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中国四国地方環境事務所

ESD関連事業「ESD・環境教育円卓会議in岡山」概要報告レポート

「ESD・環境教育円卓会議in岡山」概要報告レポート

これでスッキリ、みんなで解決! ESD・環境教育お悩み相談室

「ESD・環境教育円卓会議in岡山」概要報告レポート

日時場所

平成19年2月24日(土)13時~17時 岡山国際交流センター8階イベントホール

主催

岡山県備前県民局・岡山ユネスコ協会

共催

中国四国地方環境事務所・中国環境パートナーシップオフィス・四国環境パートナーシップオフィス・(特活)「持続可能な開発のための教育の10年」推進会議(ESD-J)・国連大学高等研究所(UNU/IAS)・岡山県教育委員会・岡山市・岡山市教育委員会・岡山ESD推進協議会(岡山RCE)・岡山ESD研究会・岡山市立京山公民館・岡山市京山地区ESD推進協議会・(特活)岡山県国際団体協議会(COINN)・岡山大学大学院環境学研究科・旭川流域ネットワーク(AR-NET)

後援

国土交通省中国地方整備局岡山河川事務所・瀬戸内市教育委員会・倉敷市教育委員会・山陽新聞社

協力

文部科学省初等中等教育局教育課程課・環境省総合環境政策局環境経済課環境教育推進室・経済産業省中国経済産業局資源エネルギー環境課資源エネルギー環境広報推進室

開催目的と事業の位置づけ

本会は、日頃、直接聞く機会がない環境省や文部科学省の本省のESD(持続可能な開発のための教育)・環境教育担当者から、国はこれから何をしようとしていて、そこでは地方へ何を期待しているのかなどを伺うと共に、私たち地方の考えを伝えて、国と地方がうまく連携してESD・環境教育を促進していけるようにするためのコミュニケーションの場として開催しました。また、ESD・環境教育を実践している人たちが、日頃、悩み困っていることについて、知恵を出しあい、みんなで解決する場としました。

なお、本会は、岡山県備前県民局の協働事業に、ESD-JのESD推進事業(ステップ2)や環境省中国四国地方環境事務所の「ESDの10年」促進普及事業等を入れた広域協働を目指した事業としました。

当日の進行(氏名の敬称略)

13:00 開会

(全体進行 ESD-J副代表理事・岡山ユネスコ協会理事等 池田満之)

開会挨拶(主催者代表)
岡山ユネスコ協会会長 三宅正勝
岡山県備前県民局地域政策部環境課長 渋江忠裕
進行予定と出席者と資料・アンケート等の説明

13:10 「国の方向性と地方に期待すること」の説明と質疑

説明
環境省総合環境政策局環境経済課環境教育推進室ESD・環境教育担当 白石賢司
環境省中国四国地方環境事務所環境対策課ESD・環境教育担当 山本康弘
文部科学省初等中等教育局教育課程課ESD・環境教育担当視学官 井上示恩
質疑応答
(岡山市の連合町内会長からの質問に対しては県と市の教育委員会等も応答)

14:15 ESD・環境教育促進のための話し合い&お悩み相談

(コーディネーター ESD-J理事等 森 良)

ESD-J理事、国連大学高等研究所研究員、国土交通省岡山河川事務所職員、岡山県・岡山市の教育委員会職員、岡山市下水道局長、岡山市ESD推進協議会事務局、岡山市立京山公民館長、国会議員、小・中・高・大の先生や学生、その他のNGO・NPOメンバーや行政・教育関係者など約100名で話し合い(途中、岡山大学大学院環境学研究科による事例紹介等あり)

16:45 総括スピーチ&メッセージ

(ゲストや参加者からのメッセージ等)

  • 倉敷市立倉敷翔南高等学校教諭 相賀和夫
  • 経済産業省中国経済産業局資源エネルギー環境広報推進室長 片山雅夫
  • ユネスコ国内委員会教育小委員会委員長 中山修一 ほか

17:10 閉会挨拶

岡山県教育委員会生涯学習課長 鍋島 豊

概要(氏名の敬称略)

