第14回気候変動適応中国四国広域協議会 議事概要
第14回気候変動適応中国四国広域協議会
場所:Teams によるオンライン開催
開会
第1部
1 構成員等の変更について(資料1)
【協議】
意見なし
2 環境省気候変動科学・適応室からの情報提供(資料2)
【質疑応答】
特になし
3 『日本の気候変動2025』について(資料3)
【質疑応答】
特になし
4 地方公共団体取組紹介
○鳥取県 脱炭素推進課
熱中症について、鳥取県では、10万人あたりの熱中症搬送者数がワースト5位に毎年入っている。そのため2年前から熱中症予防対策のテレビCMを全県で実施している。鳥取県では特別警戒期間を独自に設定しており、今年は9月末までに警戒情報を11回流した。市町の防災無線や全世帯の12%以上が加入している県レベルの防災アプリを活用し、県民に対策を呼び掛けている。また、市町の民生委員や中山間集落見守り活動協定を締結した新聞販売店、JA、郵便局、生協等の91事業者と連携し、地域の方々に声掛けしていただいて熱中症対策の予防に努めた。
ネイチャーポジティブについて、金融機関とのマッチングに努め、自然共生サイトが県内に16ヶ所ある。マッチング後は、おざなりになりがちな管理を充分やっていただけるよう、補助金を準備しながら、大手企業等も巻き込んで生物多様性保全協定を締結し、さらなる取組を推進しているところである。また、大阪・関西万博でアニメ監督の河森正治さんによるパビリオン「いのちをめぐる冒険」と連携し、実フィールドとして鳥取県を活用してもらった。自然共生サイトへの誘客など、来年度以降もこの取組をレガシーとして継続していきたい。鳥取生物多様性推進センターは設立して5年になり、鳥取環境大学と連携した記念フォーラムの開催を予定している。さらに、ブルーカーボンの取組として、40年前から人工で植えた海藻のアラメからCO2を吸収するブルークレジットを2023年に取得した。金額や量としてはわずかではあるが、こうした取組を継続していきたいと考えている。
○島根県気候変動適応センター(資料4-1)
7つの取組について紹介させていただく。
1つ目は、国立環境研究所が行う市民調査員と連携した生物季節モニタリングに令和5年度から参加しており、研究所の敷地内にある「サザンカ」と「サルスベリ」を対象にモニタリングを実施した。今後データを検証し、県民に見える形で普及啓発に取り組んでいきたい。
2つ目は、WBGTの貸出事業について、実際にWBGTに触れてもらうことで意識向上につなげることを目的としており、徐々に貸出依頼件数も増えてきている。学校関係からの依頼が多い。
3つ目は、県立公園での熱中症予防注意喚起事業について、公園内の暑さ指数を測定し、園内の危険な場所を把握するために赤外線カメラを用いた遊具等の調査を実施した。現地の調査と近くの観測所のデータで2℃近い差があることもあり、現地で測定することの重要性を感じた。運用にあたっては自動測定や自動放送などの自動化が必要という声もあった。
4つ目は、しまエコスポットの周知について、県民に広く知ってもらうために県の運営する「マップオンしまね」上に市町村が指定するクーリングシェルターと一緒に公開している。
5つ目は、気候変動適応に関する県研究機関等との情報交換会について、県内の研究機関から気候変動影響および適応に関する情報を集めて皆さんに情報共有している。
6つ目は、県内事業者の気候変動適応例について、事業者の取組を集めてホームページ上で事例紹介させてもらっている。
7つ目は、県立図書館と連携して、ポスター、パンフレットやWBGT計を展示し、図書館の関連図書も一緒に展示することで、県民に親しみやすい展示になっていると思う。
○岡山県気候変動適応センター
3点発表させていただく。
1点目は、県民への普及啓発について、県内の各種環境系イベントへのブース出展、図書館でのパネル展示や関連図書の展示、地元ラジオでの対談等の広報を実施している。過去には気候変動適応の普及啓発動画をウェザーニュースと一緒に作成し、100年後の天気予報を見てもらって気候変動の影響を実感してもらう内容になっており、県のホームページで公開している。
2点目は、今までは緩和策に軸足を置いていた企業や自治体が多かったが、今後は適応策についても知ってもらうため、県内企業や市町村向けに、適応をテーマにしたセミナーの開催を予定している。県気候変動適応センターは後援という形で本セミナーに関与しており、国立環境研究所にも協力いただきながら進めている。
