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アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

中国四国地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2022年6月13日

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2022年06月13日野生動物の痕跡を見つけよう!

湯淺和美

AR日記をご覧の皆様、こんにちは!

前回ご紹介した剣山山系のニホンジカの動画、まだの方はぜひこちらからどうぞ。https://www.youtube.com/watch?v=bf42uFVwUY

環境省四国事務所の野生生物課で行っている『国指定鳥獣保護区内でのニホンジカの生息状況調査』。動画でご紹介しているのは剣山山系ですが、3月28・29日、福田専門員が行う石鎚山系国指定鳥獣保護区(面河渓(おもごけい)、杉の人工林、笹ヶ峰の中腹の3か所に設置)の自動撮影カメラメンテナンスに同行させてもらいました。

樹に取り付けた自動撮影カメラ カメラのメンテナンス風景

自動撮影カメラは、動くものをセンサーが感知して10分毎に3枚撮影します。シカの個体数を把握するためには、ダブルカウントを防ぐ必要がありますが、ちょうどよい間隔だそうです。1,2か月に1回、電池と記録メディアを交換します。 

ニホンジカの糞 シカの角で傷ついた樹

カメラ設置場所へ向かう道中で、シカの糞、シカの食痕や角で傷ついた樹木、シカの寝屋などを、確認し撮影記録します。

ウサギ等の食べ痕 ニホンジカの食べ後

パツっとハサミでカットしたようなのは、ウサギやネズミの仲間の食べ痕です。

シカは下あごにしか前歯がないため、ウサギのように草をかみ切ることができません。上の歯茎と下の前歯で挟んで引きちぎるようにして食べるため、切り口がぎざぎざになります。(シカの食痕は笹ヶ峰中腹で撮影したもの)

シカは笹などの下草を食べ尽くした後、樹皮を剥ぎにかかります。届く範囲の皮がすべて剥ぎ取られ、皮のおいしい部分を食べた後、さらにシカは、樹皮のすぐ下にある栄養が通る部分をなめとります。シカはこのほか、角を樹幹で研ぐことでも樹木を傷つけます。被害をうけた樹木は、傷口から菌に侵入されたり、栄養が運べなくなったりして枯れてしまいます。

糞とビニールテープ 糞の下のクロボシヒラタシデムシ

こちらはタヌキなど、雑食の動物ため糞です。糞に赤いビニールテープが紛れています。よく木に目印として巻かれていますが、人が不用意に持ち込んだゴミが野生動物に与える影響を考えさせられます。糞の下には赤い胸部がおしゃれな『クロボシヒラタシデムシ』がたくさんいました。シカの食害が進み花の咲く草本が激減した地域であっても、唯一増加に転じたのが『シデムシ』などの糞虫です。

現在、石鎚山系は剣山山系ほどシカの被害は出ていませんが、確実にシカの痕跡は増えつつあります。まだ被害の少ない今だからこそ、失われる前の対策が必要です。そのために私たちはニホンジカの生息数を把握し、有識者の方や猟友会の方々と一緒に適切な駆除計画を立てて実行しています。

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