開会挨拶

岡山ユネスコ協会会長 三宅正勝
ESDの活動は、まだ広く理解されていません。ESDの日本的なビジョンは、持続可能な未来の構築とより良い社会への転換のために必要な価値観や行動、ライフスタイルを持つことだと思います。今日の会議が、地球市民として行動する私たちの良き指針、きっかけとなり、みなさんの悩みが解決されるきっかけになることを祈念します。
岡山県備前県民局地域政策部環境課長 渋江忠裕
岡山県は各種団体と協働事業をしており、様々なアプローチに携わっています。環境教育はいろいろと実施されており、私たちの身の回りにも様々な環境問題が存在しています。その中でも、特に気をつけなければならないものは地球環境問題だと思っています。地球環境問題に関しての認知度は高いですが、実際に問題を解決するために活動している人は少ないのが現状です。ESDの輪を広げていくことが、地球環境問題を解決する手段になると思います。

国の方向性と地方に期待すること

環境省総合環境政策局環境経済課環境教育推進室ESD・環境教育担当 白石賢司
ESDを実施するには多様な主体の参加が必要だと言われていますが、この会議は様々な団体が参加しているので、良い見本であると思います。ESDには11省庁が参加しています。NPOや大学から意見を受け、またパブリックコメントも頂いた上で、2006(平成18)年3月にわが国における実施計画を作りました。日本ではESDとして環境保全を中心とした課題を入り口として進めています(取り組みは国ごとに違います)。ESDには基本的な考えが2つあります。1つは物事を総合的に見ることです。環境保全を目的として環境行政に取り組む際、環境だけを良くしようとしてもうまくいきません。物事には、経済的な側面、社会的な側面、環境的な側面という3つの側面があるのです。それらをバラバラに実行してもうまくいきません。ESDは環境、経済、社会的側面の3つを総合的に見ていく必要があります。ESDのもう1つの基本的な考えは、知識を得るだけでなく、行動にうつすことです。環境教育では、気づくことが重要だと言われています。地球規模の大きな問題を考えなくても、地域のテーマを考えることで、環境、経済、社会の側面が関わっていることに気づいたり、自分たちに何ができるのかを考えることができます。そのような「地域に根ざした環境政策」は、第三次環境基本計画でも大きく取り上げられています。また、地域づくりと平行して、人づくりを行うことも必要です。今までやってきた活動を否定する必要はなく、やってきた取り組みに先ほど説明した2つの基本的な考えを加えればよいのです。これから国が進める取り組みは、[1]普及啓発、[2]地域における実践、[3]高等教育機関における取り組みの3つです。これらの取り組みを、各省庁がそれぞれの政策に応じて、協力しながら進めていきます。今後は、2009年までを前半と考えて、初期段階の重点的な事項を実施し、得られた成果や課題を取りまとめていきます。その成果は後半の2014年までの期間に活かしていきます。
環境省中国四国地方環境事務所環境対策課ESD・環境教育担当 山本康弘
中国四国地区の身近な事例を紹介します。環境省はESD国内実施計画に基づき、ESD促進事業を行っています。地域におけるESDでは地域の特性を踏まえた具体的な行動につながる教材、プログラムが必要です。そこで、地域におけるモデルプログラムを作成、実践し、それらをとりまとめて全国に発信、普及させることを目指しています。2006年度は、全国から75件の応募があり、中国四国地区からは、高知県のNPO法人黒潮実感センターが採択されました。同センターは、四国の西南端にある柏島を「島まるごとミュージアム」ととらえ、[1]自然を実感する取り組み、[2]自然を活かす暮らしづくり、[3]自然と暮らしを守る取り組みをしています。それらの活動を軸に、持続可能な里海づくりを目指しています。センターでは、海に興味を持ってもらう「自然科学的なアプローチ」と、人の暮らしと海とのよりよい関係を考える「社会科学的なアプローチ」を行っています。持続可能な里海をつくるために、センターは様々な主体と連携しています。そのために、ESD推進協議会を立ち上げました。今後は、教育機関間の連携、小学校同士の連携、あるいは小中高の連携を確保しながら、様々な学校とのネットワークを構築するなど、里海をキーワードにしたESD推進体制の構築を目指していきます。
文部科学省初等中等教育局教育課程課ESD・環境教育担当視学官 井上示恩
環境教育とは、単に環境問題に対する知識を覚えさせるだけではなく、環境への責任ある行動がとれるような態度(人)を育てるものとされています。改正教育基本法(抄)では、教育の目標として「生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと」が挙げられています。中央教育審議会第3期教育課程部会の審議において、「環境教育の観点から持続可能な社会の構築が強く求められている状況を踏まえる必要性」と「すべてを学校で抱え込むのではなく、学校の教育活動と家庭や地域、企業、NPOなど学校外における教育活動の役割を明確にした上で、それぞれの分担と連携を具体的に推進することが必要である」ことなどが指摘されました。環境教育を進める上での注意事項としては、「各教科等や総合的な学習の時間との関連づけた指導の展開を図ること」、「家庭・地域との連携を図ること」などの6点が挙げられます。個人的には「学習指導要領に従って教えること」、「各教科で環境教育を教える際には、今教えているのは環境教育である、環境教育を教えているという意識をもつこと」、「他の教科とも教科横断的に、有機的に関連づけて環境教育を教えること」によって、子どもたちに問題を解決する力と生きる力を身につけさせることができると考えています。また、教科横断的なものであるので、校長先生や教頭先生、教育委員会のご理解を得ることが必要だと思います。つまり、学校全体で環境教育に取り組んでいただきたいと思います。現在、環境教育指導資料を改訂しています。そこでは、「持続可能な社会の構築を目指す」ことなどを新たに盛り込んでいます。是非ご活用下さい。