3点目は、岡山県では令和5年に「岡山県版気候変動適応のミステリー」を作成し、県のホームページで公開している。A-PLATのミステリー作成に携わられた「未来のためのESDデザイン研究所」の高橋先生に協力をいただき、県内の気候変動に関する情報収集や中学校での試行等の協力を得て完成に至った。令和6年から7年にかけて、学校の先生方や環境学習指導者向けに指導者講習会を開催し、計40名程度の参加をいただいた。今後もミステリーの普及を通して、気候変動適応の考え方を県内に浸透していきたいと考えている。
○ひろしま気候変動適応センター
センターの業務は、広報、普及啓発、情報収集、調査・データ解析に大きく分けられる。広報と普及啓発については、セミナーを年1回開催しており、今年は6月に実施し、今回で5回目となる。昨年度はスポーツ現場の熱中症対策をテーマとし、サッカー元日本代表選手にも来てもらった。今年度は高齢者をターゲットとした熱中症対策について、国立環境研究所の岡様、気象予報士の勝丸様に講演をお願いした。毎年好評である。来年度も暑熱対策関係のセミナーの開催を予定している。ターゲットをいかに絞って情報を届けるかを工夫している。セミナーへの参加者数には限りがあるため、後日YouTubeで公開して広く見てもらう工夫をしている。
広報については、適応センターの広報誌を年4回作成しており、A4両面1枚に1つのテーマを掲載する工夫をしている。広島県環境保健協会の情報誌「環境と健康」にも掲載しており、広範囲に配布されている。2025年1月号には、本協議会の広域アクションプランのシカの分布に関する報告を行った。
情報収集、調査・データ解析については、同じ組織に属している総合技術研究所の農業技術センターや畜産技術センターなどと連携し、果樹、水稲、畜産などに関する情報収集や調査を行っている。昨年度は果樹に関する情報収集、今年度は、農業用ハウスと畜舎の暑さ指数について調査した。調査結果は、広島県のホームページで公開する予定。
○山口県気候変動適応センター(資料4-2)
山口県地球温暖化対策実行計画の第2次計画の中に気候変動適応計画が初めて含まれた。2021年にセンターが発足し、今年度5年目になる。あらゆる関係機関と連携すること、適応策の情報発信のハブとなることを目指して、日々情報収集と発信を行っている。
情報発信の一つとして、やまぐち気候変動情報プラットフォーム「YPLAT」を運営している。
このプラットフォームには、過去から現在までの気温等のデータを一覧で確認できる「やまぐちの気温・降水量の推移」や、気候変動モデル・シナリオごとに身近な場所の気温等の将来予測を見える化することで気候変動を自分事として感じていただくことを目的とした「地図でみる!やまぐちの気候変動予測」といったものがある。
気づきを投稿サイト「これって気候変動?みんなで調査!」では、例えば彼岸花の開花やカラフルな魚などに関して写真を投稿してもらっている。夏、気温、豪雨というワードが気になるワードとして投稿されている。
これに派生してガイドブックを昨年末に策定した。NPO法人山口県樹木医会と連携し、身近な樹木を地域別に解説し、樹木の観察ポイントを詳しく解説するとともに、4つのモデル地域の観察ポイントを病害虫や外来生物、高山の樹木への気候変動の影響などについて詳しく解説している。
やまぐち気候変動適応事例集2024について、国立環境研究所と連携し、A-PLATへのインタビュー記事や特別対談などをホームページに掲載し、冊子も作成している。
今年度は、暑さ指数計の貸出事業を実施している。高校生を対象に次世代環境リーダー育成プロジェクトも実施している。
○徳島県 サステナブル社会推進課(資料4-3)
2016年に全国に先駆けて徳島県気候変動適応戦略を策定した。
県民に親しみやすいキャラクターとして、本県のゆるキャラの気候変動適応バージョンとして「緩和すだちくん」「適応すだちくん」を設定している。
主な取組の1点目として、学校や県民に広く環境学習・普及啓発事業を実施しており、推進員の育成を実施している。
2点目として、気候変動対策に関する県民向けアンケート調査を毎年実施しており、例年150名程度から回答をいただいている。
3点目として、センターのホームページから情報発信しているほか、啓発パネルや学習ツール、ミライ地球ガチャなどを環境学習講座で活用して普及啓発活動に役立てている。
○香川県気候変動適応センター(資料4-4)
気温と熱中症搬送者数は右肩上がりで上がっており、高齢者と人口比ではこどもの割合が高くなっている。このようなモニタリングも大事だが、当センターでは適応策も実施している。
住宅の暑熱環境の改善については、窓用断熱調光シートの工夫として、片側が段ボールの形状になっているクラフト紙とプラスチック製段ボールの2種類を用いて実証実験を行っている。サーモグラフを見ると、窓の下側から熱の出入りがあり、シートを貼っている部分は断熱効果があることが確認できる。
