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中国四国地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中国四国地区]

「ミヤジマトンボ・エコ観察会」を開催しました。

2017年08月08日
瀬戸内海国立公園

81日にミヤジマトンボ保護管理連絡協議会主催で、「ミヤジマトンボ・エコ観察会」を開催しました。

ミヤジマトンボは、国内では宮島でしか生息が確認されておらず、環境省はこのトンボをレッドリストで絶滅危惧ⅠA類(絶滅の危機に瀕している種)に指定しています。そんな希少なトンボについて、地元の小学生に知ってもらうべく、当観察会は実施されました。

今回、参加してくれたのは、廿日市市立地御前小学校の5年生達。

まずはミヤジマトンボとその生息地である宮島をよく知るために、小学校で事前学習しました。

宮島の歴史や自然、トンボの生態についての話を聞き、宮島はいったいどういう島なのか、なぜミヤジマトンボが宮島にだけ生息しているのかを考えました。

そして、事前学習の後は、いよいよ宮島へ移動して観察会。

午前中に学習した、潮水と淡水が入り交じる「潮汐湿地」を観察してみます。

ミヤジマトンボはヤゴの間、この潮汐湿地で成長します。そしてトンボになって、またこの湿地で卵を産みます。ミヤジマトンボは他のトンボに比べて成長が遅く、他のトンボが暮らしている場所では、競争に負けて生きてゆけません。そんなミヤジマトンボにも潮水に強いという特技があって、他のトンボが生きてゆけない潮が入る水の中でも生きてゆけるのです。

このような潮水と淡水が入り交じった潮汐湿地が、かつては日本全国にあったのですが、人間の活動によって破壊され、ほとんど残っていないのが現状です。宮島は、昔から神様が居着く島(いつくしま)として崇められ、人間活動がほとんど及びませんでした。その結果、ミヤジマトンボが生きてゆける湿地が残っているのだと考えられています。

ミヤジマトンボを観察した後は、浜辺で飛び回っている小さなムシを追いかけてみます。

そのムシの正体は、ルイスハンミョウ。

  ↓アクティブレンジャー日記 瀬戸内海国立公園の自然3「ルイスハンミョウ」参照

   http://chushikoku.env.go.jp/blog/2017/06/3-2.html

このムシもミヤジマトンボと同様に、人間の環境破壊によって棲む場所がなくなっている生き物です。宮島には、こういった絶滅に瀕した生き物がたくさん棲んでいます。

ひと通り観察会が終わった後は、浜に流れ着いたゴミを拾いました。

ふだん人が出入りしないような場所でも、たくさんのゴミが落ちていました。

人間が何気なく捨てたゴミでも、そのゴミは海を巡って、ミヤジマトンボの生息地のような希少な環境までも汚してしまっているのです。

そして最後は、坂本先生から地御前小学校の生徒達へ熱いメッセージ。

日本各地で自然環境が破壊される中、昔のままの自然が残っている宮島は、まさに奇跡のような島です。宮島を見て育ったみんなに、これからも宮島を守っていってもらいたい!とのことでした。

何十年何百年先も、ミヤジマトンボがたくさん飛んでいる宮島であって欲しいですね。