愛する会、しまんと黒尊むら、森の国ホテル等、総勢約40名。
八面山登山口より防鹿ネット柵設置箇所経由でたるみ、滑床山山頂(三本杭)のササの回復状況を確認していきました。

森林総合研究所の奥村氏による解説
随時、奥村氏などが解説を挟んでくださいます。
防鹿ネット柵設置からの植生回復の経緯やササの種類による回復度の違いとその要因、シカの食さない植物の繁茂など、話は多岐に渡りました。

滑床山には、ミヤコザサとスズタケの2種類のササが生えています。
同じ時期に設置した防鹿柵でも、この2種類の回復スピードは全く違います。

柵内のスズタケ

柵内のミヤコザサ
その理由は生長過程。
地下茎を伸ばし増えていくミヤコザサに対し、スズタケは新芽など地表に出ている部分が食べられてしまうと枯れてしまうからです。
そのため、元々ミヤコザサが生えていたところに設置した柵内とその周辺にはササの回復が見られています。
柵内のササの背丈と葉の大きさが歩道を挟んだ向かい側の林床のササとは明らかに違うのがわかります。

しかし、よく見ると柵外の周りも同じくしてササが背丈を伸ばしています。
これはなぜ?!
そこには、こんな理由があげられていました。
理由その1:シカが柵を警戒して近づいて食べないから
理由その2:柵で囲われたことにより食害圧を受けないササの生長力が発揮され、地下茎により栄養が送られ柵を飛び出し生長している
ということが考えられるようです。

たるみおよび三本杭でもササの生長が見られます。


といっても、まだまだ土が露出している部分も多く残っており、まだまだ経過を見ていかなければなりません。


柵外の林床は、すっからかん

土が露出しすっからかんの林床と柵内の青々と回復してきているササ。
日本全国的な問題でここだけのことではないですが、防鹿柵を増やし続ければきっと林床は青々と戻っていくことでしょう。
しかし、根本的な問題を解決していかなければ柵を外したときにまた同じことを繰り返すことになってしまいます。
シカの頭数管理の方策など課題はつきず、何がベストか一概には言えません。
山でも海でも自然環境は一部だけを考えればよいわけではないゆえ、様々な意見を皆で出し合い進めていくしかないですね。

追記)
秋風気持ちよく林内を散策するも、今年は台風が多かったせいか実りが少ないように感じました。
木によっては朱や黄色に紅葉しているものもありましたが、全体的な色合いは“わびさび”を感じるものでした。

台風の影響か今秋は紅葉も実りもいまひとつ??