緑化方法の改良については、ゴーヤは毎日食べるのは難しいため、育てて楽しい作物を作れないかを検討したり、香川県はビニールハウスでの苺の栽培が盛んなため、点滴の潅水装置を用いて水やりの手間を省いた緑化ができないかなどを検討している。参考にいろいろな作物の収量のグラフを掲載している。
屋外の暑熱環境悪化への対応については、光化学オキシダント濃度低減技術の開発ということで、香川県では光化学オキシダント発生の注意報の発令がある。県内では瀬戸内国際芸術祭、県立体育館でイベントが多々あり、ミストをイベント会場に設置した場合にアスクルビン酸を混ぜることで光化学オキシダントを低減できないかなどをラボレベルで検討している。
児童用帽子の開発については、こどもの通学用の帽子は密着性が高いため、四国遍路の竹傘の中に空洞がある構造に着目し、既存の帽子より10℃程度温度が低減することを確認できた。今後、段ボール製日傘の開発や普及啓発への利用を検討していきたいと考えている。
○愛媛県気候変動適応センター(資料4-5)
令和6年度の取組を紹介する。
愛媛県は、県における効果的な気候変動適応策の推進を進めるため、愛媛県気候変動適応協議会を設置しており、当協議会を開催した。
主に健康分野の取組を紹介する。熱中症による救急搬送の状況は、県内も著しい増加傾向にあり、昨年度は最も多く、今年度も昨年度に近い数になっている。
このような状況を踏まえて、暑さ指数について、測定器を用いた実測調査を令和3年度から実施している。小学校でのワークショップの開催などの普及啓発も実施している。
大洲市内での暑さ指数調査について、県内のアメダスの観測地点14の中で過去に暑さ指数35を観測した回数が最も多い地点が大洲であるため、大洲市内の様々な地点で調査を継続して実施している。昨年度、山の麓の小学校で最大の暑さ指数が計測され、7月から8月のほとんどの日で「危険」の段階の値が記録された。
空白域調査について、環境省で公表されている暑さ指数の推定値は県内12市町のみのため、空白域の実測調査を行っている。
高齢者住居の暑さ指数調査について、令和6年度の県内の熱中症搬送者のうち6割が高齢者であり、発生場所の4割は住居となっている。そのため、高齢者施設や一般世帯での暑さ指数の調査を実施している。
令和5年度から気候変動影響をテーマとしたワークショップを開催しており、リーフレットを作成し企業・団体等に配布している。
○高知県気候変動適応センター(資料4-6)
令和4年度以降の取組を紹介する。主として普及啓発の取組に力を入れている。
令和3年度末には小学校高学年向けの普及啓発冊子「目で見る!高知の気候変動と適応図鑑」を作成し、学校全体に1冊ずつ配付した。令和4年度、改めて希望する学校に追加配付を行い、23校で授業に活用された。
また本冊子を普及啓発パネルとして作成し、県庁や図書館で展示し、NPO等からの要望に応じて貸出も行った。
令和5年度には5歳児から小学校低学年を対象にした絵本仕立ての気候変動啓発冊子を作成し、保育所、幼稚園、小学校に配付し、74施設で読み聞かせなどで活用された。実際に小学1年生の授業の取材を行い、担当の先生が授業で冊子を活用した状況をホームページで発信した。
令和5年度からWBTG計の貸出を実施している。年間10箇所ぐらいで活用してもらっている。
令和6年度には、くろしおくんの紙製うちわを作成してイベント等で配布し、熱中症対策を啓発した。
また、ミライ地球ガチャのイベントグッズをレンタルし県内2か所でイベントに出展した。アンケートを実施したところ、皆さん自分にできる気候変動適応の行動を進めていきたいという意見を頂いたため、それを受け、本年度高知県版のイベントグッズを作成した。
9月にはイオンモール高知で啓発イベントを実施し、ミライ地球ガチャに254人が参加した。
今後は11月~12月に県内の市町村のイベントに出展する予定で、イベントツールを最大限活用して学校等にも出展し、環境団体や市町村にも積極的に貸し出しをしていきたい。
調査研究については、国立環境研究所と暑熱・健康等への影響に関する共同研究を実施し、研究結果をホームページで公表するとともに、熱中症対策セミナーで情報提供を行った。
○広島市 温暖化対策課(資料4-7)
広島市地球温暖化対策実行計画を気候変動適応計画としても位置付けている。
自然災害等、健康、国民生活等を重点的に取り組む分野として選定している。その中でも健康分野の熱中症対策について紹介する。