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質疑応答

【質問1】
岡山県では誰がESD・環境教育の責任者になっているのですか? また今後、この内容をどう広めていくのか教えて下さい。
〔回答1〕
責任者は知事です。岡山県では、ESDの取り組みを県内全体に広めていきたいと考えています。そのために県の関連部局間で協力し、発展させていきたいと思っています。
【質問2】
具体的に、どれくらいの予算をつけているのでしょうか?
〔回答2-1〕
現在、岡山県にはESDに特化した予算はありませんが、市町村や公民館の取り組みを支援する事業はあります。
〔回答2-2〕
岡山市の予算には、連絡調整、協議会の運営費、岡山地域で活動している団体の支援など、ESDに特化したものも若干あります。また、ESDは環境教育だけでなく、国際理解など多方面に渡っています。それらも含めると、支援している額はもっと大きくなります。
【質問3】
環境教育(学校や公民館等での教育活動)と実践(学校や実社会等での実践)のウェイトは、どうなっていますか? 現状のウェイトの配分と、将来的に目指すウェイト配分を教えて下さい。また、京山地区以外で活動している岡山県内の他地区の内容を教えて下さい。
〔回答3-1〕
県内各地でいろんな団体がいろんな取り組みを行っています。たけべの水辺の楽校、旭川の「源流の碑」の活動(旭川流域ネットワークの活動)、高梁川での活動などがあります。
〔回答3-2〕
京山地区だけでなく、岡山市のどこでも地域の特性に応じて「持続可能な社会のための活動」をしています。京山地区には優れたリーダーがいるので、活動が明確になっています。
〔回答3-3〕
岡山の学校教育では、ESDに特化しての取り組みは、まだありません。各教科においては、内容を濃くしているものもあります。ただ、取り組みの内容には温度差があります。それは先生の理解や学校のおかれている状況で変わります。そのような中でも、ESDという意識をしていなくても、ESDに沿った取り組みをしているところは多々あるのです。温度差をどうしていくのかが、教育委員会の課題です。環境の問題、社会の問題をうまくリンクさせながら、小・中・高校を通した環境教育を実践していきたいと思っています。

