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中国四国地方環境事務所

「平成26年度マリンワーカー事業(足摺宇和海国立公園海域保全検討調査)」の結果報告について

2015年04月24日

「平成26年度マリンワーカー事業(足摺宇和海国立公園海域保全検討調査)」の結果報告について

 足摺宇和海国立公園の足摺海域において、海中景観や海域生態系の保全に向けた、より効果的な手法及び体制の構築を行うことを目的として、サンゴの生息状況に関する調査を実施しました。

 調査の結果、土佐清水市及び大月町南岸を中心に広い範囲でサンゴ被度及び分布範囲の減少が確認されました。

 この原因としては、近年、当該海域で大量発生しているオニヒトデによる食害の影響が考えられます。オニヒトデの食害対策(駆除活動)については、これまでも行政や地域住民、ボランティア等が協力して実施してきましたが、今後も引き続き、足摺宇和海保全連絡協議会において情報共有を図りつつ、取組が進むよう関係者との連携を深めて参ります。

足摺宇和海保全連絡協議会...足摺宇和海国立公園海域及びその周辺の地域において、行われている海域保全に係る活動について情報共有と連携体制の強化を図るため、関係する行政、団体・個人が組織された連絡協議会(平成20年設立)。

1.調査の目的

 足摺宇和海国立公園及び周辺海域は温帯域を代表する造礁サンゴ類の生息地であり、各地に発達したサンゴ群集がみられます。当該海域ではサンゴ群集は優れた海中景観を呈し、沿岸生態系の生物多様性を支える基盤として重要な役割を果たしています。

 環境省では、平成20、21年度に「足摺宇和海国立公園サンゴ保全体制検討調査(以下、「平成20、21年度調査」という。)」を行いましたが、今回改めてサンゴ群集の生育状況及び生息範囲を把握し、今後の保全対策及び体制構築の基礎資料とすることを目的として調査を実施しました。

2.調査の結果

 平成20、21年度調査を含む過去に実施した調査と、今回調査で得られたサンゴ群集の分布状況の比較を行ったところ、下記の結果が得られました。

■現在のサンゴ群集の分布状況と被度変化について

 今回の調査結果によると、高被度のサンゴ群集が確認されたのは土佐清水市竜串湾周辺、大月町樫西海岸の一部、柏島・一切地先を中心とした大月町西岸域及び宿毛市沖の島海域の一部であり、継続的なオニヒトデの駆除が実施されているエリアでした。

 また、平成19~21年度の調査と、今回の調査で共通する調査地点43地点について、サンゴの被度の変化を比較したところ、明らかにサンゴの被度が増加したと認められる地点は3地点(柏島周辺など)でした。一方で、サンゴの被度が明らかに減少した地点は18地点あり、そのうち15地点ではサンゴの被度が0%(5%未満)に低下しており、さらに、そのうち9地点では過去の調査で確認された被度40%以上の高被度サンゴ群集がほぼ消失していることが確認されました(図1、2参照)。

図:図1.現在の足摺海域のサンゴ分布状況(平成26年度調査結果より)(調査地は63地点)

図1.現在の足摺海域のサンゴ分布状況(平成26年度調査結果より)(調査地は63地点)

図:図2.平成20、21年度調査によるサンゴ分布状況

図2.平成20、21年度調査によるサンゴ分布状況

(平成21年度管理方針検討調査報告書より)(107調査地点の内図中の調査地は84地点)

■オニヒトデの年間駆除数の推移

 足摺宇和海国立公園海域におけるオニヒトデ年間駆除数は2004年度以降各地で高い値を示すようになっており、15年間で約61,500個体が駆除されています。近年の駆除数のピークは2010年頃であり、約17,600個体/年ものオニヒトデが駆除されています。以降は、ピーク時と比べて駆除数は少なくなっていますが、依然として全体で2,000個体/年を超えるオニヒトデが駆除されています。(表1参照)

■被度減少の要因について

 被度の減少地点が多く見られる範囲は、過去の調査等でオニヒトデが高い密度で発生しているという情報が得られた範囲と概ね一致しているため、今回の調査で確認されたサンゴの被度減少の主な要因は「オニヒトデによる食害」であると考えられます。

なお、当該海域では1970年代から1980年代にもオニヒトデが大量発生し、その際にも各地のサンゴ群集が被害を受けています。(図3参照) 

表:表1.2000年代における地域別年間オニヒトデ駆除数

表1.2000年代における地域別年間オニヒトデ駆除数

(2000~2014/平成26年度調査結果より)

      図:図3.足摺宇和海海域におけるオニヒトデ年間駆除数の推移(1972~2014)図3.足摺宇和海海域におけるオニヒトデ年間駆除数の推移(1972~2014)

■サンゴの保全上重要な範囲について

 今回の調査結果及び周辺情報の解析を基に、サンゴの保全上重要と思われる範囲を抽出したところ、下記の4地点でした。

<保全上重要な範囲>
  •  ・宿毛市沖の島烏帽子崎周辺
  •  ・大月町西岸一切~柏島地先
  •  ・大月町南岸樫西海域公園1号地周辺及び尻貝海域公園周辺
  •  ・土佐清水市竜串湾周辺海域(竜串海域公園地区とその周辺)

 特に土佐清水市足摺岬以西の範囲では竜串湾周辺にのみにまとまった規模のサンゴ群集が残存しており、保全の重要性は高いと考えられます。

3.今後の対応

 今回の調査により、足摺宇和海国立公園海域の足摺海域において、多くの地点で近年のオニヒトデの大量発生の影響によるサンゴの被度減少と分布範囲の縮小が確認されました。特に土佐清水市沿岸、大月町南岸、そして宿毛市沖の島周辺ではその影響が大きく現れています。オニヒトデの駆除数はピーク時に比べると減少しているものの、依然として多くの駆除数が記録されているという状況にあります。

 現在、当該海域では環境省、関係自治体及び地域ボランティアによる活動などにより、サンゴ群集の保全を目的とした継続的なオニヒトデの駆除が各地で行われています。また、現状で被度の高いサンゴ群集が残っている範囲は、いずれもこれらの事業や活動で継続的な駆除が行われている範囲であり、一連の保全活動が一定の効果を上げていると考えられます。

 このような状況から見て、今後もサンゴの被度が高い保全上重要なエリアにおける対策を継続していく必要があり、引き続き取組が進むよう関係者との連携を深めて参ります。

4.問い合わせ先

環境省中国四国地方環境事務所

土佐清水自然保護官事務所(担当:秋山)

TEL.0880-82-2350 FAX.0880-82-2358