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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

渡り鳥の調査終了

2011年06月07日
松江
宍道湖は冬鳥の姿もすっかり少なくなりました。
野鳥の鳥インフルエンザも3月初旬から発見されておらず6月1日をもって警戒レベルが通常時に引き下げられました。
毎冬おこなっている月3回の宍道湖の渡り鳥のカウントと巡視も、5月をもって終了しました。


初冬 鴨たちがこんなに群れていました

振り返ればこの冬は大変なシーズンでした。
島根県で養鶏所での鳥インフルエンザが昨年最初に発生。野鳥の鳥インフルエンザ警戒レベル引き上げ。周りの方々も初めての事態。
就任1年目の私は現場の最先端でとにかく“やる”しかありませんでした。
その大変な冬をなんとか乗り切り、2年目をむかえることができているわけですが。

この冬沢山の死亡した野鳥を回収しました。
無残に喰われたもの、外傷もなく綺麗なもの、冬の寒さの中まだわずかに温かさが残るもの、吐き気をするような腐敗臭のするもの。
死ぬ直前でバタバタともがく鳥を捕まえて袋に入れた事もありました。
(私もこんな事はしたくはありませんが、鳥インフルエンザの疑いのある死を目前にしている野鳥を、みすみす見逃すわけにはいかないためやむを得ない処置です。)
そんな鳥たちを回収していて色々と感じる事がありました。




厳重に手袋やマスクをして消毒もおこない、自分自身の為にも感染対策をおこないますが、感情としては鳥インフルエンザ以上に、死体に触っていると言う事の方が神経質にさせていたように思います。
なぜ私は死体に触るのが嫌なのか。理由は色々ありますが、一つには死に対するマイナスイメージ、自分自身が死にたくない、死への恐怖と言った思いがそう感じさせているのかと思います。 
大抵は無残に喰われています。それはすなわち彼らの死が他の生き物たちの命を繋いでいると言うことです。
それを違った方向から見ると、私もわずか1/3日生きながらえるために他の生き物の命を奪って生きているのです。
そう考えた時「私はこいつらみたいに潔く死ねるだろうか」と思いました。

冬の水鳥たちは北西の風雪の中、荒れる波を被りながら必死に耐えています。精一杯生きようとしています。
なのに「潔く」と感じたのです。
そして私の中では精一杯生きる事と、潔く死ぬ事が矛盾しないで自分の中に入って来ました。
理屈では説明できませんが。
今日も宍道湖は穏やかで、水鳥たちが羽を休め、シジミ漁の船が幾艘も出ていました。


穏やかな風景 鳥インフルエンザで騒いでいるのがウソのように思えました