ESD・環境教育促進のための話し合い・お悩み相談

〔コーディネーター〕
まずESDを共通理解するために、「ESDとは」について話し合いたいと思います。
〔参加者〕
ESDとは、個人的には世界中で起きている環境問題のような複雑な問題を解決していく力を持った人を育てる教育だと思います。
〔参加者〕
範囲が絞りきれず大きく見ていた問題を、小さく具体的に見るということだと思います。
〔参加者〕
従来の環境教育とESDは別です。従来の環境教育の多くは先生が教えるだけのものでしたが、ESDは教師も共に持続して成長していくものだと思います。
〔コーディネーター〕
単に学習するだけではなく、問題の解決につながる学習にしなければならないと思います。大きな問題を、具体的なものとして見ること。地域でその問題を解決するために活動する。自分たちの身の回りにあることから、具体的に考えていくことだと思います。
〔参加者〕
ESDはここ数年で参加型になってきました。気づくことで地域がつながっていきます。絆をつくると、1人1人が変わっていく、そういった過程が大切なのではないでしょうか。
〔参加者〕
教育活動を専門にしていない行政側は、どういう立場で関わっていけばいいのでしょうか? 自分たちにとっての意義がわかりません。
〔参加者〕
ESDにはいろんな人が関わっています。継続する中で仲間を増やそうとして活動しています。活動の中に学びがあります。「意味」や「意義」といった大きなところでつながっていると思うのです。大きな問題(地球規模の問題)を、小さな問題(地域での問題)に置き換えていくことが大事です。
〔参加者〕
最終的には、「人と人」だと思っています。行政が広報活動として行う活動でも、担当者がきちんと対応してくれると子どもにとって良い学習になるのです。逆に相手がお役所的に対応すると、その次の活動につながりにくくなってしまいます。ESDとは、社会の現実に自分の立場からどう向き合っていくのか、問題点は何か、どう解決していけばいいのか、という点をみんなで共有し、お互いに連携して解決していくことだと思います。問題を解決していくことが、生活に活きてきます。先ほどの環境教育に対するコメントは、教育者としては謙虚に反省すべき点もあります。そういう意味では、相補的な学習がカリキュラムに入っているのはとても効果的なことです。教員である私の悩みは、どういうふうにいろんな人と連携していくかということです。誰に聞けばいいのか、どのように連絡を取ればいいのかで悩んでいます。つながりがキーワードですが、どうつながればいいのかが一番の悩みです。
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〔参加者〕
教育活動としては、人と人が大切です。しかし、制度としては組織としての関与が必要になります。組織を説得するには、業務であると言えば良いのです。環境教育を受ける相手にとっては教育となり、行政側としては広報活動になるのです。行政側は、自分たちの活動の広報として行っています。
〔参加者〕
学校へ出前講座に行くことがありますが、学校側が何をすればいいのかという明確なビジョンを持っていないことがあるのです。また、講座は単発で終わり、継続的なものになってはいません。行政側も学校側も、総合学習をどうやっていけばいいのか悩んでいます。これは関係者がどれだけ関心を持ってやるか、ということだと思うのです。
〔コーディネーター〕
今の話は、行政としての広報したいという立場と、教育活動をどう整合性を取ればいいのかということですね。学校と行政が話し合いをするだけではなく、仲介する人が必要になると思います。
〔参加者〕
子どもたちは、知識をいっぱい持っています。しかし、いざ実践という場面で、子どもたちをどう導いていくのかが難しいです。そのヒントがほしいと思います。
〔コーディネーター〕
あなたはどう考えていますか?
〔参加者〕
知識の部分と体験学習的なものを、どう一体化させていくのか、ということだと思います。「腑に落ちる」(理解する、納得する)という体験が必要です。教室で学んだことを、どう生徒の心の中に落としていけるのか、そのような仕掛けを年にいくつ用意できるのか、ということが教師にできることだと思います。
〔参加者〕
出前講座で、世界の子どもたちの現状について話すことがあります。その際、遠い国の話だから、子どもたちに身近なこととしてとらえさせることが難しいのです。子どもには、遠い国で起こっている飢餓や戦争などを具体的にイメージすることができません。身近に感じられず、共感することができないのです。
〔参加者〕
小・中・高校で、一貫して教えていくことが必要だと思います。1年ですべては教えられません。小学生でわかることは小学校で、中学生になるとわかることは中学校で、それらを踏まえた上でわかることは高校で教える。そのステップを踏んでいかないとダメだと思います。いっぺんに教えようとすると無理が生じます。
〔コーディネーター〕
そのような制度をつくることです。また、地域の中でいろんな人と関わっていく中で、地域で教えることが必要ですね。
〔参加者〕
そのような制度をつくっていること、また地域の中でいろんな人と関わっていく過程の中で、地域で教えることが必要です。学校間の連携、地域と学校の連携が課題になっています。幼稚園・小・中・高の連携は、学習指導要領の中で審議を進めています。また、教員の免許更新制度を利用するなどして、先生方の「質」の向上を図ることも大切です。文部科学省は、環境省と連携して、先生や環境NPO向けに研修会を開いています。その中で、学校とNPOや地域との連携についても触れています。