熱中症警戒アラート等の周知については、広島市防災情報メール等を活用し、すみやかに情報配信している。また、クーリングシェルターの指定を進めており、2年間で229施設を指定している。来年度からはクーリングシェルターの認知度の拡大につながる取組を進めていきたいと考えている。案内ステッカーを入り口等に掲示してもらっている。
啓発映像としてキャラクターを利用したキャンペーン動画を作成した。広島市公式YouTubeチャンネルで公開している。TVerや映画館の上映開始前などでも動画を流している。
その他、啓発ポスターや啓発冊子も作成している。
【質疑応答】
○目﨑アドバイザー(公益財団法人黒潮生物研究所)
自治体の取組紹介を大変興味深く聞かせていただいた。鳥取県の取組について、自然共生サイトが16地点あり、かなり登録数が多いように感じる。具体的なサイトや鳥取県特有のおもしろいサイトがあれば教えていただきたい。
○鳥取県 脱炭素社会推進課
自然共生サイトの取組については、県の30by30のHPに掲載している。実は令和6年度までは6地点だったが、今年度に入って市町村等を通じてかなり頑張ってもらっている。その中でも、八頭郡では大手企業と生物保全協定を結び、自然共生サイトの維持・管理・保全をつとめてもらっている。今年の7月に活動を開始したところだが、大手企業に発信してもらうことで、横のつながりや普及につながってきている。大手企業に入ってもらったことが大きかったと感じている。
○環境省 熱中症対策室
鳥取県にお聞きしたい。91団体企業と結んでいる見守り協定について、具体的に山間部で熱中症の方が多いとのことで、どのように取り組んでいるのか教えていただきたい。
2点目は、愛媛県の発表の中で、高齢者の住居の暑さ指数の調査を行っているとのことだが、暑さ指数計を高齢者の自宅に置いて本人に確認してもらっているのか、今後も継続していく予定なのか。
○鳥取県 脱炭素社会推進課
中山間等の見守り活動について、集落の見守り活動協定を約91団体と締結しており、新聞販売店、生協、JA、郵便局等と結んでいる。移動販売車とも協定を結んでいる。普段から山間集落に入っていくため顔の見える関係を作っており、知り合いの高齢者の方への声掛けをしてもらい、いつも挨拶する人が見られない場合は自治体に連絡を入れるようにしてもらっている。
○愛媛県気候変動適応センター
高齢者の暑さ指数の測定については、資料に写真を載せているが、ブックエンドに小型の測定器を固定したものを電話台やタンスの上などに設置している。測定にあわせて、エアコンの使用状況や、水分摂取のタイミングをアンケート調査した。暑さ指数の測定結果については、表示してお知らせするのが難しいため、後で結果を取りまとめて報告書として協力者には情報共有している。今後の取組については検討中である。
○石川アドバイザー(国立大学法人高知大学 名誉教授)
香川県の緑化の方法で、ゴーヤ以外のつる植物以外の野菜を栽培しているとのことだが、遮光効果はどの程度あるのか。つる植物だと窓全体を覆うことができるが、背の低い野菜の場合の効果について検証されているのであれば教えていただきたい。
○香川県気候変動適応センター
壁面緑化と地面緑化用のグリーンシートの両方のパターンを検討した。窓の外側の地面周辺がコンクリートや石畳になっている小学校やオフィスビル等では、熱くなった地面からの照り返しや反射により壁の気温が上昇するため、それを抑制する効果がある。建物の周辺自体が涼しくなるとエアコンのエネルギー効率が改善し、お年寄りがエアコンの電気代が安くなればエアコンを使いやすくなるだろうといういろいろな側面での効果も見込んで取り組んでいる。
今までは緑化といえば壁面緑化だけという印象が強かったが、家の周り全体を緑化することで気温低下につながるということを発信したかった。壁面緑化としては、フウセンカズラ、朝顔、ゴーヤが一般的だが、他に種類が無いため、取り組みを始めるためのインセンティブが働かない。まずは緑化に取り組んでもらうため、農業の栽培指針のように緑化のための栽培指針を作れば、緑化のハードルが一気に下がるのではないかと考えている。壁面の温度上昇を抑えているというサーモカメラで撮った映像はあるが、極端に温度を下げられるかというと、そこまでの効果は確認できていない。
○石川アドバイザー(国立大学法人高知大学 名誉教授)
温度の低下よりもインセンティブを与えて積極的に緑化してもらおうというところにこの取組の主旨があると理解した。
情報提供
「協働防護」による港湾の気候変動適応について(中国地方整備局港湾空港部海洋環境・技術課:参考資料)
第2部(非公開)(公開資料)
5 分科会等の取組について
(1)気候変動影響把握・情報活用分科会等
(2)普及啓発活動
閉会