〔参加者〕
環境を他人事に考えている人が多いと思います。「みんな便利な方へとかたむく」と資料にある通りだと思います。しかし、もっと魅力的な社会へ向かわせるものがESDだと思います。課題が山ほどあるのはわかりましたが、ESDはそれらをどう解決していくのでしょうか?
〔参加者〕
勉強は自分のためにやるものだが、ESDは社会のためにやるものです。それを身近なところにどう落とし込んでいくのかを考えることです。地域がメリットを受けられるように、経済的なメリット、社会的なメリットを考えることで、動機が生まれると考えています。
〔コーディネーター〕
教育は自分のためでもあるけど、社会を良くしていくためでもあります。持続可能な社会というものは、遠い未来にあるのではなく、今自分たちの足元にあるのです。みんながお互いに助け合えるコミュニティは自分たちの足元にあり、それが持続可能な社会の1つの基盤になっていきます。その基盤である社会が今、ESDについて話し合っているこの場に生まれつつあると思います。それが問題を解決する手段になるのです。
〔参加者〕
日本人の多くが環境に関心があります。しかし、いざ環境教育をするとなると躊躇してしまいます。でも、多くの人が実際には何らかの活動をしているのです。「教育」というフィルターを外すと、視野が広がります。国会議員である我々も、何かあれば参加し、応援していきたいと思います。
〔参加者〕
「持続可能な状況をつくろう」という認識は持っています。国会議員の中にもESDへの関心が高まっています。米国のゴア元副大統領の「不都合な真実」が話題になっていますが、私たちは地球温暖化問題等に、より積極的に取り組んでいかなければならない状況にあります。
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〔コーディネーター〕
ここからの議論は、[1]ESDをどうしていくのか? [2]違う立場の人間がどう連携していくのか? 仲介役が必要か? についてです。はじめに岡山大学が高校で行った取り組み事例を紹介していただきます。
〔岡山大学〕
環境教育に対する大学の役割として、正確な情報を提供することがあります。また、地域の歴史を伝承することを公民館と連携してやっていっています。現在、県立高校の環境学カリキュラムを作成しています。高校のカリキュラムに関わる中で、高校生を大学に連れてきて、講義をするアウトリーチセミナーも行いました。実習の場としては、白石島での取り組みをしました。この島では、池の泥さらいという環境保全活動が行われていました。その際、つらい作業の後には、盆踊りなどの娯楽がありました。そのように、環境に貢献する活動と娯楽的要素をセットにしていました。
〔コーディネーター〕
高校の学習に大学が参加している。このような関係をいかにつくり出すかが課題ですね。
〔参加者〕
「間伐材をどうしたら良いのか」という話をしていますが、一般の方には理解してもらえないのです。また、大根を育てるという企画をすると、子どもだけでなく、子どもの親世代も大根の育て方を知らないのです。子どもたちに、強制的に持続可能な生活体験(自給自足の生活)をさせてはと思います。
〔コーディネーター〕
親だけでなく、先生たち大人の世代が体験していないのですね。
〔参加者〕
小・中・高のカリキュラムがあれば便利なことは確かです。小学生の子どもたちには自然と触れ合い、楽しさを味わうこと。環境を良くしようという心があること。この2つがあれば良いと思っています。小学校では、いろいろな教科の中に環境に関わるものがすでに存在しています。そして、総合学習の中では環境だけでなく、福祉などいろんなテーマを取り扱っています。今以上に環境について教える必要があるのなら、環境科をつくらなければならないと思います。学校は、環境だけを教えているわけではありません。今以上に環境を世の中に浸透させたいのであれば、環境についてよく知っている子どもを少人数育てるのではなく、みんなが参加し、目に見えるような活動によって広めなければならないでしょう。
〔コーディネーター〕
教育はものを教えるだけでなく、「私から実践することで、環境に役立つことができる」という自己肯定感が学習をしていく上での重要なベースになります。後半の話は、環境科というシステムをつくろう、目に見える活動をしようという趣旨でしたが、これについて誰か意見はありますか?
〔参加者〕
教育基本法が変わり、学校だけでなく地域や家庭でも環境教育を役割分担しながら進めようということになっています。学校については、先生方には子どもたちと一緒に学び、遊んでほしいと思っています。今以上に先生の負担を増やすと大変なことになります。環境教育の場は学校以外の所にいっぱいあります。先生には、それを使ってほしいと思います。仲介人の件は、役所に尋ねて下さい。岡山市には、おおよそ希望される分野の人材を紹介できるシステムがあります。
〔コーディネーター〕
そのシステムを活用すれば、例えば京山地区から岡山市中にESDが広がっていくと思います。
〔参加者〕
子どもを教育するのは先生だけではなく、親の役目でもあります。各学校には必ずPTAがあります。PTAでは、人材バンクの登録をしてもらっています。親の中には、NPOやNGOで活躍している方もいて、その人材を活用すれば、学校単位でそのシステムができるかもしれません。親もちょっとしたことで環境教育はできます。子どもたちが学校で習ったことを家庭で実践していく際の手助けをするのは親の役目だと思っています。この前、映画「不都合な真実」を見るために夫と子どもをむりやり映画館に連れて行ったら、夫の意識が変化しました。
〔コーディネーター〕
良い意見だと思います。学校単位でそのような仕組みができていないと、活発に活動出来ないでしょう。総合学習で地域の皆さんが子どもたちのサポートに入る場合には安全管理の役をすると思いますが、学習のサポートをしてくれるのは非常に大切なことだと思います。学習をサポートする際、地域の皆さんが先生に質問をすると良いと思います。そうすることで、先生と地域の人、お互いの知識が向上することになります。そのことは、地域の底上げをする上で重要です。
〔参加者〕
人材ではなく、カリキュラムに困っています。私の小学校では、総合学習や家庭科の授業にどんどん保護者の方の力をお借りしています。ただ、その学習をする際に、何についてどのように、どのような人を使って子どもたちに力をつけるのかという点を明確にしなければいけません。そうしないと、以前から批判のあった「活動あって学びなし」という「やっただけ」の状態になってしまいます。ただ、子どもたちは活動が好きなのです。楽しみながら理解できる内容にするためには、どんなものをどんな内容にしていけばいいのかというアイデアが必要です。それは学校の先生だけではなく、保護者の方やNPOなど、いろんな人が持っている知識を活用したいと思います。そんな知恵袋を結集する「場」をつくってほしいのです。そのような「場」を定期的に開催し、活動を評価し、修正していけたらと思います。また、環境教育を小学校だけで行うのではなく、小・中・高校の流れの中でできればいいと教師たちも思っています。しかし、実際はそういうものができません。トップダウンでもできないでしょう。そこで、先ほど言った「つながり」が大切という話になるのです。
〔コーディネーター〕
地域の知恵袋を結集することはいいことだと思います。
〔参加者〕
正しい情報を持っていることは教育の面では重要です。そのような情報を持っているNGO、NPOと親、先生などが連携してみたら良いのではないでしょうか。大学の先生や専門家(アドバイザー)と連携することにより、話が「腑に落ちる」こともあります。チームを組む際には、学校の先生だけで集まるのではなく、地域の有識者を交えると良い方向にプログラムが展開していき、具体的な活動につながっていきます。そういったことから世界と関連づけていき、地球全体のことを考えてほしいと思います。主体となる人がみんなで集まって、活動する場所をつくることが大事だと思いました。
〔参加者〕
学校としては、先生が生徒に「こういう力をつけてもらいたいから」という主体を持たなければいけないと思います。学校以外のところと連携する際、皆さんそれぞれの立場で参加しているため、教師に主体性がないと、学校側の思惑からどんどんずれていってしまいます。そのような場合、例え良い成果が出たとしても、子どもたちに自分がやったことの意味が理解できなかったら、それをした意義がなくなります。まずは、自分の住む地域を基本に考えて、話し合いのできる「場」をつくってはどうかと思っています。
〔参加者〕
学校現場では、環境教育だけをするわけにはいきません。学力向上や生徒指導もしなければなりません。そういった基本線を守った上で、学校間の特色をつけることはできます。例えば、総合学習で環境教育に多くの時間を使うなどです。しかし、それも中学校に入ると、同じ特色とは限りません。そのため、「環境教育の一連の流れ」というものは、現実には行えないのです。学校と地域の連携が大切なことはわかっています。学校支援ボランティア制度を立ち上げて、1000名前後の方に登録してもらっています。ただ、ボランティアに支援を要請する場合も、学校のニーズによって要請する人が違うのです。学校として大切なのは、「子どもたちにどんな力をつけさせるか」ということです。また、環境教育に熱心な先生はいろいろと工夫もされるでしょうが、そうでない先生は通り一遍当のことしかしないでしょう。先生間、学校間の温度差というものがあります。外部と連絡をとって環境学習をする場合、先生方が連絡調整などに多くの時間を取られてしまう現状もあります。
〔参加者〕
ESDは環境問題に限っているわけではありません。高齢化問題でも、福祉でも良いのです。こういう話をする場合、誰に声をかけるかというリソースの話はしやすいが、カリキュラムをつくることが難しいです。NGOと学校が連携する時、お互いのやり方、組織を理解しなければいけません。最初はお互いのやり方を知らないために、トラブルが続きます。一生懸命やってくれる中心人物が必要です。
〔参加者〕
日本の公民館は、学校以外でESDの拠点となりえる場所です。公民館なら、子どものいない家庭も参加できます。高齢化が進むこれからの日本では、今後さらに公民館は重要になってくるでしょう。
〔参加者〕
子どもの立場として言わせてもらえば、なぜ子どもだけが環境学習をしなければならないのでしょうか。環境教育をしている先生たちも、冷暖房の温度設定やマイカー通勤をやめるなどの実践をすべきだと思います。また、環境問題を理解するには、身近なことに置き換えればよいと思います。飢餓の問題は、身近ないじめの問題に置き換えて考えることができます。
〔コーディネーター〕
地域の人たちが力を合わせて学校のカリキュラムづくりに関わっていけるような仕組みをつくっていこうという話になってきました。仕組みをつくると同時にもう一つ大事なことは、目標を共有する話し合いを持つということです。ここに集まっている方々が協力すれば、京山地区の取り組みが発展すると同時に、他の地区でも発展していくでしょう。

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総括スピーチ&メッセージ(ゲストや参加者からのメッセージ等)

〔進行役〕
この会を開催するにあたって、事前に多くの情報をいただきました。今日まだ紹介できていない特出すべき情報をお伝えしたいと思います。まず、「環境」を学校の方針で全校生徒への必履修にした高校があります。特出すべき取り組みなので紹介したいと思います。
〔高校教師〕
市立の倉敷翔南高校では、環境教育を必履修としています。高校では、学校長と教務主任がその気になれば出来ます。つまり、この二人にどう理解してもらい、その気になってもらうかが大事ではないかと思います。
〔進行役〕
文部科学省や環境省以外にも、経済産業省中国経済産業局でも、環境教育を学校などで行っておられるので、その取り組みについても紹介していただきたいと思います。
〔経済産業省中国経済産業局〕
特に、「エネルギー環境教育」を進めていますが、「エネルギー」という言葉がつくと、なかなか理解されません。現在、小学校の生徒と先生をターゲットにして取り組んでいます。これからも役立つ資料や情報の提供をしていきたいと思っております。
〔進行役〕
この場には、ESDの先導機関であるユネスコの取り組みを推進するために、政府とNGOと学識者によって構成された日本ユネスコ国内委員会の教育小委員会委員長も出席いただいています。日本ユネスコ国内委員会の考えや取り組みをお話いただきたいと思います。
〔日本ユネスコ国内委員会教育小委員会委員長〕
なぜユネスコがESDと関係しているのか、あまり知られていません。日本ユネスコ国内委員会では『「持続可能な開発のための教育」の更なる推進に向けたユネスコへの提言』をまとめており、近々発表する予定です。大きな流れは、日本が国連にESDを提案し、2002年に国連総会で採決されました。「教育」という文字がついていたことから、国連がユネスコに投げました。ユネスコには、リオの地球サミット以来、「持続可能な開発(SD)」に関する教育を担当する役割があり、ESDと深く関わっています。その後、ユネスコがとりまとめて、「ESDの10年」の国際実施計画が承認されました。そして、日本でも国内実施計画ができましたが、日本ではESDを推進するカリキュラムはまだまだというのが現状です。本日配布されたリーフレット(「はじまる×はじめるESD」)の4頁目、国内実施計画の中の「[4]学び方、教え方」と「[5]育みたい力」の2つを進めていくことが大切です。意識改革が求められています。ユネスコへは、ESDの実施計画に関して「変換を迫る、見直す、実践できるプログラムを提案していきたい」と思います。

閉会挨拶

岡山県教育委員会生涯学習課長 鍋島 豊
ESDの取り組みは、自分の地域を考えることです。それは生涯学習につながります。それには公民館を活用してほしいと思います。岡山県では、今年の11月にまなびピア(全国生涯学習フェスティバル)を開催する予定です。県内の全部の市町村が参加します。その時に岡山のESDを全国に発信していきたいと考えています。皆さん、是非ご参加下さい。

参考資料

参加者の声(参加者アンケートや事前事後のヒアリングより)

  • CSR(企業の社会的責任)とリンクさせて理解に努めました。ESD・CSR などの統一した概念の普及が必要ではないのでしょうか・・・(ex.アジェンダ21の思想=SD)
  • 学校教育における各教科の中でのESD等の位置づけが弱いと思います。
  • 学校においては、環境教育やESDは「+α(プラスアルファ)の分野」と考えられている気がします。主要な教科でも取り組まないといけない内容と認識してもらえていません。学校内での具体的展開をどう進めていくかがこれからの課題です。具体的なカリキュラムが必要だと感じました。
  • 学校は小・中・高の連携をもっと密にシステム化する必要があると強く思いました。地域の独自性を活かし、NPOなどとのつながりも大切にしたいと思います。
  • 本日の会、そのものがESDのすばらしいシステムの一つだと思います。
  • ネットワークづくりが大切なのは確かです。今後、地域や行政はどのようにつながりを持続していくのか、具体的に市民の目に見えるものを打ち出してほしいです。
  • 事業者も考えるべきことであるのに、中小企業者が考えていない現状の打破に、学校・地域の力を結集し、その一員としての事業者の意識づけが有効かと感じました。
  • 私はまだ12年しか生きていない小学生なので、あまり大きいことは言えません。だから今回の話し合いもあまり良くわかっていないのかもしれませんが、今回参加して下さっていた大人の方々、教員の方々が環境について、私たち子どものことについてかなり議論が続いていたことで、すごくうれしくなりました。しかし、環境について関わった方々の意見が多かったので、特に関わっていない人(環境に関心のない人)の意見も聞きたかったなと思います。
  • 本来は「環境」は家庭教育(しつけ)→現状では無理(保護者の環境意識の欠如、多忙)→学校教育への期待(おしつけ!)→現在では総合学習での取り組みしかできない(国際・生き方・ボランティア等やることが一杯)→教科「環境」の必要性(教育特区とし、小中の一貫したカリキュラム「環境」を意識した教育ができる教員が必要。しかし、環境教育のカリキュラムは少ない。教員採用試験にも「環境」は問われない)→机上の空論(知識)ではダメ(地域へ出て体で感じる学習を)→地域と学校との連携(コーディネーターと共に小中と地域が綿密な打合せによって重複しないように)。
  • 学校は、子どもたちに良い教育をしてあげたい、子どもたちを育てたい、良いふるさとを伝えていきたいと思っています。しかし、小学校ではそれぞれの先生が担任を持って手一杯で頑張られていて、ESD・環境教育が大切だとわかっていても、今の職務の上に加えて取り組むのは負担が大きすぎます。校内環境委員会をつくりたいですが、つくれば仕事が増えます。つまりスタッフが足りないのです。ESD・環境教育を取り組んでいくために、先生と地域と子どもたちをうまくコーディネートして進めてくれる専任コーディネーターを配属してほしいと思います。
  • 「環境」を他人事と考えている人が多い。地域で捉えると、少しずつ変わっていっているためその変化に気づかない。地球規模で捉えると、大きすぎてピンとこない。
  • 「すべてがその場限り」。環境の学習会とかやっても、その時は良かったというが、すぐに忘れてしまう。そのあとに活かされない。続いていかない。なぜか、環境が悪くなったのは今ではなく、これまでの積み重ねであるためになじんでいて危機感が出ない。いつかは大きな被害を受けるのだろうが、それが今すぐという気がしていない(切実感がわかない)。
  • 地球温暖化でツバルとか沈む国があることは知っていても、だから自分は何をしたらいいかわからない人がいる。自分がこまめに電気を消してみても、ツバルは沈む。結果が見えてこないと、やり続ける意欲が出ない、続かない。では、結果が見えるようにするにはどうすればいいか。環境家計簿のようなことは面倒くさくてやらない。面倒でなくてもあまり関心が出ないから続かない。少々お得だと言われて頑張れる人は限られている。
  • 環境問題に関する情報があっても関心がわかない、知る気にならない、やろうという気がおきない。当然、続かない。脅しても続かない。知らないうちにやってしまうようになるにはどうしたらいいか。
  • 今の日本の重要事項は、地球温暖化、エネルギー等々。暖冬だと温暖化と言われても危機感が出てこない。冬が暖かくなることを歓迎している人もいる(暮らしやすいと)。みんな便利な方へとかたむく。
  • 「興味がない」。これをどうするか。「不都合な真実」のような映画や映像を見せても、一過性の効果しかない。日常の生活にその問題のリアリティがないと難しい。異常が日常になってしまっていて、少々のことでは奮起しない。氷河が溶けることもあたり前になってしまった。
  • 身をもって体験したことは忘れない(災害など)。自分の身に何か起きないとやる気にならない。自分は大丈夫という変な安心感がある。身をもって体験するに匹敵する効果が得られる学習プログラムがほしい。

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